安藤先生の月刊ブログ 「きらめき」

何気ない毎日に"きらめき"を感じていますか?

もらった心

2015年06月11日 | 月刊ブログ

 先週から梅雨入りをしました。学校のコーヒーサーバーの横に、今日、紫陽花の花が活けられていて、ハッと目を奪われてしまいました。紫の濃淡の色合いに、学校のその一角だけが、雨模様の季節を感じる別世界のようです。

 今週の日曜日は幸い雨が上がり、曇り空の下、学校の学生たちと佐世保市民大清掃に参加をしました。佐世保市長の挨拶から始まるボランティア活動の開始です。一日の大半をこの佐世保の中心地で過ごす学生たちに、地域周辺の環境や美化に関心を持ってもらいたいと思います。一人の力は小さくても、みんなが協力すればこんなにたくさんのゴミが集まったことを実感してほしいです。

 

 私の高齢の母は、私の妹の家族と生活をしているのですが、土日には泊りがけで家に来るようになってもう1年以上になります。私の唯一の休み日曜日は、母と娘たちが来てにぎやかです。せっかく来てくれているので、食事も腕を振るって作ります。疲れていても、それが私のストレス解消法なのかもしれません。

 しかし、1週間フルに仕事をして、土日には母親の面倒を見ている私を、一番理解してくれているのは、近くに住んでいる長女と、ずっと仕事を続けてきた母本人です。

 母は、よく「長生きしても善し悪し。皆に迷惑ばかりかけている。」と言います。「迷惑じゃないよ。」と私。「申し訳ない。」と母。「今度は私がお返しする番。今まで十分にしてもらったから」と私。母は、「涙が出てくる。」と半分わざとらしく目頭を押さえるのです。そんな会話は、実家への送り迎えの車の中で交わされるのが常になりました。

 私は、自分が高齢になって動けなくなったら、施設に入れてほしいと、娘に言うのですが、娘は「お母さんがしているようにするよ。」と言います。働きながら子供たちには決して十分なことをしてあげられなかったと後悔ばかりなのですが、今度は私の目頭が熱くなります。

 子どもにとって、一番の手本は「親」です。核家族になって、家庭の中での先生は「親」しかいないのです。娘が言うように、親がするように子供は同じことをするのは当然のことのように思えます。愛情いっぱいに育った子供は、もらった愛情を何倍にもして周りに与えることができるのです。逆に、愛情をもらってこなかった人は、どのようにして、相手に心配りをすればいいのかがわからないと思います。

 

 友人が言っていました。若者がバイクや車のエンジン音をわざとバリバリと響かせて走らせているその音を聞いて、以前はうるさくて腹が立っていたけれど、今は、その音が悲鳴に聞こえる。「お母さん助けて、僕の方を向いてよ、僕の話を聞いてよ」と言っているように聞こえると。なんだかその爆音が悲しげで心の叫びのように私にも聞こえてきて、心が痛みました。口に出して言えない心の言葉は、そんなところに溢れ出てくるのかもしれないことに気づかされました。

 毎日、学生たちと接している私たちは、一人ひとりの学生の様子に心を配り、声を掛け、いつも見ているよ、と表現していかなければならないと思っています。この場所では、私たちが学生の手本であり、愛情を注ぐ「親」の役目も兼ねているのです。

 ちょっとしたことが気になったり、心無い一言で傷ついたり、多感な若い人たちは、いつも揺れているように感じます。短期で公務員合格を目指す学生たちに、叱咤激励と同時に、いつでも休める親鳥の羽の役目も必要です。

 ストレスをどのようにして発散するか、ストレスに耐えられるか、は個々で違いがあります。一人前の社会人としてはあってはならない、人に当たったり物に当たったりする行為は、まだこの年代では、抑えきれない時もあるのかもしれません。しかし、公共の場でこれから仕事をしていくためには、何より自分を律することができることが条件です。

 思いのままに行動し、そのことで他人に迷惑をかけることになった時、自分で自分を責めることより、反省して次には同じことをしないと自分に誓うことが、成長の第一歩となるでしょう。さらに、じっくりと話を聞いてあげることができれば、なお自分の行動を見つめ考える機会を与えてあげることができるのではないかと思います。

 聞いてもらえる嬉しさを体験できれば、また、逆の立場に立った時に、相手の話を聞いてあげることができるでしょう。

 行った善行は、まわりまわって必ず自分に返ってくることを「情けは人の為ならず」と、昔の人は言っています。

 人と人とが何かしら繋がって、助け合いながら一生を終えていくのだと思います。若い学生たちは、今は助けられることが多いですが、これから社会に出て、地域の人たち、また、家族や友人たちの力になっていくことでしょう。

 もらった心を次につなげて、周りの人にもしあわせになってもらいたいと思います。

 

Photo by mizutani


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