清々しい5月はあっという間に過ぎ去り、一気に夏が訪れたような暑さです。
早朝、大村湾沿いに車を走らせると、右手のうっすらと朝靄がかかった水面は静かに広がり、左手には、黄緑から深い色に変わっていく木々が茂り、気持ちを落ち着かせてくれます。やがてまっすぐなコンクリートが突き刺すように生い茂った森を左右に分けていきます。それはまるで作為的のように感じます。音楽をかけながらのそんなドライブも私の気持ちをリフレッシュさせてくれます。
今年は火星が最接近する年です。5月31日がその日でした。
中学の理科の時間に、太陽系惑星の並ぶ順番を覚えたのを思い出します。水、金、地、火、土、天、冥・・・でした。確か・・・。今は冥王星が外されているそうです。
火星は地球の一つ外側にある惑星で、約780日(約2年2カ月)の周期で地球へ接近を繰り返しているそうです。太陽を取り巻く惑星の中で、地球の軌道はほぼ円に近い形ですが、火星の軌道は楕円形をしているため、また、会合周期が2年ではなく、2年2カ月であるため、火星と地球が接近する位置は毎回ずれ、距離も大きく変わるということです。今年は、約10年ぶりの接近で大きな話題になっています。次回は2018年。今回よりももっと接近するのだそうです。
地球と環境がよく似ていると言われている火星ですが、表面は赤く、ピンク色の空をしているそうです。古代の人たちはローマ神話に登場する戦いの神「マルス」の名を付け、それが現在の英語で「マーズ」と呼ばれる所以です。
昔から火星には、「宇宙人」が住んでいると、映画や小説でも言われてきましたが、今回、夜空を見上げ、肉眼でも見えるその赤い星に、もしかしたら・・・などと創造を逞しくしてしまいます。
最接近を過ぎても、南の夜空にほかの星とはすぐに見分けがつくほど、赤く大きく輝いている火星を見ることができます。ベランダから眺めるたびに、宇宙の神秘を感じるとともに、オランダでは10年後火星への有人飛行の予約が受け付けられているという、科学の進歩にも、畏敬の念を抱かずにはいられません。
さて、先月は、13年前に卒業した男性の結婚式に行ってきました。私が公務員科の担任として受け持った学生でした。彼は2年をかけて念願の警察官になることができました。しかし感心するのは、その後の彼の努力です。刑事になるという夢を叶えるため、厳しい部署にも進んで志願し、また、休みの日をつぶして刑事課に行って手伝いをさせてもらっていたそうです。そして彼は着実に努力を重ねその夢を叶えることができました。結婚式での強く逞しくなった姿に私は頬が熱くなりました。一見おとなしそうな彼が、その過酷な環境に適応するために自分を奮い立たせ立ち向かっていった姿が目に浮かびました。「おめでとう!これからは自分のやすらげる場所を作ってください。」そんな思いで新郎新婦を見ていました。
その披露宴には、その代の何人かが来ていて、それぞれの近況を話してくれました。国土交通省で仕事をしているTくんは、今新人研修の教官をしているというのです。「先生、教えるって難しいですね!」「でも自分が人に教える立場になるなんて、考えられなかった。」とにこやかです。それだけ成長したんだね、がんばったんだね、と胸が一杯になりました。
10年の月日は、あっという間ですが、それぞれの人生においては、日々の生活、仕事の中で順調なことばかりではありません。その時々で踏ん張ったり、努力したり、気合を入れ直したりしながら、成長していくのだと思います。急ぐ必要はどこにもありません。ゆっくりゆっくりと、その時々を大切に乗り越えればいいのです。
次回、火星を肉眼で見ることができる2年後には、また環境が変わっているかもしれません。大きな変化がなくても、自分の意識だけは日々の成長を願って努力を続けていこうと思います。
今、自分の夢の実現のために頑張っているこの学校の学生にも、急がずゆっくりと、しかし着実に前へ進んで行ってほしいと思います。
今月の写真は、6月の花「紫陽花」です。江戸末期の植物学者でもあるシーボルトが帰国した時、日本に残した妻「おたきさん」の名前を取って、学名を「オタクサ」と付けたそうです。
私も大好きな花の一つです。紫の濃淡に哀愁を感じます。
Photo by mizutani