てんぱっていきまっしょい。

国内旅行をこよなく愛する人間の日記です。でも最近は出かけてないよねぇ。(現在コメントは事前承認制にしています。)

わげもん~長崎通訳異聞~第4話:光さす海5

2022年02月05日 | わげもん~長崎通訳異聞~

長崎の港の沖に停泊する、神頭有右生(こうず ゆうせい)髙嶋政宏 の唐船に長崎奉行所の捕り方から火のついた矢が放たれる。
船には、神頭の仲間吉次(きちじ)サンディー海・伊嶋壮多(いじま そうた)永瀬廉・トリ(都麗)久保田紗友そして、長崎奉行所の交渉人として森山栄之助(もりやま えいのすけ)小池徹平 が乗船していた。

栄之助が交渉前に、交渉が失敗し船が狼藉を犯したときは、躊躇なく攻撃して欲しいと長崎奉行:井戸対馬守覚弘(いどつしまのかみさとひろ)石黒賢や長崎奉行所の船掛:白井達之進(しらい たつのしん)宮川一朗太に頼んでいたため、焦った白井と大通詞で蘭語通詞会所の長:杉原尚蔵(すぎはら しょうぞう)矢島健一 が、長崎奉行に攻撃を進言したのだった。

容赦なく矢を打ち込んでくる奉行所側に、驚く栄之助や壮多。
栄之助が船から顔を出し、この事態について聞くと役人から奉行からの手配だと言われ
船から飛び降りるように命令される。

トリや壮多は、神頭の説得を試みる。

先生、長崎に帰ろう。

出直しましょう、船出は諦めていません。
次は、光の射す沖へ・・・。

その言葉に、心を動かされる神頭。
神頭は闇の中、ずっと光を求めてうごめいていたのだ。

だが・・・

お前は、何も解ってない。

この閉ざされた国では、許可なく自由に旅立つことを許されてはいないのだ。

その時、焼け落ちた船の帆掛けが降ってくるのを見て
神頭はとっさに、壮多を栄之助のいる方へ突き飛ばす。

燃える船と運命を共にするつもりなのか、神頭は壺を抱えて舳先へと昇る。
壮多は神頭を連れ出そうとするが、炎に邪魔されて彼の元には近づけない。
そんな壮多を見て、神頭は

俺を憐れむな、罵れっ!

そう言って、壺に入った液体をまき散らし
その中に、火のついた矢をつまんで放り込んだ。
火の勢いは益々強くなり、栄之助とトリに引き留められる壮多。

神頭さん、神頭さんっ!

栄之助とトリから船から連れ出されるとき、壮多の懐から
父親の手帳を甲板の上に落としてしまう。
神頭は壮多たちが避難するのを見届けるように、船と一緒に炎に包まれていった。

夜が明けて

まだ燃えて煙のくすぶっている船底を、浜辺から眺める壮多とトリ。
長崎は、壮多からまた大切な人を奪ってしまった。

長崎に、くんちとよばれる祭りの季節がやってきた。

柳屋では、男衆が店先の掃除をしている。
遠くではシャギリの音が賑やかだ。
アヤカの子どもにとっては、はじめてのくんち。
女将のしず(紅壱子)をはじめ、女たちにとってすっかり子どもは人気者だ。
めんじょかね。と言われ随分と可愛がられている。

壮多は、神頭の部屋だった今は自分の部屋の前の廊下に腰かけ
外の祭りの喧騒に気づかないのか、ぼんやりと中庭を眺めていた

壮多・・・くんちの稽古ば見に行こうでん、初めてやろ。

少し離れた場所から、トリが声をかける。

しかし、壮多はまだそんな気分にはなれず
浜へ行ってくる、そう言って出かけて行った。

あれから何日かが過ぎ、浜辺から見る長崎の海には、神頭の船の気配はどこにも残ってない。
すると、壮多に近づいてくる栄之助。

お前んとこに行く途中やった。

そう言って、栄之助は布に包まれたものを壮多に手渡す。
それは、少々焦げたあとの残る壮多の父の手帳だった。

こ、これっ。

ところどころ焦げてしもうたばってん、水には浸こうとらん。
字もそう滲んではおらんばい。
こん身より先に舟に投げ入れたけん。

森山さんが、これを・・・。

壮多が手帳を開くと、
「己の言葉を捨てよ」という父の書き残した心得の後ろに
文字の書かれた紙が挟まれていたことに気づく壮多。

大田さんが、忠弥(ちゅうや)蟷螂襲 さんから預かっとったもんたい。

ヤンセン - 村雨辰剛に殺された出島の内通詞:忠弥は、亡くなる直前に大通詞:大田崇善(おおた そうぜん)本田博太郎
に会いに来ていた。
どうやらそのとき、預かったようだ。
栄之助と壮多が後ろを振り返ると、そこには大田崇善・清十郎(おおた せいじゅうろう)浅香航大 親子がいた。

忠弥さんが・・・。

周吾さん、お前ん父親の書き付けたい。
どうということはなか、ただの単語の覚書きたい。

4~5枚の紙には、少しずつ単語が書かれており
その中の一枚には、筆記体で

My dear son
 壮多

そう書かれていた。

My dear son

壮多が読み上げると

私の愛しき息子 そがん意味ばい。

そう言って栄之助が内容を和訳してくれた。
時を超えて、父の自分への温もりが伝わってくる言葉だった。

そこへ、トリが未章(みしょう)トラウデン都仁 と一緒に駆けつけてくる。
探していた父親は失っていたが、長崎の新しい仲間たちが
今は壮多を支えてくれることに安心する栄之助。

新しき言葉は、お前が記せばよか。(壮多、顔を上げる。)
じゃぁ。

そう言って、栄之助は立ち去って行く。
その背中に向かって、壮多は声をかける。

森山さん、俺、通詞になります。
・・・長崎で。

振り返り、その言葉を聞いた栄之助は

塾で待っとる。

そう言い残して、戻って行く。
壮多のもとには、トリ・未章・清十郎が駆け寄ってくる。
清十郎は今度こそ、壮多と共に学べることを喜んでいる。
トリや未章に、涙目になっていることをからかわれる清十郎。

トリ:泣いちょる。

未章:泣いちょるばいっ、やーぃ!

清十郎:泣いちょらんっ!

トリ&未章:泣きべそかぶり、泣きべそかぶり、泣きべそかぶりっ!

清十郎:やぐらしかっ!

笑い出す若者たちを、遠巻きに見て微笑む崇善。
気にかけていた息子の成長が、素直に嬉しいらしい。

森山の私塾で

己の言葉を捨てよ。

通訳はいつでも
古きものにとらわれることなく
新しきことばと出会えるものであれ

ラナルド・マクドナルド(木村昴)との別れの言葉のとおり
大通詞杉原尚蔵の息子、稽古通詞:杉原敬生(すぎはらけいしょう)重岡漠 ら若き通詞見習いたちが
熱心に栄之助の英語塾に通っている。

壮多。

はい、和解いたします。

勿論、壮多の隣には清十郎も一緒だ。

don't be afraid.

恐れるな 己の言葉を持て

 

夕暮れたどこかの浜辺

海沿いの街道を旅人たちが通り過ぎる。
その浜に引き上げられた小舟。
顔に手拭いを巻いた男が、寝転んでいた。
起き上がったその男が、包帯か目隠しのように巻いた手拭いを外すと
それはなんと、顔の一部に火傷を負った神頭であった。
そう、この町では皆に認められなければ死んだことにはならない。
彼自身が言った言葉は、その後の彼にどのような行動を与えるのだろうか。

In the beginning was the word

エンディング

お疲れ様でした。
以前、スペシャルトークで高嶋さんが内田Pさんに神頭の名前についてちらっと言っていたのですが
神頭有右生(こうず ゆうせい)は、漂流後に名乗った名前で
もしかしたら、漁師の頃の神頭有右生(こうず ゆうせい)は、別の名前だったのかも知れません。
聖書を和解するにあたり God *** said(と言っていた) からモジっていたのかな。と考えられます。

くんちはシャギリの音だけだったけど、出てきましたね。
また純粋にお祭りを楽しむときが、いつか来て欲しいです。
本来なら出島もこのドラマで盛り上がっていた筈だもんね。

では、皆さま?おつきあいありがとうございました。

イムンア エナ ポーキィ

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わげもん~長崎通訳異聞~第4話:光さす海4

2022年02月04日 | わげもん~長崎通訳異聞~

長崎の港の沖に停泊する唐船。
その船に乗る神頭有右生(こうず ゆうせい)髙嶋政宏 から、立ち退きの条件に水と食料を要求された長崎奉行:井戸対馬守覚弘(いどつしまのかみさとひろ)石黒賢 は、神頭が交渉人に指名した森山栄之助(もりやま えいのすけ)小池徹平 に交渉を任せ、いざという時は砲撃も辞さないで欲しいという栄之助の進言を受け入れることにした。

夕暮れが迫る頃、神頭の仲間である吉次(きちじ)サンディー海 が、船内に降りてくる。
神頭と伊嶋壮多(いじま そうた)永瀬廉 に
知り合いだというもんが、2人に会いたかと。

そう知らせに来たのだ。

放して!
中国語で聞こえてくる女性の声、それはトリ(都麗)久保田紗友 だった。
唐人屋敷の人間と一緒に来たらしい。
壮多がどうしてここに来たのか尋ねると、「自分だって船くらい漕げる」と思いつめた様子で話す。
壮多にしがみつき
なして、なしていきなりおらんことになったと。
そう言って、涙声で壮多の胸を叩く。
その様子を眺める神頭、自分の好きな長崎(人)もまだ残っていると感じる。

すまん、どうするつもりだ。こんなとこまで来て。

解らん、夢中やったけ、ようわからん。
ばってん、もう置き去りとはいやばい。
うちも行くっ!

壮多、その言葉に驚く。
ダメだという壮多と押し問答になるトリ。
すると唐人屋敷の男が、

また船が来た、今度は奉行所の使いだ。

そう言って、奉行所手配の船が近づいていることを知らせる。

お奉行所の船。

その言葉に、神頭は自分への交渉に奉行所が動き出したことを察する。

栄之助が交渉人として、奉行所手配の小舟に乗ってやってくる。
吉次の案内で、栄之助が船内に入って来た。
蝋燭の明かりの元、テーブルを挟んで栄之助と壮多が座り、奥には挑むような顔の神頭がいた。

森山さん、俺は長崎を出ます。
アナタにはそれを告げようと思って・・・。

たったそいだけのこと、なしてこげん大事にせんといけんとか。

こうでもしなければ、この町はまた全て無かったことにする。
俺のことも、父のことも・・・。

長崎ば恨んどるとか。
お前の父親ば亡かもんにした。

ずっと思ってた、なんで俺はこの町に来たんだろう。
異国の船と、異国の言葉と、嗅いだことのない匂い。
よそ者が入ってはいけない島、路地。
でも、俺はここで神頭さんに会った。
トリや未章(みしょう)トラウデン都仁 や 清十郎(おおた せいじゅうろう)浅香航大 にも会った。
同じことで怒ったり笑ったり、助けに来てくれる仲間に会った。
そのときふと思ったんです。
あぁ、きっと父も同じものを見ていたんだろうなぁ。(壮多はにかむように微笑む)
そのときやっと、この町に来て良かったと。
俺は確かにこの町にいた、父もここで生きた。
だからここから船出がしたいんです

改めて言う、速やかにここを去れ。
船ば明け渡せ。

明け渡すぅ~?
先生(神頭、ロウソクの灯でパイプに火をつける)これ、俺の船なんですよ。

知っとる、こん船はマカオでお前が住んどった船たい。

マカオ?

こん船が家?

昔、マカオで聖書ば和解した男がおった。(栄之助、神頭の座る部屋に進み出る。)
男は、日本からの漂流民やった。
神頭さん、アンタのことたい。(神頭、渋い顔をする。)

先生が、漂流民?

神頭さんは渡さないっ。

ならんっ!
こん男は、長崎の内情ば広め日本ばかく乱させようという反逆者たいっ。

この人は、船乗りだっ!
流された海の上でなにもかも失くして、それでも生きようとした。
森山さん、日本に大砲は向けない。異国にこの国の内情は売らない。
俺がこの人にそんなことはさせない。
だから、ただ沖へ。ただ遠くへ漕ぎ出そうとするこの船に、水と食べ物を与えてくれませんか。

そげん港はこの日本の何処にもなかっ。
もう一度言う、奉行所は・・・

国や奉行に言ってるんじゃないっ、森山栄之助・・・俺はアナタに言ってるんだ。

その頃、奉行所では

長崎奉行所の船掛:白井達之進(しらい たつのしん)宮川一朗太 から、対馬守に「神頭の船に火薬が持ち込まれそうだった。」という一方が入る。
白井が一刻も早く手を打つべきだと対馬守に進言するが、奉行は栄之助に任せたのだからまだ攻撃するべきではないという。
だが、このままでは町が危うくなると言う白井に、大通詞で蘭語通詞会所の長:杉原尚蔵(すぎはら しょうぞう)矢島健一 が森山は元より覚悟の上なので、配慮は無用であると白井に強く同調する。(だから、おまいう?)

船内では

おいはこん町で生まれて育った。
お前のような、こん男のような悲しみも痛みも、おいにはなか。
やけん、オマエの傷はおいにはよう解らん。
ばってん・・・
おいはもっと、オマエと話がしたか。
違う生まれ・違う言葉・違う目の色、通詞ていうのは違うもんをひとつひとつ繋いでいくのが生業たい。
おいはもっと、オマエと語りたか。
おいのことが、こん町のことが憎かなら尚更、刀や鉄砲ばで向き合うとやなか。
言葉で近づきたかっ。
おいは通詞やけん。

帰れ、船出す。
水も食い物も要らねえ。
おめえ(壮多)も降りろっ!
俺は施しが欲しいんじゃねぇ、ぶんどりたいんだよっ!

神頭はいきがって見せ、壮多に肩でぶつかって行く。部屋中のものを蹴散らして、荒んでみせる。

オメエらに解るかぁ~、海の上を漂うってことがどういうことかよぉぉ~っ、んぁぁぁ~っ!
嵐ん中、帆柱切り倒して己の手で行き先絶つんだよっ!
仲間を失くし、望みを失くし、涙を失くし、心を失くす。
このとき、船に向かって火のついた矢が放たれていた。
物と交換され、船底で言葉覚えて・・・下等な言葉でっ。(膝まづいて物乞いの仕草をする。)
食い物くれ、水が飲みてぇ、小便さしてくれぇ、売らないでくれぇ、殺さないでくれぇ~この通りだぁあぁ。
(そう言って土下座する神頭、止めて欲しいとトリは泣き出す。)

言葉で近づくだとぉ、お前らに俺の言葉が解るのかぁ、俺の下等な言葉が通じんのかよっ、んぁぁぁっ!

生きるための言葉が、下等な筈ないっ!

何だとぉ。

生きようとしたアナタが、卑しい筈ない。
食べ物をくれ、水をくれ、小便がしたい、殺さないでくれ。
全部、全部生きるために大切な言葉じゃないかっ!

その時、船に向かって大砲の音が鳴り響き、船上から上がる火の手で
船内は煙が立ち込めてくるのだった。

甲板に上がる神頭に、吉次はこの船が囲まれていることを告げる。
船にはもう、あちこちに火のついた矢が刺さっており、危険な状態となっていた。

本日はここまで

第4話の4になって、やっと吉次に台詞がついてきました。
結構流ちょうに喋るし(ぇ、吹替かもよ
アクションも様になってましたね。

次回は松本いよいよラストです。

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わげもん~長崎通訳異聞~第4話:光さす海3

2022年02月03日 | わげもん~長崎通訳異聞~

夜更けに、長崎で代々の長崎奉行に仕える家老:周田親政(すだ ちかまさ)武田鉄矢 が、供の侍を従えて戻ろうとしたところへ、出島の内通詞:忠弥(ちゅうや)蟷螂襲 殺しの疑いが晴れた 伊嶋壮多(いじま そうた)永瀬廉 が現れる。

昨夜まで牢に居た者です。伊嶋壮多と言います。

ほぉ~、主が。いやいや話は聞いておる。殺しの疑いが晴れて良かったのぉ。
是非一度会うてみたいと思っておったが、探す手間が省けた。

そう言って、周田が護衛の侍に合図を送る。
侍たちが壮多の両肩を抑え、地面に跪かせる。

俺はただ、父を探しにやってきただけです。
なのに長崎は父の死を俺に隠し、人殺しの罪を被せ、
それを晴らせば命まで奪おうとする。

若造、おまえ知っとぉや。
こん町におる侍は皆他所もんたい。
江戸・薩摩・佐賀・福岡んぁぁ、刀ばぶら下げとる他所もんに勝手ばさせんためには
じげもんはじげもんでな、戦道具ば握らんばならん。

戦道具?

交易の金(胸の前でお金の仕草をする周田)
異国の内情。

それを守る為に・・・。

ぉば陥れようとするもんはな、ぉがこの手で始末ばつくっ!

そう言って、押さえつけられた壮多に向かい、周田は刀を抜く。

すると、周田の後ろにいた侍たち・壮多を押さえつけていた侍たちを蹴散らして
神頭有右生(こうず ゆうせい)髙嶋政宏 が現れた。

神頭さん?

そろそろかと思ってな、迎えに来たぜぇ。

上段から刀を振り下ろす周田を、軽く避けた神頭。
周田の後ろに回り込み、やすやすと取り上げた刀を周田の喉元に突き付ける。

ひぇっへっへっ!

俺は今、夢ば見とっとやろかっ。

お久しぶりでぇぇぇぇす。

ただん抜け荷ん差配だと思うちょったが、オマエ一体何者かっ!

そこへ同心:滝口修二郎(たきぐち しゅうじろう)平山祐介 が取り方を引き連れてやってきた。

遅か、遅かぞ。
早うこいつらば、ひっ捕らえんかっ!

ところが、滝口から出た言葉は違っていた。

周田様、どうかご神妙に。

周田は、自分が長崎奉行:井戸対馬守覚弘(いどつしまのかみさとひろ)石黒賢 に目をつけられ、滝口が自分を見張っていたことに気づく。

そこに居るのは神頭かぁ。
滝口は、周田の後ろにいた神頭を見つける。
神頭は周田の尻を蹴って捕り方たちの前に倒し、壮多・吉次(きちじ)サンディー海 と一緒に暗闇に駆け出して行った。
(もはや、お尻を蹴りだして逃げるの術が得意技。)

逃げ去る神頭たちに向かい、捕り方に抑えられた周田が叫んだ。
神頭、おまっ殺して行けぇ~っ!

暗闇に紛れ、沖に停泊する唐船に近づく

船上にいる見張りの目を盗んで、吉次と神頭が船に乗り込む。
あっという間に、刀を抜いた見張りを倒す二人。
それを縄梯子から見ていた壮多が、船に上がってくる。

長崎の町には半鐘の音が鳴り響き
柳屋でその音に不安を搔き立てられるトリ(都麗)久保田紗友 がいた。
戸の向こうで近付いてくる足音に、壮多が帰って来たかと思ったのだが
やってきたのは、女医のえま- 浦浜アリサ だった。

お産の帰りにそこで、浜ん向かう捕り方たちと行き会うて・・・。

捕り方が浜へ向かうことを知り、そこに壮多がいるかもしれないと思うトリ。

夜が明け、長崎奉行所では

対馬守の前に、オランダ語と英語の通詞:森山栄之助(もりやま えいのすけ)小池徹平 と
大通詞で蘭語通詞会所の長:杉原尚蔵(すぎはら しょうぞう)矢島健一 が訪ねてきていた。
長崎奉行所の船掛:白井達之進(しらい たつのしん)宮川一朗太 が控えている。

沖の船から、神頭と名乗る男が
当地を立ち去ることと引き換えに、水と食べ物をよこせと言ってまいった。
神頭は、周田の抜け荷に加担せる者。
そのような勝手、無論呑む訳にはゆかぬ。

はっ。

交渉を申し出たところ、神頭は主(栄之助)を名指してきた。
何故神頭がそなたを名指すのかは、我らにも解らぬ。

名指ししたのは、神頭ではないかも知れませぬ。
謹んでそのお役、お引き受けいたします。

船の中を歩き回る壮多

板張りの部屋に書かれた、聖書の英文を見つける壮多。

In the beginning ・・・

In the beginning was the word 
神頭が後ろからその言葉を読み上げる。

どういう意味ですか?

どういう意味だと思う。
簡素なベッドに転がる神頭。
ずぅ~っと考えてきた。
この船で何度も何度も口にしながら、ずぅ~っと。
(壮多に)海の上出んのは、初めてかい?

沖まで出るのは。

海はすげぇぞぉ~、思ってもみなかった自分が
腹の底から掘り出すときがある。(神頭起き上がる)
荒れた海に舳先が乗りあがると、天に船が突き刺さる。
危ねぇ、やられるっ。
でも怯えとは裏腹に
(胸を叩く)ここは何度でも叫ぶんだぁ
よぉ~し来いっ、上等だぁ
(ベッドの上で立ち上がり、両手でかかって来いの仕草をする。)
高く、もっと高く超えてやるっ。

嬉しそうな顔をする神頭に、壮多も微笑み
船に乗ってたんですね。
と言うが、徐々に神頭の表情が曇り始める。

昔のことだ。(ベッドの上に座り込む)
ある朝、船出して嵐に遭った。
何日も流された、でも生きたかった。
生きて帰りたかった。
神頭は、捕鯨船から日本にただ一人やってきて帰国まで長崎に置かれ、森山栄之助らに英語を教えたアメリカ人:ラナルド・マクドナルド(木村昴) や 漂着したアメリカ船ラゴダ号の、乗組員のひとり:カイ(カリマ剛ケアリイオカラニ) と同じ 漂流した日本人だったのだ。
辿り着いた異国の浜から、いくつも海を渡った。
寒かった・暑かった、鉄砲に怯え・病に臥し
ようやく、ようやく日本に連れてってくれるアメリカの商船に乗り込むことができた。
同じように異国に流れ着いた日本人も一緒だった。(日本が近づき光る海の向こうに陸地が見える。)
五年ぶりに島影が見えたときは、震えたねぇ。
皆でひとつひとつ指さしながら、知ってる景色の名前を言い合った。
あの岬、あの山、あの浜、向かってくる。
もうすぐあの港が俺たちを・・・。(神頭、梁からつるされた網を叩く。)
向けられたのは大砲(おおづつ)だった。

対馬守に願い出る栄之助

ただひとつ、お願いがございます。

白井が、栄之助に対して発言を控えるよう注意する。
だが、それを許す対馬守。

もし交渉が立ち行かず、万が一船が長崎に対し狼藉に及ぼうと致しましたら、容赦なく峻厳なご裁断をくだされませ。

その言葉に驚く対馬守だった。

故郷に大砲で追われた神頭

打つな、同じ国の人間が乗ってるんだ。
俺たちは日本のモンだ、俺たちを撃つなぁぁぁ。
姿を消す前、「信じるというのは、厄介なものだ。」と壮多に言った神頭。
「それが壊れたとき、自分(の信条)を根こそぎ持って行かれる。」
彼はこのとき、自分の生きて帰りたいという気持ちを、信じていた母国に砕かれてしまったのであった。

言葉を続ける栄之助

交渉とは、通詞にとっての「立ち合い」でございます。
これが成らねば通詞の名折れ、あまつさえ長崎はならず者に屈したと罵られ
誇りば失いましょう。
どうか、ご遠慮のう。

栄之助の覚悟に、自分の言葉を詰まらされる白井。
勝手なことを申すな。
そう言って、栄之助の言葉を押し留めようとするのが精いっぱいだ。

信じるものを奪われた神頭

砕かれた、全て。
あのとき。

悲しい顔をする壮多を見て

語りすぎた。
そう言って、話を止めるのだった。

いいえ、いいえ。
首を振る壮多。

栄之助の申し出に

杉原尚蔵までもが栄之助の意見に同調し、困った顔の白井。(←おまいう)
対馬守は、全てを栄之助に任せると許しを出した。

本日は、ここまで

じげもん、出ましたね。
地元のモノ(物・者)を表す言葉です。
そして、この第4話結構忙しいです。
えぇ、ワカメ干してて忙しかったんで(コラコラ
ちょっと自転車操業的になっております。
日付変わって、当日ですが間に合って良かったわ。

 

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わげもん~長崎通訳異聞~第4話:光さす海2

2022年02月02日 | わげもん~長崎通訳異聞~

オランダ語と英語の通詞:森山栄之助(もりやま えいのすけ)小池徹平 は、私邸で自作の英語の教本を見ている。
それは、Gのページで、彼が見ているのはgod 神袛 の単語である。
栄之助は、沖に停泊している唐船に書かれた英語のことが気になっていた。
通詞の名門に生まれ、幼い頃からオランダ通詞会所に出入りしてきた男:野田立之助(のだりゅうのすけ)浜田信也 が船の中で言った言葉、

聖書を和解しとる日本人が、かの地におったげな。

そして、置屋「柳屋」に居候の男:神頭有右生(こうず ゆうせい)髙嶋政宏 に初めて会ったときに彼に交わした言葉
英語んほが、得手ですか。英語の癖が強か。

見聞きしたもんが、いろいろ混じっております。

漂着したアメリカ船ラゴダ号の、乗組員のひとり:カイ(カリマ剛ケアリイオカラニ) が別の男::吉次(きちじ)サンディー海 と入替っていたことを知り柳屋に駆け付け、 神頭と話したとき
漂流民の数ば、揃えてくれと頼んだとは誰か。誰かっ!

そのとき森山の家に、蘭語通詞会所の者が「同心:滝口修二郎(たきぐち しゅうじろう)平山祐介から、至急和解して欲しいと頼まれた。」と駆け込んでくる。

出島にある、オランダ商館へやってきた栄之助。
使用人のティティに、2階の部屋に案内される。

そこには、滝口の他に

通詞の見習生:大田清十郎(おおた せいじゅうろう)浅香航大
大通詞で清十郎の父:大田崇善(おおた そうぜん)本田博太郎
芸妓見習いの少女:トリ(都麗)久保田紗友

オランダ人医師:モーニッケ
オランダ商館の勝手方:ヤンセン - 村雨辰剛
他にオランダ商館の人物2名

そして、主にヤンセンの用を務める内通詞:忠弥(ちゅうや)蟷螂襲を殺したと罪を着せられた伊嶋壮多(いじま そうた)永瀬廉がいた。

奉行所の牢屋にいた筈の壮多が、この場にいたことに驚く栄之助。
壮多が清十郎親子を後見人に、滝口を訪ねて来たらしい。
コイツ、とんでもねぇもん持ち込んで来たぞ。

そのとんでもない物とは、神頭から受け取った抜け荷の荷捌きに関する覚書だった。

砂糖・薬・細工物、積荷控えにない抜け荷の覚書です。

なんち。

壮多は、その覚書をあるヤンセンに突き付けた。

あなたの名前がここにあります。

うち聞いたと、モーニッケ先生とアンタが話しとるとば、
忠弥さんが抜け荷の手引きばしとるて。

彼女は聞いた
あなたと先生との話を
忠弥が抜荷に関わっていると

お前 オランダ語がわかるのか!
思わず立ち上がるヤンセン。

滝口が栄之助の腕を引っ張り、モーニッケ医師に和解してもらう
先生、あの子の言っとることは本当ですか?
(彼女の証言は正しいか?)

確かに話した。

我慢できない、失礼する。
そう言って、この場を逃れようとするヤンセン。

待てぇっ!

大田崇善が大声でそれを制止し、清十郎は無言で立ち上がる。
壮多は、皆に優しかったという忠弥が自分にかけた言葉を思い出していた。
これ以上、長崎におっても為にならん。
はよう、江戸に帰らんね。

忠弥さんを殺したのはあなただ。
そう言って、ヤンセンを指さした。

・・・・そのとおりだ。

やっぱり、わいかぁぁぁぁぁ。
そう言って、泣きそうになりながらヤンセンの胸ぐらを掴む清十郎。
異国人ば傷つけてはいかん。
という制止も聞かず、鬼の形相でヤンセンを殴りつけた。
これ以上はと、栄之助が清十郎を制止する。
清十郎、止めんか。
でもやんわり止めていない気がする崇善。

いつもは羊のように大人しい、外国語が話せずオドオドしている
彼が馬鹿にしていた日本人に殴られ、呆然とするヤンセン。

チュウヤが「手を引きたい」と言い出した。
抜荷の秘密を知る者を、生かしてはおけなかった。

ヤンセンが、忠弥をショベルで殴り殺した理由を話す。

出島を出る清十郎、彼に寄り添う壮多とトリ。
壮多はそっと清十郎の肩に手を添えるが、それをそっと外し歩き出す清十郎。
彼もまた、自分にとって大事な人を長崎に殺されたのかもしれない。
栄之助も遠巻きにそれを見守る。

どげんつもりか。
歩き出す壮多を呼び止める栄之助、つかつかと壮多の前にに歩み出る。

あん書き付けば、何処で手に入れた。
あん書き付けは、神頭が持っとったもんやろ。(トリ、心配そうに壮多を見る。)
牢からお前ば引っ張り出したとも神頭か。
神頭となんば企んどる。
神頭の使いっ走りばさせるために、おいはお前になんもかんも話したわけではなかっ。

使いっ走りなんかじゃないっ!

思うことがあっとなら、おいに向かって言え。

これは、俺が己で決めたことだ。

そう言って、壮多は出島を去って行く。
栄之助に一礼をして、壮多の後を追いかけるトリ。

長崎奉行所にて

江戸から赴任している長崎奉行。井戸対馬守覚弘(いどつしまのかみさとひろ)石黒賢 が 長崎で代々の長崎奉行に仕える家老:周田親政(すだ ちかまさ)武田鉄矢 と 長崎奉行所の船掛:白井達之進(しらい たつのしん)宮川一朗太 を相手に談議をしていた。

周田:船でございますか。

対馬守:そうだ。沖に無人の唐船が留まっておる。それが面妖での、大勢の者の気配だけがあり中には誰の姿もないと。

白井:恐れながら、抜け荷と関わりのある船ではないかと。

周田:いやいやいや、抜け荷にも唐船にも心当たりはございません。御懸念でありますれば、それとのう探りましょうぞ。
苦々しい顔つきの白井をよそに、対馬守にそう答える。

対馬守:頼む。

周田:はい。(答えた後、白井を睨みつける。)

対馬守は、その様子をじっと見ているのだった。

夕方になり、柳屋へ帰る壮多とトリ

置屋・柳屋を束ねる女将。壮多を住まわせ、仕事を世話してくれていた:しず(紅壱子) や仲間の女たちが二人を出迎える。
トリと壮多の友人、オランダ人を父に持つ青年:未章(みしょう)トラウデン都仁 も出てきた。
言葉には出さないが、信じて待っていてくれた未章に頷いて見せる。

かつて神頭の部屋であったが、今は壮多の部屋となった奥の座敷に戻って来る。
座卓に置いた父の手帳を見つめる壮多。
それを懐に入れ出て行こうとすると、トリが呼びかける。

何処に行くと。

トリ、有難う。
俺をずっと案じてくれて。

そう言って部屋の行燈を手に取り、灯りを吹き消す壮多。
出て行こうとする壮多の袖を、トリは思わず両手で掴んでしまう。

トリのその手をそっと両手で包む壮多だった。

本日は、ここまで

面妖(めんよう)、なんでしょう。
由美かおるさんが、お風呂に入る前にしか聞いたことのない単語ですが
小泉進次郎的に言うと、セクシーw(ぃゃ

(「めいよ(名誉)」の変化した「めいよう」がさらに変化したもの。「面妖」はあて字)

1 〔名〕 (形動) (多く「めんような」の形で連体修飾に用いる) まれなこと。奇怪なこと。不思議なこと。また、そのさま。めいよ。めいよう。めんよ。
2 〔副〕 どういうわけか。奇妙に。不思議に。

だそうです。

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わげもん~長崎通訳異聞~第4話:光さす海1

2022年02月01日 | わげもん~長崎通訳異聞~

出島で働く内通詞の忠弥(ちゅうや)蟷螂襲 を殺した疑いをかけられ、牢に入れられた伊嶋壮多(いじま そうた)永瀬廉

牢の中で、オランダ語と英語の通詞:森山栄之助(もりやま えいのすけ)小池徹平 から、通詞だった父親の失踪の真実を聞かされた壮多は、「長崎が父を殺した」と絶望する。

栄之助が蘭語通詞会所に戻ると、謎の船が長崎港の沖に停泊しており至急来て欲しいと言われる。

船内にある板張りの部屋にびっしり書き込まれた英語を見て、驚く栄之助。

その頃、長崎から姿を消したはずの神頭有右生(こうず ゆうせい)髙嶋政宏 が壮多のいる牢の床板を外して姿を現し、壮多を驚かせる。

誰も居なかった船内で

はじめに・・・あった・・・”ことば”・・・

栄之助は、その壁に書かれた英語を読み上げていた。

壮多のいる牢では

神頭が血の付いた太い針のようなものを放り投げる。

ここに居たら殺されるぜぇ。

俺が?

口封じだ、おめぇは狙われてる。

それは、壮多が移される前に、牢に入って来た男が隠し持っていたものだったのだ。
その針にべっとりと付いた血に、壮多はぎょっとする。

来るかい?

神頭は、自分があけた床板から、壮多に逃げないかと声をかけてきた。

オープニング

夜の浜辺を歩く神頭と壮多。
小屋で神頭を待っていた男が、彼に頭を下げる。

お前っ。

うわぁはははっ、吉次。壮多がおめえに見覚えがあるってよ。
それは、逃げ出したカイ(カリマ剛ケアリイオカラニ)とすり替わって、アメリカ軍艦プレグル号に乗り込んだ筈の謎の男:吉次(きちじ)サンディー海だった。

お前、日本を出た筈じゃ・・・。

戻って来たんだよ、俺を迎えにな。

神頭が脱いだマントを、吉次が受け取る。

謎の船の中で

後からやって来た野田立之助(のだりゅうのすけ)浜田信也 杉原敬生(すぎはらけいしょう)重岡漠 たちが、栄之助のいる場所までやってくる。

野田さん、こいです。
栄之助が、板壁に書かれた英語を見せる。

何年か前に、マカオにおったという水夫に聞いたことがある。
聖書を和解しとる日本人が、かの地におったげな。

日本人?

浜辺の小屋で

小屋の中で、火にあたる神頭と壮多。

何故助けてくれたんです。

誘いに来たんだよ。
どうだい、長崎を出ねぇか?

(苦笑いをする壮多)
俺を置き去りにしましたよね。

それをきいて噴き出し、大笑いをする神頭。
違う違う、何言ってんだよ、あんときとは違う。
そう言って壮多の肩に腕を回し、彼をなだめる仕草をする神頭。
お前は、痛みを知った。
この町から裏切られ、行き場を失くしてる。
神頭はそう言って壮多の肩を叩くが、その顔は嬉しそうにしか見えない。

だが、壮多は冷ややかな目で神頭を見つめる。
俺の父は生きている、そうも言っていた。

すると、壮多の肩に回していた腕を戻し、両手を広げて┐(´д`)┌ヤレヤレ
そうポーズをとって見せる。

生きてただろ、この町じゃ。
認められない限り、誰も死んだことにはならない。
自分の言い訳に、妙に納得というか感心する神頭。

一緒に来ねぇか。このままここに居ては危ねぇ。
今度は本当に、仲間が欲しいようだ。

何をするんです、ここを出て。
あの針についた血のりを見たあとでは、喜ぶ気にもなれない。

小屋の引き戸を開け、海を眺める神頭。
海の上から、この国を揺らす。

ふっ、そんなこと・・・。

できるさ。
今この国の周りを、多くの異国の船が窺ってる。
連中が知りたがってることを、教えてやんだよ。

どうやって・・・。

おめえはもう知ってる筈だ。
吉次を見てればな。

小屋の中では、アメリカ軍艦に乗っていた筈の吉次が、今ここに居る。

吉次だけじゃねぇ、放たれた者どもが今この時もこの国の内情を探ってる。
いずれ日本も気づくだろぉ。
海から数多
(あまた)の大砲(おおづつ)が、自らの国を狙ってるってことを・・・。

その言葉に驚愕する壮多。

この国を亡ぼすつもりですか。

いやいやいやいや、俺たちがやらなくったって、いずれそうなるさ。
来いよ、一緒に。
認めさせんだよ、自分たちがしてきたことをこの町の人間に。
でないと消されるぜ、オマエの父親のように・・・。

壮多の脳裏には、これまで父が死んでいたことを知っていたのに
その存在を消し、そのうえに暮らしを立てている長崎の通詞たちを思い出していた。

このままじゃいけない。
俺は、俺を消そうとする奴の顔をまだ知らない。
傷つけられたまま、ここを去るのは嫌です。

そう言って、神頭を見つめ返す壮多。
根負けしたのか、それとも呆れたのか

なるほど・・・。

そう言って、壮多の前に白い布で包んだものを投げ出した。
壮多が包みを広げると、そこには何か書面のような物があった。

この町が生き延びるため、周田長崎で代々の長崎奉行に仕える家老:周田親政(すだ ちかまさ)武田鉄矢)は、抜け荷を決断した。
周田親政は、長崎奉行付きのご家老だ。
周田は忠弥を通じて、ヤンセン
(オランダ商館の勝手方) 村雨辰剛 を引きずり込み、出島から運ばれた荷を俺や他の差配人に捌(さば)かせた。
流れ込んだ金で、江戸から赴任する奉行たちを巧みにあしらい、周田は長崎の利
(り)を守り続けた。
長崎のすべては、周田の手に握られた。

これは・・・。
壮多が書面を広げてみると、そこには「売渡依頼之~」と書かれた書面に品名と日付、ヤンセンから忠弥を通じて神頭に荷捌きを依頼したことを表す内容が書かれていた。

抜け荷の・・・。

そいつがあれば、オマエの殺しの疑いは晴れる。
確かめて来な、好きなだけ。

ただ、その言い方は壮多を励ますというより
また何か壮多を試しているような、そんな口ぶりだった。

本日は、ここまで

野田立之助の「げな」は、現在でも使われています。
つか、オラ普通に家で使ってます。
「げな」というのは、伝え聞いたことを表します。
「らしいよ」という意味です。(断定していない状態)
長崎特有の方言という訳ではありません。

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わげもん~長崎通訳異聞~第3話:苦い秘密5

2022年01月31日 | わげもん~長崎通訳異聞~

奉行所の牢で

出島で主にオランダ商館の勝手方:ヤンセン - 村雨辰剛 の用を務める内通詞:忠弥(ちゅうや)蟷螂襲 殺しの濡れ衣を着せられ、通詞だった父親の失踪の謎を追って江戸からやって来た青年:伊嶋壮多(いじま そうた)永瀬廉 が牢に入れられた。

壮多の父親:周吾 の失踪の秘密を知るオランダ語通詞:森山栄之助(もりやま えいのすけ)小池徹平 が、牢にいる壮多に自分が知ったことを話している。

通詞の名門に生まれ、幼い頃からオランダ通詞会所に出入りしてきた小通詞:野田立之助(のだりゅうのすけ)浜田信也 が子供の頃シーボルト事件に関わっていたため、彼の身代わりに周吾に話しが持ちかけられたのだという。
だが周吾は、汚名は被るが、長崎には二度と足を踏み入れないので、見逃して欲しいと言って姿を消したと言う。

壮多は、父親が江戸には戻って来なかった、一体どこにいるのかと栄之助に尋ねる。

すると、それまで背を向けていた栄之助が壮多に向き合い
その先の話ば、昨日初めて聞いた。
と言う。

追手が放たれた。

えっ・・・。

全てば知った男が長崎から遁走するのは、許されなかった。

まさか・・・。

雷の音がする雨の中、傘をさして通りを歩く大通詞で蘭語通詞会所の長:杉原尚蔵(すぎはら しょうぞう)矢島健一 の姿が映し出される。

また、奉行所にある自室の軒先で、長崎で代々の長崎奉行に仕える家老:周田親政(すだ ちかまさ)武田鉄矢 も雨を見つめていた。

旅姿で道を歩く男、すれ違う虚無僧姿の追手が切りかかっていった。

長崎が殺した。

これが全てたい。

江戸で生きようとした男を、お前たちが殺したぁぁぁ。

知りたいと言うたとは、オマエたい。

自分が知りたいと望んだ真実に打ちのめされる壮多は、叫び声をあげる。
栄之助は、牢を後にする。
雨が上がった夜、蘭語通詞会所に一人でいる栄之助。
それは、まるで自分が出した問いに壮多が答えを出すのを待っているかのようだった。

苦かぞ、ばってん飲め。
飲め。

その時壮多は、差し込む月明かりに照らされて一人呆然と牢の壁にもたれていた。

コンコン、コンコンと板を鳴らす音が聞こえるが、気にも留めない。
いや、気にした方がいい。
なにせその音は、彼のいる牢の床板から聞こえてくるのだ。

その頃、長崎の町では見張り番の鳴らす半鐘の音が鳴り響いていた。
また外国船がやって来たのかと、提灯を手に表に出てくる人たち。

置屋・柳屋を束ねる女将:しず(紅壱子) や 芸妓見習いの少女:トリ(都麗)久保田紗友 も半鐘の音に驚いて表に出てくる。
奉行所の役人が大勢で提灯を手に港へ向かう、その方向とは逆に通詞提灯を手に持った男が一人急ぎ足で蘭語通詞会所へやってくる。

森山おったぁぁぁ、奉行所の船番が力ば貸してくれるかて・・・。

船番?

不審な船が、迷い込んで来よったと。

すぐ行く。

森山を乗せた小舟が、沖に停泊している外国船に近づく・・・あれ、デジャブですか?

つか、オッケー時を戻そう。ではなく、これが1話のシーンでしたってことです。

ので、再掲載マジック使います。

~以下引用開始~

嘉永2年(1849)

江戸時代の長崎。当時唯一諸外国と貿易ができていた長崎は、オランダ・清国(中国)など幕府に許された国々とのみ交易を行う都市であった。
イギリス・フランス・ロシア・アメリカなどの西洋列強は、この港から日本との国交を結ぶ糸口を探っていた。

沖で停泊している外国船に向かう小舟。
船頭と共に外国船に向かうのは、オランダ語通詞である森山栄之助(もりやま えいのすけ)小池徹平 だ。
彼らが近づく外国船の周りは、明かりを灯した小舟にぐるりと囲まれている。
栄之助は、外国船に乗り込む。

開国を迫る列強と幕府との間に立ち、両者の交渉を言葉を以て担うオランダ通詞(つうじ)と呼ばれる者たちがこの街にいた。

やってきた栄之助を待っていたのは、長崎奉行所の役人 と オランダ商館の人物 だ。
彼の話をオランダ語で通訳する栄之助。
わげぇ(和解:和訳)致します。
船は突然、夜中に現れた。上がってみっと中は明るく、たった今まで誰かが笑いさざめいていたかのように、大勢の人々の気配があった。だが、どこにも人はいない。

奉行所役人:ありえっと、こん港なら。

オランダ語訳で、栄之助が伝える。
この町ならどんなことでも起きる。

ここは、長崎ですから。

役人と共に船内を探索する栄之助。
燭台のロウソクに照らされた船室の中を見て、目を瞠る(みはる)のだった。

~引用ここまで~

彼が板張りの部屋で見たのは、部屋一面に書き込まれた英語の学習の跡だった。
(姿を消す前の神頭有右生(こうず ゆうせい)髙嶋政宏 の回想にあった。)

In the beginning was the word はじめに言葉があり,
and the word was with God 言葉は神と共にあり,
and the word was God 言葉は神であった。 - 電網聖書『ヨハネによる福音書 1:1』

その頃、牢屋では

壮多のいる牢の床板を叩く音は続いていた。
奉行所は、沖に停泊している船のせいでそれどころではないらしい。

そしてついに床板が外れ、やっと気づいて驚く壮多。

そこから現れたのは、長崎から姿を消したはずの神頭だった。

第3話 苦い秘密 終了。

出たわ、というか出ないと思っていたTM1号:神頭先生。
凄いわ、ターミネーターみたいな登場の仕方だったわ。
一瞬2号かと思ったわ、ドキドキ。
時代劇で時空を曲げるマジック出るとは思わなかったわ。
脳が追いつかなかった。

松本いよいよ、次が最終話。
良かった8話じゃなくって、楽しいけど身がもたないしw

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わげもん~長崎通訳異聞~第3話:苦い秘密4

2022年01月30日 | わげもん~長崎通訳異聞~

柳屋の店先で

悪酔いした森山栄之助(もりやま えいのすけ)小池徹平 が目を覚ますと、女医。オランダ人と日本人のハーフ:えま- 浦浜アリサ が栄之助を覗き込んでいた。
驚いて声をあげ、飛び起きる栄之助。
近くで泥酔していたところを
柳屋の店先まで運ばれてきたらしい。
奥では、女将:しず(紅壱子)や芸妓見習いの少女:トリ(都麗)久保田紗友らが食事をとっている。

身体ば打ったようですね。
えまにそう言われて恰好がつかない栄之助。

生まれるより大事なことはなか。そう言っとりましたね、前。
以前アヤカの出産の際に、柳屋でえまが言った言葉だ。
(その時、居候の男:神頭有右生(こうず ゆうせい)髙嶋政宏 の捕物騒ぎに同行していた栄之助。)

そう思って母はうちば産んだとです。そう信じてます。

母上は・・・。

死にました、うちば産まれるのと引き換えに。
オランダさんとの子だったうちは、ここで育ててもらったようなもんです。

一方が立てば、一方がならん。
世の中はまっことままならん。
嘘ばつきたくない相手がおるとです。
大切な人の息子です。
ばってん・・・。

その様子を見たえまは、処方した薬湯を栄之助に手渡す。
飲みますか、気付けです。

受け取ってそれを飲もうとした栄之助、

苦かです。

と、えまに言われて薬湯を噴き出してしまう。

飲む前に言うてくださいよ。

その様子が可笑しくて二人とも笑い出す。

苦かですよ、治すときは何でも。
えまのその言葉に、何かを悟った栄之助。
自分は通詞として己の言葉を捨てたのではない、苦い秘密から逃げていたのだと。

翌日

長崎の町に夕立の雨が降る。
急に降って来た雨を避けようと走り出す人々。

壮多のいる牢にも、その雨の音は聞こえていた。

牢屋に新しい咎人が入ってくる。
新入りのその男は、壮多のすぐ近くで壁にもたれかかる。
男は、首元から隠していた長い針をを取り出し、隣にいた壮多を襲おうとしたのだが・・・。

伊嶋壮多、牢替えばい。

牢番に呼び出されて、壮多はその牢を離れて行った。
雨漏りがする為、空いていた牢に一人入れられる壮多。

すると、鍵をかけた牢番が何者かに賄賂を受け取っており・・・
金を渡していたのは、栄之助だった。

ふてくされる壮多に、

元気か?

と英語で話しかける栄之助。

とても、あなたも元気そうだ。

そうは見えないが、答える壮多。
栄之助は牢に背を向けて座り込み、話しをしに来たと言う。

一人の子どもの話たい。
そん子は小さか時から賢くて、一人で書を読み、一度聞いた蘭語ば直ぐに覚え
とぉの頃には一通りの和解ができるようになった。
やがて出島の医者と親しゅなった。
ある日、医者の為に日本の地図を和解するのを手伝った。(数人の通詞の中に立之助がいる。)
医者が幕府に目ばつけられた。
日本の地理や海防について、様々な図書ば持ち出そうとしたことが発覚した。
これらを一体誰が和解し、彼に与えたか。
御取調べが厳しゅうなり、そん子どもの父親がそいば知った。
いずれ大通詞として、長崎ば支える一人になるやろう。
(立之助は)そう言われていた子どもたい。
重鎮の一人ば、身代わりば立てようと考えた。
周吾さんに話しがいった。
子どもが生まれて、そん為の金が欲しかと。

まさか、俺の為に。

ばってん、生まれた子ば見て翻意したと。
息子に偽りの姿ば残しとうなか、そん代わり自分は長崎から消える。
二度と足ば踏み入れん。
消えた自分にどげん罪ば被せてもよか。
名などどげん汚してもよか。
ばってん、この身と心は譲れと。

壮多の父親、周吾がなぜ長崎から姿を消したのか
理由を知った壮多であった。

本日は、ここまで

栄之助より年長者の立之助が、年齢的にも家柄的にも
なぜまだ小通詞なのかという疑問も解決しましたですね。
さて、壮多は父親を探し当てることができるのか、そして忠弥殺しの犯人は見つかるのか
このエントリーはあと1回ありますが、次の第4話が最終話となります。
週末に出張が入ったので、ヘロヘロで4話起こせるか心配です。
いろんな意味で、なかなかバタバタしそうです。

そして、爆竹を鳴らす長崎のお盆。
時代考証とかの関係なのか、精霊船や灯篭は出てきませんでしたけど
あれはそうじゃないかと思わせるシーンもありましたね。
でも江戸時代に町なかであの爆竹が許されてたって、なかなか寛容だったのね。

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わげもん~長崎通訳異聞~第3話:苦い秘密3

2022年01月29日 | わげもん~長崎通訳異聞~

出島の農具置き場に戻る壮多

主にヤンセンの用を務める内通詞。清十郎ら若い通詞に加えて、トリ、未章らとも親しい:忠弥(ちゅうや)蟷螂襲 が殺され、現場に残っていた柳屋の提灯から、殺害を疑われる伊嶋壮多(いじま そうた)永瀬廉。
トリの友人、オランダ人を父に持つ青年:未章(みしょう)トラウデン都仁 の手配で、奉行所の手が及ばない出島の小屋に隠れていた。
オランダ商館の勝手方:ヤンセン - 村雨辰剛 の部屋に忍び込み、手掛かりを探してみたが 忠弥が抜け荷に関係していたということだけがヤンセンたちの会話から分かり、一緒にいた芸妓見習いの少女:トリ(都麗)久保田紗友 と別れて小屋に戻った壮多だが・・・。

中に入ると、何者かに襲われる。
揉み合っているうちに、それが森山栄之助(もりやま えいのすけ)小池徹平の私塾で
一緒に英語を学んでいる通詞の見習生:大田清十郎(おおた せいじゅうろう)浅香航大 だと分かり、驚く壮多。

通詞部屋に用があるちゅうて入れてもろぉた。

てっきり疑われていると思っていた壮多だが、清十郎の
わいが忠弥ば殺すはずなか。
わいはあいつから聞きたかことばあった、そん口ば塞ぐわけなか。
という言葉に、驚く壮多。

ばってん、周りばそう思うちょらん。
みなわいば疑ごうとる、なんかおかしか。

俺を邪魔だと思ってる奴がいる。
それとは別に、忠弥さんの裏側を探られたくない連中がいる。

裏側・・・。

抜け荷の手引きをしていたんだ、忠弥さん。

なんば言いよっとかぁ~。(清十郎、壮多の胸ぐらを掴む。)

それを知られたくない誰かが、自分たちのしたことを俺に擦りつけて、できるだけ早くことを終わらせようとしている。

長崎奉行所

江戸から赴任している長崎奉行:井戸対馬守覚弘(いどつしまのかみさとひろ)石黒賢 が長崎で代々の長崎奉行に仕える家老:周田親政(すだ ちかまさ)武田鉄矢から、出島に関わる殺人について下手人の目星がついたとの報告を受けている。後ろには、大通詞で蘭語通詞会所の長:杉原尚蔵(すぎはら しょうぞう)矢島健一 が控えている。

周田:恐れながら、お奉行様が気に掛ける程の一軒ではござらぬかと。

対馬守:亡くなった者は、出島の通詞と聞いておる。その者の身辺に、何か他に怪しきフシなどはない・・・

杉原:ございません。(杉原、言葉を遮る。)

対馬守は少々訝し気な顔をしていた。
奉行の部屋から離れ、周田の部屋で話す周田と杉原。

周田:解せぬ、お奉行は何故あの一件を気になさるのか。

杉原:なにせよ、伊嶋壮多が捕らえられ処罰されればカタはつきます。

周田:その男、まことに下手人なのであろうか。そなた達通詞たちは寄ってたかってそう言いたててはおるが・・・。

杉原:言いたてるなどと・・・。周田様こそ、何故この一件、深く触らず手早く落着なされようと?

周田:ま、そこはお互い触れぬということで。

どうやら、お互いが都合のいい結論を引っ張り合いしているようだった。

蘭語通詞会所

奉行所から足早に杉原が戻って来る。
栄之助、稽古通詞で杉原の息子:敬生(すぎはらけいしょう)重岡漠 が帰りを待っていた。
壮多がまだ見つかっていないことを、杉原に伝える栄之助。
奥の部屋へ進みながら、これでいっきに邪魔者の壮多が片付くと思っていたのに、もどかしいと言う杉原。

ばってん、伊嶋が下手人と決まったわけでは・・・。

あいつがやった。(それでいい。)そういうことばい。
そう言って杉原が障子を開けると、そこには大通詞で清十郎の父:大田崇善(おおた そうぜん)本田博太郎が杉原を待っていた。通詞の名門に生まれ、幼い頃からオランダ通詞会所に出入りしてきた男:野田立之助(のだりゅうのすけ)浜田信也 が崇善の相手をしていたのだ。

確かめたいことがあって、来た。
めずらしく声のトーンが低い崇善。

杉原:なんね。

大田:忠弥から聞いた話ばい。

杉原:忠弥から、いつ?

大田:亡くなる前、忠弥から訪ねて来よった。

杉原:わいを。

障子を叩く壮多。後ろには清十郎がいる。蘭語通詞会所に壮多がやって来たのだ。
驚く他の通詞。

伊嶋壮多です、ご無礼を。
驚く他の見習い通詞たちを清十郎が蹴散らすと、その騒ぎを聞きつけて
やぐらしか。(うるさい)と栄之助がやってくる。
そして、その後ろから崇善が現れる。

名乗れ

伊嶋壮多です。

何の用だ?

父のことを尋ねに、父の名は周吾です。
大通詞の杉原さまにお目にかかりたい。

やはりよか発音たいぃぃぃ~っ。帰るっ!(ぇ

杉原様にお尋ねになりたいことがあるのでは?

済んだ。おいが聴きたきことは、こん男が聴くっ!

通詞会所の所長部屋には、杉原の他に野田立之助と栄之助がいる。
その前に手をついてお辞儀をする壮多。

杉原たい、聞きたかこととは何ね。

長崎に来て父のことを探しました。
でも、誰もが父のことなど知らないと言う。
それは父が、周吾という通詞が何か禁を犯したからですか?
例えば、シーボルト先生を手伝うような。

そいは違う。

森山っ。

父上は優れた通詞やった。
容易く禁を犯すような人ではなか。

やはりご存じだったのですね、私の父を。
目を伏せる栄之助。

通詞の家業は世襲たい、周吾は家名に胡坐ばかいて精進もせん息子たちの面倒ば、よう見てくれて
森山やここにおる野田も、みな周吾には世話になった。

では・・・。
壮多は、長崎から姿を消した男:神頭有右生(こうず ゆうせい)髙嶋政宏の言葉を思い出していた。
お前の父親は通詞の仲間を売った。

禁を犯して、長崎の通詞たちをお上に注進した。
仲間を売り、そうして父は長崎から追放された。

何も言えない栄之助と野田。

そうと知ったらどがんすっと。

嘘です。
父が裏切り者なら、人はもっと私を罵る筈だ。
でも、誰も何も言わなかった。
この町は黙って、ただ私から父のことを隠し続けた。
何故です。
まだあるからだ、知られたくないことが・・・。

それまで薄笑いをしていた杉原の表情が厳しくなり、野田は沈黙が辛い顔をする。

俺はそれが知りたい。

そのとき、会所の通詞が奉行所に報告をし、町方が踏み込んできた。
同心:滝口修二郎(たきぐち しゅうじろう)平山祐介 が壮多を連れて、捕り方と一緒に会所から出て行く。

壮多っ!

先生はずっと、私を見張ってたんですね。
壮多は背を向けたまま、栄之助に話しかける。

違う、おいはそがんつもりで・・・。

だったら次はアンタが言ってくれ、今度こそ本当のことを。
その言葉を残して、壮多は連れていかれる。
他の咎人のいる牢に、一緒に入れられる壮多。

まことば話すべきです、隠せばアイツは益々暴こうとします。
何よりも、アイツに隠し事ばしたくなか。

ならんっ!
私事で言うとるやなか。
オランダとの交易は冷え込んどる。
そがんとき、我々長崎の通詞が江戸に隙ば見せる訳にはいかんばい。

そう言って、栄之助の肩を叩いて部屋を出て行く杉原。

森山、おいも森山も周吾さんには世話になった。
育ててもろうた。
あの時、栄之助の兄弟子だった少年は野田立之助だった。

おいは、これが道やと思うとった。
こん20年必死やった。
誰よりも立派な通詞にならんかいけん。
誰より学ばんばいけん。
シーボルト先生のことは、よぉ覚えとぉ。

強くはない酒をあおり、酒屋を後にする栄之助。
外では爆竹が鳴らされ、大人も子供もそれを眺めている。(お盆?)

野田:(シーボルト)先生の周りに大勢、学者やら通詞がおったことも・・・。

フラフラと歩く栄之助、男と肩がぶつかり倒れ込んだところをいいようにされて
転がされていた。

本日は、ここまで

己の言葉を捨てよ。という周吾の教えが、違う意味で栄之助にのしかかってきますね。
お酒に逃げてしまった栄之助。
このまま真実を壮多に伝えずにいられるのでしょうか。
それにしても、検索してもヒットし辛い長崎弁をぶつけてくるNHK。(今回はそこまでなかったけど)
朝ドラとか、方言指導が入っていてもそこはかとなく標準語寄りでしたよね。
どうしたんだ、NHK。
己の言葉(標準語)を捨てにきとるんかいっ!

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わげもん~長崎通訳異聞~第3話:苦い秘密2

2022年01月28日 | わげもん~長崎通訳異聞~

出島の夜

オランダ商館から男たちの歌声が聞こえる。
それを聞きながら、通詞と書かれた提灯を提げてオランダ語通詞:森山栄之助(もりやま えいのすけ)小池徹平 が戻るところだ。
どうやら歌っていたのは、カピタンと呼ばれるオランダ商館長。出島のオランダ人たちを代表するトップ:レフィスゾーン(リチャード・ヴァン・ローイ)や、オランダ商館の勝手方:ヤンセン - 村雨辰剛 たちだ。
彼らが開いた夕食会に、柳屋の売れっ妓芸者。豪胆で頼りになる、トリの姉貴分:季蝶(きちょう)木月あかり や芸妓見習いの少女:トリ(都麗)久保田紗友 も招待を受けている。

歌い終わると、カピタンの合図でワインで乾杯が行われ、食事が始まる。(ヤンセンは勧められたワインを断っている。)

賑やかやろ。

今年の荷降ろしが無事済んで、お楽しみみたいですね。

賑やかな宴の様子に、通詞の名門に生まれ、幼い頃からオランダ通詞会所に出入りしてきた小通詞:野田立之助(のだりゅうのすけ)浜田信也 と 栄之助が、オランダ商館の二階を見上げる。

立之助はこれから夜勤があると言ってその場を離れ、栄之助はある建物の戸を開ける。(通詞の詰所か?)
行燈の光の奥には、大通詞で蘭語通詞会所の長:杉原尚蔵(すぎはら しょうぞう)矢島健一 が居た。

幽霊っていうとはおっとやなぁ。
二十年も経って出てきよった。
日誌のようなものを書きながら、栄之助に話す杉原。

はっ。

江戸に息子がおるとは知っとったのか。

いえ、周吾さんのことはあれ以来何も・・・触れるなと言われとりましたけん。

今、壮多(いじま そうた)永瀬廉 ちゅう小僧が二十年も前の古傷ば晒したら、長崎は終いばい。

彼のことは私が見ておりますから。

出島の出入り口の橋で

カピタンたちの夕食会の帰り、トリが主にヤンセンの用を務める内通詞で清十郎ら若い通詞に加えて、トリ、未章らとも親しい:忠弥(ちゅうや)蟷螂襲 と出会う。
季蝶たちは泊まりで、トリは柳屋へ一人で戻るところだった。忠弥はこれから出島に戻るところらしい。
出島に忘れものでもしたのかとトリが尋ねると、そうではないらしく

そうや、柳屋に戻るとやったら、言伝(ことづて)ば頼めるね。

忠弥はトリに伝言を頼んでいた。

***************************

杉原のいる出島の建物を後にした、栄之助。
すぐにオランダ商館で下働きをしているティティを見かけて、猫車を押す彼に声を掛ける。

モリヤマさん。
ティティ働き者、さっき忠弥さんホメタ。

ほぉ~、出島で忠弥さんに褒められたら一人前たい。
そう言って彼を労っていると、離れた場所で誰か男の叫び声がした。
壮多は声のした方向、オランダ商館の向こう側にある塀の方向を振り返った。

柳屋にある塩頭のいた部屋

ロウソクの明かりの下、今は壮多が塩頭のいた部屋を使わせてもらっている。
壮多はまだ英語の勉強をしているようだ。
出島から戻ったトリが、小声で単語を読み上げる壮多に話しかける。

そいは英語?

うん、まだ下手だけど。

壮多ならすぐ達者になっとさ。

う~ん、どうかなぁ。

今頃、壮多のおとっつぁまはなんばしとんやろ。(壮多、わからないといった顔をする。)
生きとっさ、そして会いに来るとば待っとっとさ。
壮多、微笑む。トリが、塩頭が居なくなり壮多が言って欲しい言葉をくれる人間が居なくなったことを、気遣ってくれていると感じたのだ。自分が知ったばかりの、長崎の人の優しさを思い出す壮多。
地球儀を動かしながら、
トリのおとっつあまも、海の向こうで元気だといいな。

頷くトリ。
トリの名前は、唐語?

おとっつぁまが付けてくれたの。
トォリィ、都に麗しいって書くとさ。

麗しい、都・・・。

都って字は、唐語で「全部」っちゅう意味やけん。

(ふぅ~ん、おぉ。)全部カワイイっ!(トリを指さす。トリは照れた表情。)
そぉか、トリのおとっつぁまはトリのこと、全部カワイイと思ってつけてくれたんだ。

トリ、うんうんと頷く。

いいおとっつぁまだな。

頷くトリ、壮多を見つめていて何かを思い出し・・・。

そうだ、忠弥さんから言伝ば預かってきた。

忠弥さんから?

タキエ橋で待っとるて、話があるとげな。

トリは出島から帰る途中、忠弥からこの伝言を預かってきたのだ。
急いで提灯を手に、橋へ向かう壮多。
だが、その場所には・・・
頭から血を流して倒れている忠弥の姿があった。

驚いて提灯の火を消す壮多。
忠弥の身体を揺するが反応はなく、壮多の手には忠弥の血がつく。
すると、川べりの石が水に落ちる音がし、人の気配に気づく壮多。
その場に提灯を残したまま、逃げていく人物を追いかけていくのだった。

翌日、奉行所による壮多の人相書きの手配が、長崎の町に貼りだされる。

蘭語通詞会所

通詞の見習生:大田清十郎(おおた せいじゅうろう)浅香航大
大通詞で清十郎の父:大田崇善(おおた そうぜん)本田博太郎
野田立之助、杉原尚蔵 らの前で、忠弥の死が知らされる。
忠弥は頭を殴られて殺されており、奉行所が壮多の行方を捜しているということだった。

同心:滝口修二郎(たきぐち しゅうじろう)平山祐介 が栄之助と捕り方を引き連れて柳屋へ向かっている。

杉原:壮多という男と忠弥とは、何か遺恨があったということか。

それを聞いて、清十郎が会所を飛び出していく。

壮多は夕べからずっと戻っていないと言う置屋・柳屋を束ねる女将:しず(紅壱子)
女たちは、その様子を障子の陰から覗き込んでいる。

行き先に心当たりは無いかか。

タキエ橋の死人と、壮多に何の関りがあっとですかぁ。

殺されたのは夕べだ、そのそばに転がってたのが・・・。
滝口は現場にあった提灯を見せる。

こいはうちの(提灯)・・・へぇぇぇ~っ!
しずは驚いて腰を抜かす。

暖簾の外からその様子を聞いていたトリ。
柳屋から離れようとすると、清十郎に見とがめられる。

おい、待たんか、聞きたかことがあっと。

知らんばい。

伊嶋壮多はあん店で寝泊まりしよったやろーがっ!

うちはお座敷やらお稽古やらいろいろあっとさ。
壮多が待ち合わせの後、どこに行ったかなんていちいち気にしとらん。

待ち合わせ、おぃっ!忠弥とか。

なん・・・。

忠弥ば殺した奴は、俺の手で仕留めたかっ!

出島の船着き場では

小舟から持ち込まれた樽を運ぶトリの友人、オランダ人を父に持つ青年:未章(みしょう)トラウデン都仁。
樽の中を親方に見せ、中身を確認してもらって出島の中へ運び込む。
小舟には、もう一つの樽が積まれているが・・・。

もはやデフォルトなのか、ヤンセンが荷役を叱りつけている。
親方は、もう壮多のような騒ぎはコリゴリなのか、謝っておけばいいからと兎に角荷役たちに頭を下げさせている。

その場所を避け、猫車に樽を乗せた未章が出島の町を進んでいく。
辿り着いたのは、動物が飼育されている場所にある小屋の前で・・・。

樽の中から、隠れていた壮多が出てくる。
そこの畑の道具小屋ばい、荷揚げの間は手入れがまどぅになるけん。
ここにおればかたか。
出島ん中におれば、奉行所は手が出せん。

詫びる壮多に、うんうんと留飲を下げさせることができて満足する未章。
ヤンセンに絡まれたときの借りを、返した気分になる。
小屋の戸をノックする音に、慌てて壮多に隠れるように指示をする。

訪ねてきたのは、料理小屋にいるティティだった。
未章とは仲が良く、出島の食べ物を持ってきてくれる段取りもついているようだ。
夜になり、未章とティティに事情を話す壮多。
忠弥さんは、俺と待ち合わせをして殺された。
そいつは、俺の父親のことも知っている筈だ。

忠弥とヤンセンはいつも一緒だと言う、ティティ。
毎晩行われる夕食会で皆が一緒に食事をするのはオランダ商館の決まりだという、ティティからヤンセンの部屋の場所を聞き出し手掛かりを探そうと思いついた壮多は小屋を抜け出し、ティティの情報を基に夕食会の間にヤンセンの部屋に忍び込む。

夕食会でワインを浴びるように飲むヤンセン。いつもは勧めても余り飲もうとしないのに、その様子がおかしいことに季蝶やトリは気づいていた。

ヤンセンの部屋で手掛かりを探す。
だが、悪酔いしたヤンセンが介抱され、部屋に戻って来るのを察する。
慌てて隠れる場所を探す壮多。

トリも付き添ってついてきていた。
別のオランダ人に肩を担がれ、椅子に座らされるヤンセン。

水差しから、コップに水を入れようと少し離れると、
ベッドの下に隠れている壮多に気づく。(壮多、トリに構わないでのサイン)
それを知らないオランダ人がヤンセンを諭す。

早く新しい通詞を雇え

彼の代わりはいない

確かに だが彼は危険な男だった
彼は密貿易の手引きをしていた

黙れ(トリがいる為、ヤンセン怒鳴る。)

私、お座敷に戻りますね。

大丈夫、彼女にオランダ語はわからない

後ずさりしながら、ヤンセンの部屋を出るトリ。
ヤンセンは水を飲んでいて気が付かない。トリの陰に壮多が隠れて一緒に部屋を出て行く。

トリと壮多は商館の建物の外に出るが、別のオランダ人が酔っ払いながら恋人の名を読んで歩いて来たため
2人で物陰に隠れた。
壮多に肩を抱き寄せられていたのに気づき、その腕を払うトリ。

なんであがんところにおっと。

手掛かりを探してた、忠弥さんを殺した奴の。

あったやなかね、手掛かり。
忠弥さんがまさか・・・
トリは話せないだけで、オランダ語の意味はうっすらと解っていたのだ。

このことは誰にも言うな。

言う訳なかろ、出島の遊女や禿(かむろ:江戸時代の遊郭に住む童女)がどいだけ忠弥さんに助けてもろたか。
嫌がらせされても騙されそうになっても、みんな・・・みんな忠弥さんが助けてくれた。みんな・・・。
そう言って、トリは泣き出す。明るい筈のトリにも、そのような苦労があったのだ。
そして神頭が言っていた、信じることの危うさ、それが崩れたとき根こそぎ持って行かれるという意味をなぞっている気がして堪らなかった。

泣くな。そう言って、壮多はトリの肩をさする。

未章が手配してくれた小屋に戻る壮多。
誰にも姿を見られていないことを確認し、小屋に戻ったのだが・・・。

本日は、ここまで

一体誰が忠弥を殺害したのか。
画面に映った川べりの足は、足袋なしの草鞋履きだったように見受けられましたが・・・。

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わげもん~長崎通訳異聞~第3話:苦い秘密1

2022年01月27日 | わげもん~長崎通訳異聞~

嘉永2年 1849年

1849年、ペリー来航4年前の長崎。
オランダ語と英語の通詞:森山栄之助(もりやま えいのすけ)小池徹平は、彼に英語を教えたアメリカ人:ラナルド・マクドナルド(木村昴)から示された道、若者たちに英語を教えるという目的を果たすため、英語の私塾を開いていた。
自分のところへ英語を学びに来ないかと、通詞だった父親の失踪の謎を追って江戸からやって来た青年:伊嶋壮多(いじま そうた)永瀬廉 に声をかける。

伊嶋壮多、大田清十郎(おおた せいじゅうろう)浅香航大 、今日から共に英語ば学ぶ。
壮多は江戸の生まれたい。

(栄之助に声をかけられた場面の回想)
私の父をご存じですか。
知らん。

 

今日このときから、己の言葉を捨てる。

栄之助の言葉に、壮多の父親が残した手帳に、「己のことばを捨てよ」と書かれていたことを思い出している壮多。
やはり、栄之助は父のことを知っているに違いないのだ。

オープニング

諳★利亜興學小筌 一 (★はマダレに巳) という名の、栄之助が作成した教本を基に講義が進められる。
内容は、アルファベットの発音に始まり、単語の意味と発音が書かれていた。
栄之助がまず手本として発音すると、稽古通詞の杉原敬生(すぎはらけいしょう)重岡漠ら一同がそれに倣って発音する。

他の塾生が帰ったあと壮多は羽ペン、清十郎が筆で単語の書き取りをしている。
ちょっと退屈してきた清十郎は足を崩し、扇子で扇ぎだしていた。

面白かや。

まだ、わかりません。

清十郎は思い立ったように壮多の方を向き、話しかけた。

わいは、なして蘭語ば話せる。
(出島で、オランダ商館の勝手方:ヤンセン - 村雨辰剛 と 清十郎が揉めだしたとき、オランダ語が話せない清十郎に代わり、壮多がオランダ語でヤンセンに話し始めた。)

江戸で奉公していた店の傍に、オランダ宿があったんです。
雪の中、壮多が店の外で薪を割っている。
店の裏は蘭語を学ぶ塾でした。塾から聞こえてくるミンドク(インドク、カモシレーヌ)を毎日聞いてたんです、これ(手帳)を見ながら。

その手帳には、「己のことばを捨てよ  周吾」の文字が書かれていた。
2人の話している部屋の外を、栄之助が通りかかる。
わいは、言葉ば覚えて何ばしたかったと、誰と話したかったと。
壮多は、じっと手帳を見つめる。
栄之助は涙ぐみ、子供の頃を思い出している。
差し向かいで、自分と兄弟子に蘭語を教えてくれた人物。その言葉を思い出していた。

己の言葉を捨てよ。
こいは通詞の戒めたい。

兄弟子と幼い栄之助は、声を揃えて「はい。」と返事をしていた。

栄之助は、その場を立ち去る。

清十郎が壮多から手帳を取り出して眺めようとすると、壮多が「おい。」とめずらしく大声で注意し、清十郎から手帳を取り返す。

なんか。

驚く清十郎。
すると壮多は急に清十郎の方を向き、頼みごとをしてきた。

清十郎殿。
急にへりくだってきた壮多に、わざと背を向ける清十郎。
彼の腕を掴み、表へ連れて行き、どこかへ歩き出す。

なんか、離さんか。
何も言わず自分を連れ出そうとする壮多に、アタマに来た清十郎がその腕を振りほどいた。

おい、なんばしよっとか。

壮多は清十郎に主にヤンセンの用を務める内通詞:忠弥(ちゅうや)蟷螂襲 さんに会わせて欲しい。」と頼みだす。
出島で清十郎が壮多の名前を聞いたとき、忠弥が壮多の名前に反応していたからだ。

あの人は、ずっと出島で働いてきたんですよね。

どうやら忠弥は何十年も出島で内通詞をしており、清十郎も子供の頃には可愛がってもらったとのこと。
忠弥に聞きたいことがあると言う壮多に、諦めろと立ち去ろうとする清十郎。

ぐぁぁぁぁ~。
ゲンコを振り上げる壮多に、驚いて怯む清十郎。

くらすぞ。
壮多が清十郎に向かって笑って見せる。
覚えとけぇ、わいばくらすのは おいばい。
あのとき、栄之助の塾で清十郎が壮多にかけた言葉だ。

やっぱり「殴る」という意味なんですね。
コイツ分からなくて笑ってたのかと、呆れる清十郎。
つか、長崎弁はオールスタンダードだと信じて疑わない男( ー`дー´)キリッ

脅かされて、からかわれたことに気づき、壮多の胸ぐらを掴んで凄むのだった。

出島では

出て行こうとする忠弥に、声をかける柳屋の売れっ妓芸者。豪胆で頼りになる、トリの姉貴分:季蝶(きちょう)木月あかり たち芸妓衆。三味線方として、後ろには見習いの少女:トリ(都麗)久保田紗友 もいる。
出島に出入りする日本人や混血日本人にとって、忠弥は頼りになる存在なのだ。

そこへ、壮多と彼に引きずられて清十郎がやってくる。

清坊ちゃん、どげんしたと。
壮多の姿を見かけて、トリは立ち止まる。

忠弥に挨拶の礼をして、話しかける壮多。
壮多と言います。周吾の息子です。
父のことを教えてくれませんか、俺は父を探して江戸からやってきたんです。
(トリは季蝶に呼ばれて中へ入る。)
20年前、何があったんです。
長崎の人たちは、何故父を知らないと言うんです。

見つめ合う忠弥は何も言わないが、清十郎が当時何かあったか言い出し始める。
20年・・・、通詞が大勢罰ば受けて・・・。

罰?

おふくろさんが言うとった。
オヤジ殿の白髪がイッキに増えたのは、出島医者のシーボルト先生・・・

清坊ちゃん。
それを遮る忠弥。
壮多さん、もし・・・お前さんの父親が生きとってぇ、そいでも顔ば見せんっちゅうことは
そんほうがお前さんの為になる、そう思ぉたからやなかと。
これ以上、長崎におっても為にならん。
早う江戸に帰らんね。

そう言って、忠弥は立ち去って行った。

柳屋で

アヤカの子の診察をする女医。オランダ人と日本人のハーフ:えま- 浦浜アリサ は、子どもの熱が下がったから安心するようにとアヤカに伝える。
置屋・柳屋を束ねる女将:しず(紅壱子) に見送られ表に出ようとするが、髪に手拭いがかかり、診察の格好のままであることを忘れていて、しずにからかわれる。
そこへ壮多が、えまに教えて欲しいことがあると言って、店の前で彼女を呼び止める。

お医者様のシーボルト先生のことに・・・・

ぅああああああああああああ

女将が大声を出して、壮多を店の中へ押し込める。
店先で、そんな名前を出してはいけないと言うのだ。
20年前の出来事なので、若い人間は知らないが女将たちの年齢の者はまだ覚えている可能性があるからだ。

名前を言えないあの人状態。

どうやら、長崎でその名前はタブーとなっているらしい。

フォン・シーボルト。
これより26年前、オランダ船でやってきた若きドイツ出身の医師は、日本に於いての情報を収集するという任務を負い、日本の詳細な地図を持ち出そうとしたことを幕府に咎められ、国外追放となった。
所謂、シーボルト事件ですネ。

先生に地図ば渡したお役人は、島流しんなったり牢で亡くなったり、長崎の通詞も大勢捕まったとさ。
大騒ぎやったて、うちん師匠が言うとった。
オランダさんに地図ば渡しただけで、島流し・・・おかしか話たい。
えまは冷笑の後、柳屋を出て行こうとする。

えま先生は・・・。

半分、オランダ。
そう言って、暖簾をくぐって行った。
壮多は、長崎の暗い影の歴史をひとつ知ったのである。

本日はここまで

ついに、聞き取れない長崎弁キターーーーーーっ!
しゃーないから、よく似た長崎弁「みじょか(かわいい)」から想像して「とのこと逃げ」してみた。
聞き取れない=グーグルさん不可能なんだよねぇ。
ついでに聞き取れない壮多の台詞もキターっ!
ミンドクって聞こえるけど、韻読(いんどく)って単語もないし。ムキョーっ!

いっぺん、シンドク? by地獄少女←ちがーっ!

そしてIMEパッドで出てこない旧文字も出たー!チッキショーっ。

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わげもん~長崎通訳異聞~スペシャルトークライブNHK

2022年01月26日 | わげもん~長崎通訳異聞~

こちらは、NHK土曜ドラマ「わげもん」2話放送直後にNHKで配信された

スペシャルトークライブ配信について触れたものです。すでに配信は終了しています。

出演は蘭学者崩れの置屋の居候、神頭有右生(こうず ゆうせい)を演じる髙嶋政宏さん、内田Pこと「わげもん」制作統括の内田ゆきチーフプロデューサーです。

現代風のセットの中、内田Pさんと神頭先生役:髙嶋政宏さんとのお話が36分ほどストリーミングされていました。
まだ見られると思ったら、なんか登録とかしなきゃなんで、ストリーミングから3~4分経過後から見始めたうろ覚えで記載しますことをご容赦ください。

森山栄之助(もりやま えいのすけ)役の小池徹平さんについて

小池徹平さんのおでこに、シワが寄らないことを褒める高嶋さん。
実は時代劇のかつらをかぶると、おでこにしわが入りやすくなってしまうが
地毛であれば入らないはずのシワが入るのはよろしくないとのことで、所作の先生に注意されるのだそう。
また所作の話の中で、処刑の仕草で首の横に手を当てるのは、現在の日本人だと手を首の前に持ってきて横に動かすが、打ち首で日本刀で首を刎ねるのだから、こう(首の横に手刀を当てる)なんだとおっしゃってました。

伊嶋壮多(いじま そうた)役の永瀬廉さんについて

視聴者からの質問で、撮影前の永瀬さんの印象と一緒に撮影に入ってからの永瀬さんの印象の違いがあったか。
というような内容の質問が高嶋さんにありました。
撮影前の印象についてはあまり触れられておらず、撮影に入ってからの永瀬さんと見つめ合うシーンが多くあり
吸い込まれると言うか怪しささえ感じる永瀬さんの魅力について、語っておられました。

神頭有右生(こうず ゆうせい)の役柄について

役作りへの質問や神頭らしさについてお話がありました。
視聴者から身体が大きく見えたのは、コロナ禍でジムへ通えず自転車だけ漕いでいたが、ある日鏡を見て愕然とし「これはいけない」と自主トレを強化したら、身体がどんどん大きくなって・・・。神頭は身体も心も大きくというところにマッチしてましたよね。
最初は壮多やトリや未章たちの頼りになる兄貴のような存在から、だんだん怪しくなっていく。そのタイミングもこだわりが・・・。設定には江戸にいたような内容もあったそうなので、巻き舌にしたいけどあんまりやると話がコミカルになるから、いつ巻き舌にするかのタイミングにこだわりがあったみたいです。

また、カイを運び込んだときにトリに布団を奪われ、転がされるシーンについては、トリ(都麗)役の久保田紗友さんに「思いっきりやってね。」と高嶋さんから伝え、転がりすぎてもトリのお芝居が生きなくなるし、勢いがなければリアリティがないとのことで、こだわり・渾身の回転だったそうです。

壮多が父親が使っていたという手帳については、綴り紐が魚の骨のようなもので当時は作られていたしつらえなのでサッとひらきにくく、最初は神頭がページを開けて読む設定だったのですが、サッと開くことが難しいため、壮多に「開いてみろ」と全部フッちゃったそうです。演出としても正解だったというようなお話しをされてました。そうしたら永瀬さんが本番はサッと開いてたけど、後で「あれが凄く開きにくかった。」って言ってましたwって、リアルソフトジャイアンなスタイルだったみたいです。

英語の心得について、意図的に役の内容を細かく説明せず知り合いの方に助言を求めたところ、「あまり流ちょうな発音ではいけない。」みたいなことを言われたようです。日本人が話す英語を心がけておられたそう。(アドバイスされたのは奥様ではないかと、勝手に妄想中。)

また、このお話の中で内田Pさんのご先祖が通詞であったことをお話され、それからのルーツは神戸や浦賀になっていったそうですがこれには時代背景に沿った理由があり、貿易の地が長崎から神戸や浦賀に移り変わったことにより、通詞らも仕事を求めてその地へ流れて行ったということでした。
原作の宮村優子さんがドラマの構想がまだ固まっていない頃に、内田さんが先祖が通詞であったことを話すと「通詞のドラマを作ろうよ。」という話になり、すぐに企画が通ったわけではないが、本来現代劇が放送される土曜ドラマに「通詞の仕事は、自分たちの意思や判断で物事が進められないので、現代のサラリーマンに通じるものがある」ということを話しておられました。
高嶋さんは、昔はコンプライアンスなんてないから、通詞が勝手に自分のさじ加減で通訳してしまうと、幕府(政府)にひどい目に逢わされたのではないかと仰ってました。

食べ物の時代考証や置屋の様子等について

神頭がアガリと言って、お姉さんたちの手紙の代筆で得た報酬の食べ物は長崎らしいものがあり、驚いたし美味しかったとのこと。
角煮やチョコレートがあったり、カステラやボーロも出てきた。ボーロと言うと普通「玉子ボーロ」という小さい粒のモノを想像するけど、こんな大きさで(手で大きさをつくる)またスタッフのみんなもいただいたけど本当に美味しかったとのこと。
あと、神頭は女物の着物を羽織っていたが、これも長崎らしいといっておられました。

また、壮多が置屋の手伝いをしているときに女性たちに、「カステラ」や「よりより」や「ざぼん漬」のお使いを頼まれたのは、それだけ壮多が柳屋で可愛がられていたということですね、と高嶋さんがおっしゃると内田さんから
あれらの食べ物については最初から設定に組み込んでいたわけではなく、長崎大学の先生が「この時代の長崎ではこういうものが食べられていたんですよ。」と差し入れに持ってきていただいたものを、物語に採用させてもらったとのことでした。

高嶋さんが撮影でお気に入りの場所について

砂浜のところ。(長崎やどこかの海ではなく琵琶湖だそうです。)NHKのドラマで上杉謙信の役をされて以来の琵琶湖ロケだったそう。また、内田さんのお話によると、このドラマの撮影は本当に天気に恵まれたとおっしゃってました。NHKはドラマで海の撮影だと結構琵琶湖をお使いになるとのこと。
あとは、柳屋の向かいの建物の二階から、柳屋を眺めるアングルが高嶋さんは気に入っておられたご様子でした。
灯りの取り方について、ロウソクの明かりの付け方に紙縒りを使う等高嶋さんから提案があったようです。
第2話で神頭先生はダークな一面を見せて姿を消しますが、当初別の演出であったのですが「あの方法」で姿を消すのが、高嶋さんはより素晴らしかったと感銘しておられました。

ごめんね、全部拾ったわけではないのですが、大体こんな感じでした。
オラは勝手に、高嶋さんのシューズの柄が気になってw
あのチョイス、さすがです旅番長。

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わげもん~長崎通訳異聞~第2話:消えた漂流民5

2022年01月25日 | わげもん~長崎通訳異聞~

出島にあるオランダ商館の前で

オランダ商館の二階で

大通詞で蘭語通詞会所の長:杉原尚蔵(すぎはら しょうぞう)矢島健一

大通詞:大田崇善(おおた そうぜん)本田博太郎

通詞の名門に生まれ、幼い頃からオランダ通詞会所に出入りしてきた男:野田立之助(のだりゅうのすけ)浜田信也

オランダ語通詞:森山栄之助(もりやま えいのすけ)小池徹平 らが、オランダ船からもたらされた世界情勢について話をしていたところ、外ではある騒ぎが起きていた。

トリの友人でオランダ人を父に持つ青年:未章(みしょう)トラウデン都仁 が 通詞だった父親の失踪の謎を追って江戸からやって来た青年:伊嶋壮多(いじま そうた)永瀬廉 と一緒に荷役の仕事をしていたのだが、オランダ商館の勝手方:ヤンセン - 村雨辰剛 に貿易品の砂糖を盗んだと、言いがかりをつけられて殴られていたのだ。

何度言ったらわかるんだ、これは商品なんだ。
お前達荷役はわざと砂糖をこぼし、持ち帰って金に換える。
卑しいやつめ!

そう言って、何度も未章を殴った。慌てて未章を助け起こす壮多。

こいつだけじゃない
お前たち!ただじゃおかないからな!

ヤンセンさん、これはまずい。
日本人に手を出してはいけない。(騒ぎをききつけ、二階の窓を開けて覗き込む通詞たち)
日本人の罪は、長崎奉行が罰する。
問題になります!

間に入ったのは、主にヤンセンの用を務める内通詞で、清十郎ら若い通詞に加えて、トリ、未章らとも親しい:忠弥(ちゅうや)蟷螂襲 だった。

出島の入り口で、砂糖ば盗むような真似ばしたら、承知せんけんな。と荷役たちに注意していた人物だ。
主に出島にいるオランダ人たちの世話をすることによって、手間賃を得ている請負の通詞らしい。

私は見たんだ 日本人が砂糖を持って逃げるのを

壮多はそれを聞いて、砂糖を盗んだのが昼に小舟の上で懐に何かを隠した人物のことではないかと思い当たる。
辺りを見回すと、この騒ぎの見物人のなかにその男がいた。
自分のことが気づかれたと悟った男は、人込みをかき分け逃げ出そうとする。

どけっ!

荷物の中にある銅の棒を掴んだ壮多。
逃げた男に向かって、その棒を投げつけた。←サイドスローです。

荷車を駆けあがり、人の背中を乗り上げて逃げる身のこなしを見せた男、その足に壮多の投げた棒が当たり(ぇ
男は転んだが、また駆け出そうとする。
だがその前に立ちはだかったのは・・・。

通詞の見習生:大田清十郎(おおた せいじゅうろう)浅香航大 だった。
足払いで倒した男の腕を後ろにねじり上げ、見事な捕物を見せる。

捕えた男は縛り上げられ、懐を探すと・・・盗んだ砂糖がそこから出てきたのであった。

壮多が砂糖を忠弥に渡すと、忠弥がそれをヤンセンに見せた。

すると、騒ぎを聞きつけたカピタンと呼ばれるオランダ商館長。出島のオランダ人たちを代表するトップ:レフィスゾーン(リチャード・ヴァン・ローイ) が現れる。

どうした

カピタンの問いにヤンセンは、

もういい 誤解はとけた

と答えその場を立ち去ろうとした。

まてぇぇぇぃ~っ。

親父譲りのデカい声で、ヤンセンを呼び止めた清十郎。彼は、二階で騒ぎを見ていた大通詞:大田崇善の息子である。

だぃぃぃ、あんふうけもん(ばかもん)がっ!

慌てる崇善が、二階から下へ降りて行く。


人ば殴って、まちごうとった誤解やった、そいだけやマズかなかですか。
いいねぇ、なかなか顔が近い。それを見て心配する壮多。

オランダ語でも文句を言いたい清十郎だが、舌が上手く回らずにむせてしまい、野次馬たちに笑われる。
忠弥の後ろで栄之助と崇善がそれを見つめている。
笑っている中には、陰で清十郎を小馬鹿にしている稽古通詞、お坊ちゃん気質で通詞の長である父親にくっついている:杉原敬生(すぎはらけいしょう)重岡漠 もいた。

オランダ こまる
ながさきも こまる
清十郎は片言のオランダ語で、精いっぱい反論する。

だが、ヤンセンは理解できず

もう一度

と日本語で言ったため、再び笑いが起きる。
崇善は堪らず清十郎のところへ出て行こうとするが、栄之助が引き留める。

「誤解を解いてください。」
オランダ語でヤンセンに話しかけたのは、壮多だった。

彼はそう言っています。(清十郎とヤンセン、壮多を見る。)

おい、(立場を)わきまえんかっ!
そう言って請負いの親方(商い人)が壮多を叱る。

彼は無実の罪を責められ、暴力をふるわれた。(そう言って、未章を見る。)
謝ってください。
彼は私の大切な友達なんです。(話せなくてもその意味が解る未章は、胸を熱くする。)
彼の中には、あなたと同じオランダの血が流れている。

親方:いいかげんにせんかーっ!

するとカピタンが話した言葉を、栄之助が親方にわげぇする。

彼はこちらで厳重に注意する。
代わりに砂糖を抜き取ろうとした男は、そちらで厳しく処罰いただきたいが、いかがなものか。

親方:よか。

清十郎は、これまで通詞の職業を軽んじていたところがあったが、今回の件で外国語を学ぶことの重要性を理解したらしい。
栄之助は彼の正義感が無駄にならぬよう、肩を叩く。そして、壮多の方を少し見て去って行く。
どうやら、カイの為り代わりの件に関する壮多への誤解は解けたようだ。
崇善が清十郎に話しかけようと近寄ったが、それに目もくれず清十郎は壮多の前に出て高圧的に話しかける。
そしてまた、顔が近いんですけども。

わい、名は?どこのもんね。

江戸から来た、伊嶋壮多。

壮多・・・。忠弥がその名前を聞いて、反応を示した。

オランダ商館の二階から、野田立之助と騒ぎを見ていた杉原尚蔵は

あいはだいか、荷役がなしてあがん蘭語ば話す。
そう言って、壮多に興味を持つ。

わいのおかげで恥ばかいた。いつか必ず・・・。
そう言って、清十郎が壮多の襟首を掴むが、その続きは言わず去って行く。

清十郎っ、大勢の前で恥ば晒しおってぇぇぇぇ~っ。
後ろから見ていた崇善が、清十郎の後を追っていく。
気配を察した清十郎は、走り出して行った。

砂糖を持って立ち去ろうとした忠弥を、壮多が呼び止める。

俺の名前に心当たりがあるんですか?

忠弥が何か話そうとしたが、騒ぎを嫌った親方に後ろから襟首を掴まれ
壮多は出島からつまみ出されてしまう。

翌日、柳屋で

中の掃除をしていたところ、置屋・柳屋を束ねる女将:しず(紅壱子)の言いつけで、表に水を撒くよう言いつかる壮多。
他にも

・壮多、カステラば後で買うといて。
・うちは、ザボン漬け。
・うちは、ボーロば2つ。
・うちは、ボーロ3つ。
・カステラは3つね。
・うちはさ、よりより1つね。
・カステラ一斤3つね。

いやいや、皆から凄い量のおつかいを頼まれている。
とりあえず、女将に頼まれた表の水まきを始める壮多。

今日は出島に来んやったなぁ。

珍しく、大きな声で栄之助が話しかけてくる。

(親方に)二度と立ち入るなと言われました。

江戸には戻らんとか。

まだ、ここでやることがあるので。(壮多、水を撒き続ける。)

お前さん、英語ば学んでみんか。

壮多が、栄之助に振り向く。

お前には、優れた耳とよぉ~動く口のある。
新しか言葉で、新しか景色ば覗いてみんか。

以前の壮多なら、すぐにでもと喜んでいた言葉だ。
だが、長崎を少しだけ知った壮多には、
待っとるけん。
そう言って、帰ろうとする栄之助に言いたいことがあった。

森山さん、私の父をご存じですか。
その言い回し、目つきは塩頭のそれに似ていた。

その時、栄之助の脳裏にはある情景が浮かんだ。
幼い頃の自分に、差し向かいで外国語を教えてくれた人物の姿だ。

己の言葉を捨てよ。

その人物は、そう言っていた。
はい。
兄弟子と思われる少年と一緒に返事をする幼い頃の自分。

知らん。前にも言うた。
固まった表情のまま、去って行く栄之助。
そして、その様子を柳屋の二階から芸妓見習いの少女:トリ(都麗)久保田紗友 が見ていた。

森山家

代々通詞の家だという、森山の屋敷の前に立つ壮多。
座敷では、森山から英語を学ぼうとする通詞見習いと思われる大勢の若者が車座になり、巻き舌の練習をしていた。
その部屋の障子を開ける壮多。
壮多を見て、先輩風を吹かせようと杉原敬生が肩をいからせて
メイ・アイ・ヘルプ・ユー と 近づいてくるが・・・
壮多の後から、竹刀を入れたと思われる袋で床を突き、清十郎がやってくる。

やぐらしかぁ~。(うっとおしい)
と敬生の顔を睨みつけると、敬生は目を逸らして逃げていく。
次に壮多へ向かって、耳元で勇んでみせる。

覚えとけぇ。
わいばくらすとは、おいばい。

長崎弁がまだ達者ではない壮多は、意味がよくわからないので


はい。

と、清十郎に微笑む。
怖がらせるつもりだったのに、逆に顔にハテナが浮かぶ清十郎。

そこへ栄之助がやってくる。

壮多の肩を掴んで、自分のそばに座るように清十郎が彼を連れて行く。

講義ば、始める。

お互いを見据える栄之助と壮多だった。

第2話終了。

長崎弁の難易度が上がっている気がしますけども、ちゃんと聞き取れてなかったらごめんなチャイナ。
最初はそうと思っていなかったけど、壮多の表情が塩頭のそれに似てきてるなぁと感じてしまいました。
そして、本田博太郎さんの怪演は、バランスが凄くていいですね。あれをやりすぎると博多にわかみたいになっちゃうんだろうなぁ。

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わげもん~長崎通訳異聞~第2話:消えた漂流民4

2022年01月24日 | わげもん~長崎通訳異聞~

長崎港に入ってくる船

白帆注進~っ!

見張り台から、大声がする。

オランダ船が来たばい。
太か船ばい
港に入って来た帆船に、長崎の人々が沸き立つ。

6月、今年も長崎の港に、多くの貿易品を積んだオランダ船が入港した。
長崎において、最も活気づく季節の始まりである。

柳屋にいた、トリの友人でオランダ人を父に持つ青年:未章(みしょう)トラウデン都仁や通詞だった父親の失踪の謎を追って江戸からやって来た青年:伊嶋壮多(いじま そうた)永瀬廉も、表の騒がしさにつられて出てくる。
あれから、アヤカの子どもは順調に育っているらしい。

アヤカにあやされる赤ん坊の近くで芸妓見習いの少女:トリ(都麗)久保田紗友は、三味線の練習をしている。
浜辺で姿を消した置屋「柳屋」に居候していた男:神頭有右生(こうず ゆうせい)髙嶋政宏のいなくなった部屋で、トリは三味線を弾きながら考え事をしている。
地球儀の置かれている方向を見て

先生、どこへ行きんさった。

心に穴が開いてしまったような気分だ。

現在のインドネシア=バタビアからやってくるオランダ船は、
貿易品のみならず、江戸幕府にとって貴重な情報をもたらした。
出島のオランダ商館では、カピタンと呼ばれるオランダ商館長。出島のオランダ人たちを代表するトップ:レフィスゾーン(リチャード・ヴァン・ローイ) から、オランダ船が入港したことによりもたらされた情報がオランダ語で読み上げられる。
大通詞で蘭語通詞会所の長:杉原尚蔵(すぎはら しょうぞう)矢島健一、
大通詞:大田崇善(おおた そうぜん)本田博太郎、
そしてオランダ語通詞:森山栄之助(もりやま えいのすけ)小池徹平 らが出向いて聞き取りをしている。

阿蘭陀風説書、特に国際情勢を詳細に伝える別段風説書は、ヨーロッパ始め世界各国で起きた戦争・災害・植民地情勢が記された日本にとって、何より重要な海外の最新情報書であった。
通詞たちは毎年オランダ側から聞き取りを行い、情報文書を作成した。
これらは全て、急ぎ江戸に送られる。
長崎奉行:井戸対馬守覚弘(いどつしまのかみさとひろ)石黒賢が、別段風説書を手にし、確認後、家老:周田親政(すだ ちかまさ)武田鉄矢から、長崎奉行所の船掛:白井達之進(しらい たつのしん)宮川一朗太 らに命令して送られる。

幕府はこの風説書を基に、国際情勢への対応を進める。
世界の情勢について、幕府は決して無知ではなかった。

出島での仕事に出かける壮多

置屋・柳屋を束ねる女将。壮多を住まわせ、仕事を世話してくれる:しず(紅壱子)の紹介で、出島の仕事をすることになった壮多と未章。鑑札を受け取り、それを帯に通す。壮多もまた、トリと同じように塩頭のことを考えていた。

オマエはまだ、長崎を知らない。

塩頭が別れ際に残して行った、あの言葉が頭から離れないのだ。
自分の知る長崎は人が温かく、トリや未章のような仲間もいて、自分にとって心地の良い場所。
もちろんその中には、塩頭だっていたのだ。

オマエの父親は生きてる。
オマエの父親は、オノレの言葉に滅ぼされた。

以前の壮多なら、父親が生きていると言われれば、あれほど嬉しい・聞きたかった言葉だったのに、今となっては塩頭の言葉に惑わされるばかりだ。

オマエはまだ、長崎を知らない。
でも、今は必死にこの町にくらいついて、自分で真実を探すしかない。

壮多は、砂糖などの貿易品を運ぶ荷役(にやく)として、初めて出島に足を踏み入れた。
出島の中は、いつもは入ることのできない日本人の役人や荷役たちで賑わっていた。

色鮮やかなオウムの甲高い鳴き声に、驚く壮多。ここは日本でありながら、日本ではないようだ。

オランダ船は、直接出島へ船を横づけすることはできず、沖に停泊し
そこから小舟に荷物を移し、小舟から荷役たちが貿易品を出島に運び込んでいる。
慣れない壮多が、受け取った荷物を担いでフラつくと、血相を変えた見張り役に
砂糖の方が大事かばい。
酷くどやされる。

未章がこぼさないように、壮多に注意する。
わざと落として、こぼれたやつを持ち帰る奴がおるとさ、これも立派な抜け荷ばい。
下手すれば首が飛ぶ。

なんとか荷物を小舟から運び終えると、壮多と未章は石段の上に腰かけ
海を眺めながら持ってきたおにぎりで食事をとる。

ときどき、ここの匂いが懐かしゅうなるとさ。
おいの生まれの半分は、こん島にあるけん。

すると、小舟の上で一人の荷役が、懐に何かを入れる様子を見かける壮多。

オランダ商館の二階で

オランダ船からもたらされた、その他の情報を読む通詞たち。通詞の名門に生まれ、幼い頃からオランダ通詞会所に出入りしてきた男:野田立之助(のだりゅうのすけ)浜田信也 がプレブル号の話題を見つける。
プレブル号には、捕鯨船から日本にただ一人やってきて帰国まで長崎に置かれ、森山栄之助らに英語を教えたアメリカ人:ラナルド・マクドナルド(木村昴) も乗っている。どうやら、船は香港に到着したらしい。

大通詞:大田崇善は、
あの漂流民たちには、最後まで手こずらされたばい。
と、懐かしそうに語る。

だが、栄之助はオランダからの情報に、疑問を感じているようだ。
これで、よかとでしょうか。

蘭語通詞会所の長:杉原尚蔵
どげんや。

栄之助は、情報を読み上げる。
・アメリカで金が発掘された。
・エゲレスは清国に対して、いよいよ高飛車になっとる。
確かに貴重な知らせです。
ですが・・・、ここには肝心なことがなか。
バタビアに謀反が起きたっちう記録があっても、オランダが本国から援軍を送ったという記述はなか。
オランダの国力は弱っております。思う以上に・・・そんことを江戸にはきちんと伝えた方が・・・。

しかし、その言葉に賛同する人物は通詞の中におらず、崇善は
己の考えを足してはならん、通詞がそいばしたら終いばい。
といい、杉原は
長崎の町はオランダ船で成り立っとる。
オランダも日本との交易ば大事にしとる。
彼らば貶めるっちゅうことは、この長崎ば潰すっちゅうことやぞ。

ですが、このままオランダからの偏った風説だけを手掛かりにしちょったら、
いずれ日本は取り返しのつかないことになります。

森山っ!

もしや他に、異国の内情ば握ったモンがおったら、いいように踊らされて・・・(ハッ)

栄之助は思い立ったのだ、あの漂着したアメリカ船ラゴダ号の、乗組員のひとり:カイ(カリマ剛ケアリイオカラニ) に成りすました謎の男:吉次(きちじ)サンディー海 が、他国に日本の情報を流すために、堂々とアメリカ船に乗り込んでいったとしたら・・・。

そんために・・・。

わざわざあの男は、自ら望んで牢に入ったのだ。

本日は、ここまで

冒頭、オランダ船を見て「太か船ばい。」と言った人がいましたね。
あれは太っているという意味ではなく、大きいという意味の長崎弁だそうです。
長崎のお祭り「長崎くんち」では、笠鉾という重たい祭りの道具を粋に担ぐ男性に対して
「ふとぉ周れ」と言って掛け声をかける人が、いらっしゃいます。
「おおきくまわれ」と言っておられるのです。
んな無茶なぁ~と思うのですが、まわるんですよ、これが。きゃ~っ!

そして現在の出島の周りは、埋め立てがもっと進んでいて、島の面影はあまり感じないのですが
本当に、繁華街のすぐ近くに海があって、その距離感に驚きます。
壮多のいた時代は、出島の前はもう海だったのねぇ。

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わげもん~長崎通訳異聞~第2話:消えた漂流民3

2022年01月23日 | わげもん~長崎通訳異聞~

奉行所を飛び出した栄之助

漂流民たちの歌を聴いて、通詞だった父親の失踪の謎を追って江戸からやって来た青年:伊嶋壮多(いじま そうた)永瀬廉 が漂着したアメリカ船ラゴダ号の、乗組員のひとり:カイ(カリマ剛ケアリイオカラニ) のことを知っていると理解したオランダ語・英語通詞:森山栄之助(もりやま えいのすけ)小池徹平 は、奉行所を出ると駆け出していた。

その頃、壮多もカイの身代わりに、壮多が橋の上でぶつかった国籍も職業もすべてが謎の男:吉次(きちじ)サンディー海 が漂流民の中に紛れ込んでいたことを奉行所の前で知り、置屋「柳屋」に居候の男:神頭有右生(こうず ゆうせい)髙嶋政宏 に話を聞こうと柳屋へ駆け出していた。

2人は柳屋の前で鉢合わせする。

イムンアエナポーキ 牢ぬけした男の島の言葉たい。
そん男ばしっとぉね。
どこへ行った、漂流民一人始末して代わりの男ば紛れ込ましたとかっ!

栄之助が壮多の襟を掴む。

栄之助の言葉に動揺する壮多。
カイが・・・始末された。

急いで塩頭に確かめようと、壮多は奥へ駆け込む。

おぃっ、待たんかっ!(栄之助は壮多を追って中へ入る。)

壮多が塩頭の部屋へ駆け込むが、塩頭の姿はない。そこへ栄之助もやってくる。

どうしましたぁ。

後ろから塩頭が顔を出した。

カイはどこへ行ったんですか。

船は出航した、嘘じゃない。上海か・・・自分で決めるさ。
どこへだって行ける、ふふふふっ。

勝手に、逃がしたて・・・。(ワナワナ)

じゃあなんで知らない男が、カイの帽子をっ!

頭数が揃ってないと、お困りだって方々がおいででねぇ。(そう言って神頭は、壮多の肩を叩く。)

帽子ば被らせて漂流民の数ば揃えた。

アメリカは、日本が漂流民を虐げて(しいたげて)いるのではと疑っていた。
もし、引き渡しの数が一人でも欠けるようなら、砲撃だって辞さない。
へっ、そう言ってたそうですねぇ。

漂流民の数ば、揃えてくれと頼んだのは誰か、誰かぁ!

塩頭に詰め寄ろうとした栄之助の前に、壮多が立つ。
塩頭は壮多に
心配するな、カイは無事だ。
と、小声で伝える。

その時、柳屋の店の者に案内されて同心:滝口修二郎(たきぐち しゅうじろう)平山祐介 が捕り方を連れてやって来る。

この前来た時から、どうも引っかかってね。

カイを探しに柳屋へ滝口が訪ねてきたとき、気になっていたことがあったようだ。
先月、中島川で男が殺されたんだが、そいつが抜け荷一味の下っ端野郎でね。
(その時滝口は遺体となった男の懐から、醤油差しのような形の陶磁器を見つけていた。)
抜け駆けしようとしたところを始末されたらしい。
滝口は栄之助をどけて、その後ろにある花瓶の前に立つ。
その男が持っていたのが、これ。(陶磁器を取り出す。)
こいつ(花瓶)の片割れだったりして・・・。
そう言って花瓶から花を放り出すと、証拠の品を上にのせる。
それは、花瓶・・・いや壺の蓋だったのだ。

ほぉら、驚いたねこりゃ。

今まで自分やトリ(都麗)久保田紗友、未章(みしょう)トラウデン都仁 たちに兄のように優しく、頼れる男だった塩頭への容疑に驚く壮多。

聞かせてくれるかな、先生。このあたりのこと、ねぇ。

滝口が塩頭の前に詰め寄ると、塩頭はうなだれ
アタシでお役にたてるか・・・おとなしく歩み出たかと思いきや
滝口が差していた刀を抜き取り、壮多を人質にする仕草を見せた後、彼らの前へ壮多を蹴り
障子を蹴り倒して表へ逃げて行った。
滝口と捕り方たちは、その後を追って出て行く。

捕物の騒ぎに、出産に立ち会っていた女医:えま- 浦浜アリサ が
静かにしてもらえんね。
と、怒って飛び出してきたが、残された壮多たちの様子にそれがただごとではないと気づく。
だが、置屋・柳屋を束ねる女将しず(紅壱子)がとりなそうと
しても
人が生まれるより大切なことはなか。
そう言って、部屋へ戻って行ってしまう。
トリや女将たちが励ますなか、無事にアヤカは出産を迎えられるのだろうか。

沖合に浮かぶプレブル号では

漂流民たちが船に上がる。
船内では、艦長が長崎奉行所の船掛:白井達之進(しらい たつのしん)宮川一朗太に握手を求めるが、異国の挨拶に慣れていない白井は、おっかなびっくりでそれに応じる。
後ろには通詞として、栄之助が立ち会う。
役人たちが立ち去ろうとしたので、後ろを歩く栄之助を艦長らが呼び止める。

ありがとう。(栄之助に握手を求める。)
君の英語は素晴らしかった。

いえ。

今日はいい天気だ。
窓の外の大海では、多くの外国船が日本との国交を望んでいる。
君の意見はどうだい。

通詞は自分の意見をいう事ができないため、沈んだ顔をする栄之助。
大通詞:大田崇善(おおた そうぜん)本田博太郎に言われたことを思い出している。

君はこれから、日本はどうするべきだと思う?

だが、栄之助が意見を言うことができないことを悟った艦長が、冷ややかな言葉を浴びせる。

有能で「従順な」語学屋さん・・・だろ?

わげいたします。合ってるかい?
副長と思われる男も嫌味なものいいだ。

栄之助を残し、2人は部屋を出て行く。

甲板に上がった栄之助、カイにすり替わった男が目の前を通っていっても、自分はどうすることもできない。
森山栄之助らに英語を教えていたアメリカ人:ラナルド・マクドナルド(木村昴)が、最後に船に上がる。
栄之助を見つけて声をかけるが、彼の沈んだ様子に気づいた。

どうした?

なんでもない。
でも、今日は色々あって・・・
英語を学び、それが身についていくときはあんなにも喜びを感じたのに、自分の無力さだけが残ってしまい、唯一英語で心が通じたラナルドとの別れも彼を悲しくさせていた。

元気出せよ。

いいか?大事なこと
モリヤマ、言葉 教える。
モリヤマ 教える、English

私が、英語を・・・。

ラナルドはうなずく。
そして、あの言葉を話す。

future

フューチャー

よか。
そう言って、ラナルドは栄之助を抱きしめる。
my dear サヨナラ

英語で初めて分かり合えた相手、ラナルドとの別れに栄之助は涙するのだった。
奉行所役人が港を後にしても、栄之助はラナルドの乗った船を見送っている。

寂しい別れであったが、新たな決意が栄之助の胸の中に湧き上がるのであった。

柳屋で

アヤカの出産は無事に成功し、仲間たちがそれを囲んで賑やかに笑っている。
自分の仕事を終えた女医:えまが座敷を出ると、塩頭の部屋に取り残されたように壮多が一人座っていた。

夜の浜辺

真っ暗な浜辺に灯りをともした小舟が用意されており、旅姿の塩頭がその近くにはいた。
塩津を見つけて駆け寄る壮多。
一旦は人質にされたのに、塩頭を追いかけてきた壮多に呆れたのか
はっ、しつっこい奴だねぇ。と苦笑いする。

あなたは誰なんです。
町の人に頼りにされて
トリや未章の話を聞いて
俺の話を信じてくれた。

俺もあなたを信じた。

信じるってのは、やっかいなもんさ。
失ったとき、丸ごと持ってかれるんだ。
壮多の問いかけに、背を向けたまま答える塩頭。

己自身は・・・(荒海で船を漕ぐ映像)
だから俺は、誰も信じない。
親も兄弟も、神も仏も。
板張りの部屋。天井に壁に、びっしり英語が書かれれている。

国も・・・俺は一度死んだ。昔の話だ。
そう言って、壮多を振り向き小舟のへりに腰を下ろす。
お前の父親は、生きてる。
20年前、お前のオヤジは通詞の仲間を売った。

う、うそだ・・・。(壮多、首を振る。)

お前の父親は、己の言葉に滅ぼされた。
そう言って、塩頭が壮多の前に歩み寄る。
父親の手帳に書いてあった「己の言葉を捨てよ」という字が思い出される。

塩頭は笑いながら後ずさりし、舟に向かって歩いていく。

うそだ、うそだっ!

おった、あそこにおったばい!
遠くから、逃亡した塩頭を追う取り方の声がする。

舟の舳先に乗せた灯りを手に持ち、壮多を見て塩津が冷たく言い放つ。

オマエはまだ、長崎を知らない。

そう言って、塩頭が手に持った灯りの炎を吹き消すと、辺りは暗闇に包まれた。

御用提灯を持った取り方たちが、呆然とする壮多の後ろにやってくる。
壮多の周りで動くその提灯で、浜辺の明るさは戻るが、すでに塩頭の姿はどこにもなかった。

本日は、ここまで

その3は、なんだか目まぐるしい展開でしたね。
そして、せっかくキャラの台詞の色を設定したのに、神頭先生はもう現れないのかしら。
悲すぃわ。

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わげもん~長崎通訳異聞~第2話:消えた漂流民2

2022年01月22日 | わげもん~長崎通訳異聞~

蘭通詞会所にて

大通詞:大田崇善(おおた そうぜん)本田博太郎 が アメリカ人との英語通詞に尽力した森山栄之助(もりやま えいのすけ)小池徹平 を労う。
この通詞がうまくいかなければ、長崎の町には大筒が撃ち込まれていたかも知れぬという崇善。

やはり、オランダ語だけでこん国守ることは無理かもしれんと。

その言葉を聞いた周りの者は森山を咎めるが、それを遮るように大声で会所にやって来たのは・・・

おぉ~、親父殿っ!

片肌脱いで竹刀を片手に会所へやってきた、崇善の息子で通詞の見習生:大田清十郎(おおた せいじゅうろう)浅香航大 だった。

清十郎、なんかその恰好わっ!

道場で一汗かきました、いつアメリカが攻めて来よっても異敵何するものぞの心意気ですっ!
そう言って竹刀を振り回す清十郎に、後頭部を叩いて叱る崇善。
この抜けもんがっ、おまえは通詞やろがっ!
言葉で相手と組みあわんでどがすっと。
そう言って、清十郎の口を押える。

すると奥から、大通詞で蘭語通詞会所の長:杉原尚蔵(すぎはら しょうぞう)矢島健一 が 金魚のフン 稽古通詞でお坊ちゃん気質、通詞の長である父親にくっついている:杉原敬生(すぎはらけいしょう)重岡漠 と一緒に表に出てくる。
栄之助の今日の働きを労う杉原だったが、息子に蘭語の稽古をつけろとせがまれていたと親バカぶりを発揮している。
敬生にこのあとは、ラナルド・マクドナルド(木村昴)から受ける英語の講義であることを伝えられ、ふと表情が曇る栄之助だった。

崇福寺 大悲庵

ラナルドのいる座敷牢の前で、通詞たちは英語の講義を受けている。
ラナルド・マクドナルドによる英語の講義は、すでに半年に及んでいた。
他の通詞が帰ったあとも、ラナルドの前から離れない栄之助。

ご機嫌はいかがですか。

よい。
あなたの発音もよい。

もしあなたがここを、この牢を抜け出すことができたら
あなたは何をしたかったですか?

「したかった」は過去のこと、何をしたいか聞いてくれ。

みーらい。future

わたし、どこへも行かない。
わたし、ここにいる。
ときどき、さるく。

さるく・・・散歩ですか。

イェーイ、アイ テイク ア ウォーク.

長崎の訛りがうまか。
そう言って、栄之助は笑った。

ときどき、モリヤマ会う。English教える。ずっと、ずっと教える。

感慨深い表情でそれを聞いていた栄之助だが、
アメリカから迎えの船が来ました。
そう言って、彼との別れの日が来ることを伝える
あさって、あなたを出島に送ります。
今までまことにー

それ以上言葉を続けることができず、栄之助は手をついて頭を下げ
ラナルドへの感謝の気持ちを表す。
ラナルドもこの日を待ち望んでいたが、栄之助と会話を重ねる日々に友情のようなものを感じ
言葉を続けることができない。
ただ、

よか。

というだけであった。

桜町牢に戻った男

抑留者たちのいる牢に、頭にカイの帽子をかぶった14人目の男が帰って来た。
牢番や役人たちが、鍵をかけて帰って行くと
男に向かって、気の荒い船員が声をかけて近寄ってくる。

カイ、捕まったのか
しゃべれよ、このクソ野郎

そう言って近寄って来た男の腕を掴んでねじり上げ、抑え込む。
黙れ

入って来た男が、カイ(カリマ剛ケアリイオカラニ)ではないことに驚く乗組員たち。
それは、置屋「柳屋」に居候の男:神頭有右生(こうず ゆうせい)髙嶋政宏と会っていた謎の男:吉次(きちじ)サンディー海 だった。

沖合に停泊するアメリカ軍艦プレグル号

抑留されていた漂流民が、引き渡される日となった。

艦長:ジェームス・グリンは船首でその様子を見ていた。

柳屋では

表を掃く壮多に、塩頭がボーロを買ってきて欲しいとお使いを頼む。
戻ろうとすると、柳屋の男衆が慌てて飛び出してくる。妊娠していたアヤカが産気づいたというのだ。
オランダ人と日本人のハーフ女医:えま- 浦浜アリサ を呼びに駆け出して行った。

桜町牢

漂流民たちはまず長崎奉行所に向かい、帰国の通達を受けねばならなかった。
牢から出る漂流民の様子を見に来ていた栄之助。
その中に、見たことのない男がいることに気づく。
栄之助が役人を見ると、役人は困った顔をしていた。

陣痛が激しくなるアヤカ

置屋・柳屋を束ねる女将:しず(紅壱子)と芸妓見習いの少女:トリ(都麗)久保田紗友 が出産の近づいたアヤカの手を握り、仲間たちもはげましている。
女医:えま も 大丈夫やけん、息ばゆっくり。 そう言ってアドバイスする。
男二人は部屋の外でうろつくが、お湯を沸かすよう指示され働く。

奉行所

乗組員たちが、ぞくぞくと籠から降ろされて奉行所に入って行く。
お使いに出た壮多がそれを眺めていたが、カイの帽子を被った男が奉行所に入って行くのを目撃する。
あの帽子は神頭に渡して、それをカイが死んだものとして使うはずだったのに、なぜカイの帽子を被った男が奉行所に入って行くのか。

その頃、栄之助は「14人目の男は偽者ではないか」と長崎奉行所の船掛:白井達之進(しらい たつのしん)宮川一朗太 に伝える。

牢に戻っている者が入替っていると申すか。

はい。

なにをくだらぬことを、自ら牢に入る者などいる訳がない。
そう言って、栄之助の話をとりあおうとしない。

脱走者は一度は身を隠していた。
アメリカ艦の到着を知って戻って来た。そうでしたね。

そうだ、父親の形見という帽子を持っていた。それが証だ。

(ぇ)それだけで?

奉行所前でカイのふりをした男が、壮多の方を振り返る。
壮多は塩頭にカイはどうなってしまったのかを確かめたくて、柳屋へ戻って行った。

その頃、奉行所の廊下では白井に栄之助がくい下がっていた。

居なくなった男の代わりに、誰かがあの中に潜り込んだとです。
私は通詞として、何回も何十回も彼らを間近に見てきました。(廊下の奥に大田崇善がやってくる。)
言葉も交わしました、間違えるはずがなかとです。頭数が揃うとっても、あん男は・・・白井さん。

森山、森山ぁぁぁ~。

そう言って、崇善は栄之助を白井の前から引きはがす。

ばってん、あれは確かに・・・白井様っ!

おりやまぁぁぁぁぁぁ~っ。

すると、その声を聞きつけたのか井戸家家老:周田親政(すだ ちかまさ)武田鉄矢が供の者を連れて様子を見に来た。
(白井たちが、伏して控える。)

引き渡しの漂流者は14名、何の支障もない。
そう言って、周田は去って行く。
白井も逃げるようにその場を去る。

周田様っ!

追いかけようとした栄之助の腕を掴む。
森山ぁぁっ!
たとえ、たとえそうだとしても。奉行所がよしとしていることば、我らに糺す(ただす)力はなかっ!
それは、ワシら通詞の分ではなかっ!

奉行所白洲にて

ラナルドと他14名が、奉行所白洲にて沙汰を受ける。
みぎてい品々不法に及び候だん不届き至極に尽き、きっと取り計らうべきなれども、此度は格別の猶便を以て~

長崎奉行:井戸対馬守覚弘(いどつしまのかみさとひろ)石黒賢 は漂流民たちに、出島からアメリカ軍艦に乗船させると申し伝えた。

~以来、我が国へ再び参ることを許さず

対馬守の言葉を英訳する栄之助。
その栄之助を見つめるラナルド。
だが、栄之助はカイに成りすました吉次を見据えていた。

すると、海から吹いてくる風を感じたカイと同じ島から来た漂流者たち3人が、自国語で話し始める。

エィア アイ アホイ エホラホウ イムンア(隣の男に話しかける。)

イムンア(隣の男、左手の拳を胸の辺りで握る。)

イムンア(その隣の男も、拳を握る。)

イムンア エナ ポォキーィ!(聞き覚えのあるその言葉に、栄之助は驚く。)

男たちは、風を受けて勇壮に歌い始める。

栄之助の隣に座る会所の男がつぶやく。(その前には、杉原・大田の大通詞2名がいる。)

オアフ島の漁師たちばい。(栄之助がそちらを見る。)
自分たちば鼓舞する掛け声や。「明日を信じ、前へ進もう。」っていう。

栄之助は、伊嶋壮多(いじま そうた)永瀬廉 が出島でモーニッケ医師に尋ねていた言葉を思い出していた。

教えてください。
「イ・ムア・エ・ナー・ポーキッイ」
聞いたことはありませんか?

気持ちが高ぶったのだろう。今度は、アメリカ人漂流者たちがその場で自国の歌を歌い始めていた。

栄之助は奉行所を飛び出し、どこかへ駆け出していった。

本日は、ここまで。

ラナルドが覚えた長崎弁「さるく」が出てきました。
「さるく」は、ほっつき歩く みたいな意味で使われています。
数年前に「長崎さるく博」がありましたね。
長崎市中心部は、観光のみどころがコンパクトにまとまっており
歩いて観光するのにはもってこいの場所です。
歩き疲れたら「ちんちん電車」に乗るのも楽しいですよ。

コメント
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