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広島訪問 原爆投下命令

2016年06月02日 | 政治 経済 社会 憲法
G7伊勢志摩サミットは、600億とか1000億とか言われる税金をかけて、大騒ぎした割に、予想された通り、成果は今一つ。
マスコミの関心も、5月27日のオバマ大統領の広島訪問。
「とにかく訪れて原爆の実相に触れてほしい」 「いや、人道に反する投下の謝罪をすべき」など、いろいろな立場からの意見が交わされていた。
歴史認識のギャップは大きい。
日本(とくに安倍政権)は、「戦争を始めた責任をタナに上げ、広島・長崎の原爆の被害」から始まり、米国は「パールハーバーの記憶と原爆投下により何百万の米兵とそれ以上の日本国民の命を救った正当性」で終わる、というのが大方の見方のようだ。
今回の記事で、外国からの見方を知って驚いたこと。
①2013年韓国紙「ドイツの無差別攻撃と広島・長崎への原爆投下は神の懲罰だ」(因果応報)
②米国での被爆体験の講演のあと、聴衆から「パールハーバーが先だった」「たった一発で、本当にそんなに多くの人が死ぬのか?」(必要悪)
③2015年NPT条約会議で、中国は「大戦の被害者であるかのように歴史をゆがめる」と批判、核廃絶を訴える被爆者たちの心を傷つけた。
④投下の前年1944年、ルーズベルト大統領とチャーチル英首相が「”管用合金(Tube Alloys:原爆開発計画の略称)”完成の暁には(ドイツではなく)日本に使うことで一致した」(ハイドパーク覚書)そして、ウラン型が広島、プルトニウム型が長崎に落とされた。

このようなギャップはさておき、オバマ訪問で、「核なき世界」という未来志向の第一歩が築かれたという意義は大きい。
事前に、米大使(前ルース/現ケネディ)やケリー国務長官による式典への参加など、米世論の反応が確かめられ、この訪問が実現したという。
オバマ大統領の”世界平和”に対する強い思いは、「プラハ演説」「イランとの和平」「キューバとの国交回復」そして今回のベトナム訪問と広島訪問で一貫していると共感を覚えていたので少しは期待していた。
広島平和記念公園でのニュースは、その期待を上回った。
原爆死没者慰霊碑への献花、被爆者代表の話を聞くときのじっと見つめて手を握る様。
米軍被爆者を長年調査してきた高齢の方には、感謝のハグで。原爆資料館での真剣なまなざし、自分で作ってきたという折り鶴。
”平和を願う人”とでもいうような哲学者のような雰囲気を醸し出していた。

オバマ大統領のスピーチについての鋭い指摘も参考になった。
1) はっきりと「10万人を超える死者」と述べたこと。米国では7万人か8万人というのが公式見解だった。(東京空襲10万人より少ないと矮小化)
広島市の公式見解では14万人(1945年末)
2) 「原爆は市民の生活を破壊し、米国人の良心を揺さぶる”女性や子供”が犠牲となった」と、非人道的な破壊行為に踏み込んだ。
  米での大勢は、今でも「軍都:広島に投下した原爆は軍と軍需工場を破壊し、日本を降伏させ、100万人の米兵と日本国民の命を救った(終戦時、トルーマン大統領が国民に向けた演説)」とのこと。

「オバマ大統領は 人類の視点で語り、安倍首相は日米同盟の視点で語った」という、ある記事の総括が心に留まる。
「核の傘」にとらわれ、「核廃絶、核兵器禁止条約には及び腰」の日本政府の姿勢は、「謝罪は求めない」として、深い思いを心にしまい、訪問を歓迎した被害者の気持ちをどれだけ分かっているのだろうか? オバマ大統領は、一方で 30年間で1兆ドル(110兆円)の核の新鋭化を決定しているという。
また、慰霊の場でも核発射ボタンの入ったカバンが写し出されていたとは !
人類の愚かさは、コントロール不能の段階に入ってきたのだろうか?
平和記念公園の「平和の灯」は、「核兵器がこの世から姿を消す日まで燃やし続けよう」とともされているという。


【 以下2010年8月14日の記録】

今年の広島平和記念式には、国連事務総長と原爆投下国・連合国の米英仏の大使・代表が初めて参加した。
アメリカ国内には、原爆の謝罪の意味と取られかねないとして,依然として反対の声が多いという。
毎年、この時期になると原爆の被害者の方たちの実情が連日放映される。
戦後65年経つ今も、原爆症に苦しむ人たちが沢山おられ、その政府補償もおざなりな面があるようで何とも歯がゆい思いがする。

なぜアメリカは原爆と言う残酷な兵器を使用したのか?
よく言われるのは次の3つの理由:
①戦争を終結して、連合国と日本人の命を救うためやむ負えなかった。
②ソ連に対するアメリカの圧倒的優位を示すため
③核兵器の人体実験

アメリカ人の大多数は①を信じて疑わず、原爆投下の非を認めようとしない。
何年か前に、原爆搭載B29”エノラ・ゲイ”で投下したその本人が広島に招かれたが、彼はいろいろと惨状を説明する被害者を前にしても、一言の詫びも同情の念も示さなかった。その人間性に無念さを覚えた。
2003年のイラク戦争のとき、アメリカ人の牧師に「アメリカのイラク攻撃をどう思いますか?」と聞いた。
温厚な彼は意に反して、「アメリカは世界の警察官、イラクの核施設を無くすために戦争は止む負えない」と言いきった。何という奢り!このとき原理主義系のキリスト教の偏狭さを痛感した。
当時のブッシュ大統領も、旧日本軍を国際テロ:アルカイダになぞらえる演説を行い、イラク終結宣言の後の戦後統治を、日本の戦後処理GHQ方式をモデルにしたと言われる。

新聞によると、事実はこうだ。
1945年7.25 米トルーマン大統領が原爆投下命令に署名
翌7.26 ポツダム宣言で無条件降伏を提示
(但し、宣言を受諾すれば原爆中止とは明記せず・・・むしろ寛大な内容で、”トルーマンシップ”真の政治家と絶賛されたとのこと)
8.6 広島に原爆投下
8.9 長崎に原爆投下
その日の深夜(10日未明)の御前会議で、ポツダム宣言受諾のご聖断(終戦)
広島キノコ雲

長崎 爆心地公園

つまり、戦争の終結とは関係なく、原爆投下の決定は為されたということ。
その前、7.16にはニューメキシコ州で原爆実験が行われ、その破壊力が確認されていた。(人体実験を除いて)

日本も、原爆投下後に宣言を受諾したが、広島・長崎の被害の全体を把握できておらず、その3日前のソ連参戦が受諾を決定付けたらしい。(日ソ不可侵条約の一方的な破棄)

この事実から、理由として挙げられる①②③はすべて当てはまると言った方がよい。
とくに、②ソ連をはじめとする連合国に対し、新型爆弾の圧倒的優位を誇示することで世界の覇権を狙ったことは間違いないだろう。

第二次世界大戦後は、アメリカに対抗するように英・仏・ソ連により核実験が続けられ、原爆から水爆へとその破壊力を増している。さらには中国・インド・パキスタン・北朝鮮と核の拡散が進んでいる。
ビキニ島での米核実験のキノコ雲とその被害のニュースは強く記憶に残っている。

オバマ大統領になって、核廃絶の宣言(プラハ演説)とそれへの機運が高まっているが、彼の言う「道義的責任」とは、日本に原爆を投下した責任ではなく、アメリカが始めた「核の世界」を閉じる責任という意味らしい。どこまでも、奢り高き国家である。


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