いつまでも雨の日が続きます。
もう田んぼのあぜ道のびしょ濡れのアマガエルを見ることもなくなりましたが、車から見る水を張った田んぼには、オタマジャクシやアメンボがいるのかなと、想像します。
はやくはやく夏が来ないかと、恨めし気に、雨に濡れた窓を何度も見てしまいます。
久しぶりにちょっとだけ雨が止んだ昼下がり、先週土曜日のことでした。お昼までの仕事を終え帰宅していた時のことです。アーケード途中の島瀬公園では何かイベントが催されていました。横切るとき、アナウンスが耳に入ってきました。「視覚障害」「作曲家平尾昌晃賞」「歌声」・・・いくつかのフレーズから、舞台に目を移すと、小柄な少年がキーボードの前にポツンと腰かけている様子が目に飛び込んできました。掛屋剛志くんでした。
以前、コンサートでその歌声を聞いたり、テレビのドキュメンタリーで生い立ちを見たりしたこともあって、思いもかけずその場に居合わせ、幸運でした。掛屋くんは、佐世保出身ですが、いくつかの障害を併せ持っています。幼少期にリズムや音楽に興味を持っているのに気付いたお母さんがピアノに触れさせたことが、その才能を開花させたきっかけでした。その歌声はまるで天使が下りてきたようだと、お母さんはおっしゃっています。
私は、日傘をさし買い物袋を下げたまま、暑さも忘れ、公園の真ん中でしばらく棒立ちで聴いていました。
その透き通った声、優しい声、繊細な声、語り掛けるような声は、周りの雑踏を忘れ、私の心は満たされていきました。
掛屋くんは、音だけが頼りです。どんな表情で私たちが聞いているのか、知るすべがありません。歌い終わった時の拍手だけが、掛屋くんの拠り所です。掛屋くんは、拍手をもらうのが大好きだと言っています。
その透き通った声からまず、「赤とんぼ」の曲が生まれ、ミスチルの「糸」がアカペラから始まるころには、掛谷くんの世界に入り込んでいました。ちょうど外国の人たちも聞いていて、次の「Amazing Grace」は、ジャズタッチのアレンジで楽しそうでした。しばしのミニコンサートで、掛谷くんの透き通った声は、私の疲れた心と体をリセットしてくれました。目を移すと、佐世保市長もステージの目の前で聴いていました。
学校では、今、この秋に催されるIBA全体同窓会の準備を行っています。本佐世保校は、来年創立30周年を迎えます。地方の小さな学校ですが、卒業生、修了生を合わせると2,000名を超える人がこの学校を巣立ち、社会人として活躍していることを思うと、改めて私たちの役割の重要性が見えてきます。
20年ぶりの同窓会なので、今は、案内状を送る名簿作りから始めています。同窓会実行委員会を立ち上げ、当時の教員や卒業生にも来てもらって、情報収集に取り掛かりました。私も、ここでの勤続が22年を過ぎたので、記憶を掘り起こしながらの作業になりました。
何年月日が流れても、ずっとつながっている人もいますが、こんな時に突然に連絡をしても、私のことを覚えていてくれてすぐに快く周辺の人へ連絡を回してくれる人もいます。年代をさかのぼって行くごとに、自分がたどった月日を確認することができます。あの時はどうだった、こうだったと記憶が蘇ってきます。みんな元気にしているのでしょうか。
久しぶりに連絡を取ると、懐かしくてついつい長話になってしまいます。それぞれの人生を幸せに送って行ってくれることを願わずにはいられません。
同窓会の日程を知らせると「必ず行きます!」「楽しみです!」など返事をくれます。私が覚えている当時のその笑顔とは違って、今ではきっといい塩梅に年齢を重ねて味のある様相になっていることでしょう。大盛況になるようにしっかりと準備を進めていくつもりです。
もし、卒業生でこのブログを読んでくれている人がいたら、ぜひご連絡くださいね。
日々の雑踏のなかで、心洗われる歌声を聴いたり、楽しかった記憶をたどったりすることは、生きていく上でのエッセンスになります。
頭を抱えて考え込んでいた時間を、一気にリセットさせてくれます。清々しい気持ちでもう一度、走り出すことができそうですね。
今月の花は、ゴシキトウガラシ(五色唐辛子)とみかんの花です。
Photo by mizutani