安藤先生の月刊ブログ 「きらめき」

何気ない毎日に"きらめき"を感じていますか?

心地よい関係

2019年06月13日 | 月刊ブログ

 梅雨前のさわやかな陽気の中、道端の路地植えの紫陽花が、くすんだ色で「雨が恋しい」と言っている声が聞こえてきます。西海市を通っての長崎までの道のりは、途中田植えのための田んぼが整えられていたり、モクモクと沸き上がるような濃ゆい緑の木々が大きな塊となって道路まで押し寄せたりしています。次の週、また同じ道を通っていくと、週末に雨をもらった紫陽花たちは、紫やうす紫色、ピンク色の鮮やかな色を見せてくれていました。その彩に私は一瞬、オーと声を発していました。

 

 先日、旧来の友人たちとランチをしました。もう十数年来の友人たちは、私とはずいぶんと歳が離れている先輩なのですが、いつも学ぶところが多く、話を聞いてもらったりして過ごす時間は、リフレッシュできる貴重なひとときでもあります。ひとりの友人が、今年は、我が家には枇杷がたくさん生って食べきれないくらいだったと、今年は枇杷の「表年」に当たることを、言っていました。

 

 長崎までの道沿いにも黄色い実を付けた枇杷の木を、今年はよく目にしました。私は、枇杷の木を見ると幼いころのことを思い出します。母方の実家の畑に2本の枇杷の木があって、この時期にはいつも木の上の方にある大きくて赤みを帯びるまで熟した枇杷を祖父に採ってもらっていました。随分口にしていないなと思いながら、話を聞いていました。

 

 そんな話をした次の週、私が高校のガイダンスで学校を空けていた時、その年配の友人が学校を訪ねて来てくれて、先週、「持ってきてあげればよかったね」と言っていた枇杷を、学校までわざわざ足を運んで持ってきてくれたのです。店頭に並んでいるようなものではなく、もぎたての路地ものの枇杷に、私は子供のように嬉しくなりました。

 夜、夕食の後、いただいた枇杷を、遠い昔を思い出しながら皮を丁寧に剥いて口に入れると甘くて懐かしい味が口いっぱいに広がりました。すぐに友人に電話を入れてお礼を言うと、立派なものではないからどうかなと思ったけど、と遠慮がちにおっしゃってその奥ゆかしい人柄に、私は人生の先輩をますます敬う気持ちが強くなりました。

 

 その友人は、「それがね、」と、学校を訪ねた際に、入り口にいた男子学生に私の名前を言って尋ねたところ、2階の受付まで案内をしてくれたこと、階段を登る途中には、その高齢な女性を気遣って振り返りながら案内してくれたことを、ちょっと興奮気味に話してくれたのです。

 友人は、そのことにとても感動して、よく教育された学生さんですね、と褒めてくれました。その話を聞いて、私もとても嬉しくなって、早くこのことを学生たちに話して聞かせたくなりました。友人は名前を聞いておけばよかったと言っていましたが、一人の心優しい行いが、この学校全体の印象に繋がり、私への好評価にも繋がっていきました。

 人の心は不思議なものです。ほんの少しの心遣いが感情を和らげ、好意的に人間関係が進んで行くのですから。

 

 学校では、初中級の2年生は、学校生活が2年目とあって、毎日がとても充実しているように見受けられます。もちろん苦手科目や「面接スタンプラリー」には頭を抱えているようですが、一日の大半をこの学校で過ごすことにはもうすっかり慣れているようです。

 夕方授業が終わると、授業で使った教室を掃除したり、ボランティアで学校周辺を掃除に行ったり、残って勉強する人は、近くのスーパーに食べ物を買いに行ったり、とルーティーン通りに楽しそうに軽やかに動いています。そして、今、取り組んでいる苦手科目の担当の先生にプリントをもらいに行ったり、今日の授業の復習をしたり、模試のやり直しを数人で頭を寄せて教え合ったりしています。自習室では、カレーショップで作ってくれた「おにぎり」を頬張りながら、9時まではひたすらに頑張っています。

 1年前とは、いえ数か月前とは、醸し出す雰囲気が違っているのがよくわかります。とがったところがなく、気負うところもなく、いい意味で覚悟を決めて公務員試験に向かっているかのようです。

 そんな彼らとのやり取りは、とても心地よく、授業以外での関わりを私自身も楽しんでいるところです。

 自分が素のままでいられる関係は、そう多くはありませんが、家族や友人、共に多くの時間を過ごし同じ目標に向かう同士などは、心地よい関係となるのではないでしょうか。

季節ごとに目に映る自然との関係も心地よい関係なのだと、感じています。

 たくさんの人と心地よい関係ができれば、「ストレス」という言葉とは無縁になるに違いありません。

 

 今月の花は、バラ科の安曇野 (あずみの)という品種です。豪華なバラの雰囲気とは少し違って、どことなく和の趣きがあって落ち着きますね。

 

 Photo by mizutani


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