■棋楽庵閑話二〇〇八 「八十一面観音秘教」

棋楽庵閑話二〇〇八　「八十一面観音秘教」

　世上盤上怒りの声満ち満ちたり。血と汗と涙で細々と駒
台に積み上げし年金記録を雲霧消散させし捨塊呆嫌（社会
保険）庁、知らぬ存ぜぬと言ひ張りし肝炎患者のリストを
いつの間にやら出しし狡漏（厚労）省、鴛鴦の契りならぬ
宴謳の接待娯流婦（ゴルフ）妻を伴ひて防衛費水増しを図
りたる守屋次官、「最後の一円最後の一人まで」と年金問
題に大見得を切りしが「やはり詰みませぬ」とあっけなく
投了したる舛添大臣、極め付きはお願いしますと盤面を前
に座りしも小沢挑戦者に一手も指さず投了したる安倍前首
相、いずれも政官の傲慢怠慢無秩序無責任の現れ、江戸よ
り連綿と引き継がれしお上の定跡見事なり。
　　　　　　
　さてさて官が官なら経も経なり。こちらは中国を笑へぬ
食品偽装の数々露見したり。罪なき人形にペコペコ謝らせ
し腐痴（不二）家に始まり、牛に豚を混ぜて豚でもなき商
品を売りしミート抱腐（ホープ）、東は白い恋人西は赤福
の紅白歌（疑）合戦と続きたること開いた口が塞がらぬな
り。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　なれども憂ふべしは民情・民心の乱れなり。「働けど働
けどなお我暮らし楽にならざりじっと手を見る」の今啄木
ワーキングプア・ネットカフェ難民、或いはあらゆる悪を
請け負ひし闇サイトの増へしこと社会崩壊の前兆、放置し
たれば国の根幹を揺るがす大事なり。さらに恐ろしきこと
は肉親を手にかけし無感情無表情頭の切れし若人ここかし
こに出現したることなり。人間たる評価を学業・学歴・財
産によりてのみ測ることを教へたる報いここに現れり。豊
かな温かき魂の育みを忘れたること一億総懺悔なり。
　　
　つらつらおもんみるに世を騒がせしすべては百八の欲心
・煩悩からくるなり。利益優先物質至上の世にては除夜の
鐘を十億恒沙の数つきても煩悩の絶へることなし。もはや
悪鬼羅刹の跳梁跋扈したる国となり果つるや。いやいや然
にあらず。今こそ明かさるる真実あり。一○八の文字を逆
さまに読むと八○一、即ち「煩悩をひっくり返し悟りへと
導く方便に九九八十一の将棋盤あり」とは八十一面観音の
導きなり。飛密香典（秘密教典）には以下のこと記せり。

　「大晦日全国民すべてのことを投げ打ちて年明くるまで
ひたすら将棋に打ち込むべし。然れば『遊び駒あれば勝つ
ことなし、棋譜に将（賞）味期限なし永遠の価値を持つな
り、玉から歩まで駒には適材適所あり例へ歩と云へども千
金の値ある時あり』等々将棋の持つ真理に目覚め心は清浄
となり煩悩は忽ちにして滅し元旦には一点の曇りなき地上
の楽園が出現したるなり」
　　　　　　　　　　　　　　
　皆様におかれましては今年も良き年でありますようお祈
り申し上げる次第です。

　　　　　　　　　　　　平成二〇年元旦　　棋楽庵敬白

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