◆3月10日・トレッキング8日目・ゴラクシェプ(5150m)→カラパタール(5550m)、エベレストBC(5400m)、ロブチェ(4900m)
朝5時に出発。真っ暗です。月が出ていないので、星空は綺麗なのですが、足元がまったく見えません。ヘッドライトだけが頼りです。カラパタールへは幸い、先行しているトレッカーが3人ほどいたので、ルートが何とかわかりました。もし、僕が一番乗りだったら、どこからどう登り始めたらいいのか全く判らなかったと思います。
6時ごろには空は白んできているので、ヘッドライトはいらなくなりました。奥の山はプモリです。
僕の後ろからは誰も上ってきていないので、たった4人の日の出トレッキングです。
6時45分頃、ついにカラパタールに到着しました。ゴラクシェプからだとヌプツェの後ろに隠れていたエベレストは、カラパタールからだと真正面に見ることができます。
どうやら、太陽はエベレストの真後ろから登ってきているみたいです。
日の出直前。左がエベレスト、右がヌプツェ。
日の出の瞬間
カラパタールには結局1時間くらいいました。多分、物凄く寒かったと思うのですが、景色の余りの神々しさに寒さはほとんど感じませんでした。
カラパタールにて。寒さも疲れも忘れています。
宿に戻り、遅めの朝食を摂り、エベレストBCへ向かいました。ヒマラヤの山々に囲まれた素晴らしい景色の中を2時間ほど歩き、BCに到着しました。
BCへ向かう道
ベースキャンプという名前から、小屋やテントなどがある平らな場所を想像していたのですが、実際のBCはびっくりするくらい全く違うモノでした。そこは、氷河の上に、氷河が運んできた岩や土砂が堆積して、人が歩けるようになったような場所で、起伏の激しい岩や土砂の間から、氷河の一部が見え隠れしている、今まで見たことの無いような変わった景色でした。そこからはエベレストは見えないのですが、ヌプツェやプモリを真下から見上げることが出来ます。
エベレストBC。氷河とその上に積もった土砂。
油断して歩いていると左足がずぼっとクレパスに落っこちそうになってびびりました。
真下から見上げたヌプツェ。
エベレスト登山隊は、通常、下の写真の左下から右上にかけて氷河を登り始め、エベレストを目指すのだそうです。いったいどうやって、あの険しくて勾配のある氷河を登るのでしょうか。想像を絶する世界ですね。
BCから宿への帰り道、またまた間違えた道に入ってしまい、20分ほど無駄に歩きましたが、さすがに4度目ともなると、道に間違えたことをすぐに察知できるようになってきた気がします。そして、無事にゴラクシェプへ戻り、昼食を食べて、ロブチェには午後5時くらいに辿り着けました。
ところで、標高5000mを超えると、とても天気が良いです。なぜなら、この季節は、雲が標高5000mまでしか上がってこないからです。
下の写真は、ちょうど雲が5000mのところまで来て止まっているところです。下山時、この雲の中にもろに入っていくことになり、50m先も見えなくなりました。
今日は計算すると合計10時間半も歩いたことになります。ひょっとしたら、今日が人生で一番たくさん歩いた日かもしれませんね。
◆3月11日・トレッキング9日目・ロブチェ(4950m)→ナムチェ(3400m)
この日からは、ただただ下山していくだけです。ガイドブックによると、一般的には、ロブチェの次はタンボチェ(3850m)くらいまでしか降りないらしいのですが、カラパタールとBCにすでに行ってしまった今では、一日でも早く下山してカトマンドゥへ戻りたい気持ちで一杯なので、一気に一般の人の倍の距離を降りてナムチェまで行きました。8時に出発して、17時30分にナムチェに着きました。途中1時間半の休憩をしたので、8時間も歩いたことになります。昨日と違うのは、昨日は重い荷物を宿に置いて歩いていたのが、この日は10kgの荷物をずっと背負って歩いたことです。昨日よりも遥かに疲れました。ナムチェで行きしなに預けた不要な荷物(本や洗剤など)を受け取ったので、明日からはさらに荷物が重くなります。気が重いけど、明日もう一日頑張ればスタート地点のルクラです。もう、あと、一踏ん張り!
下校中のシェルパ子供。標高3500mにて。君達はすごいよ!
◆3月12日・トレッキング10日目・ナムチェ(3400m)→ルクラ(2800m)
一刻も早くルクラに辿り着きたい一心で、駆けるように山を降りていきました。荷物は肩と腰にぐいぐいと食い込んでくるけど、もうあと少しの辛抱です。ルクラまで着けば、飛行機に乗ってカトマンドゥに行けます。カトマンドゥに着いたら、11日ぶりのホットシャワー、その上銭湯まであり、待ちわびた美味しい日本食もあります。まさに天国!頑張れ!頑張れ!と自分を励ましながら、孤独な道のりを、汗を掻きながら、急いで降りて行きます。その時、突然、左足のつま先に鋭い痛みを感じました。止まって、靴を脱いで見てみると、靴下のその部分が濡れています。どうやら、水ぶくれになっていたところが、破れてしまったみたいです。下りの道を半ば駆け足で降りていたので、負担がかかりすぎたみたいです。まあ、仕方ないので、これからはペースを落としてゆっくりと歩こうかと思いながら、野小便をしました。すると尿が赤いのです。肉汁のような尿がじょぼじょぼと出ています。草や石を赤黒く染めています。うわあ!血尿!血尿が出た!僕は、これを見て、血の気がさーっと引きました。頑張るぞ!と思って上がっていたテンションも急降下です。どん引きです。さっきまで汗を掻くほど暑かったのに、急に体温が下がって寒気を感じ始めています。
小便を終えて、座り込み、しばらくどうしたものか、と考えました。なんだか膀胱の辺りに変な違和感も感じ始めました。何もかも投げ出してしまいたい気分に襲われました。また、ヘリコプターか何かでカトマンドゥまで運んで欲しいとも思いました。でも、そんなことは不可能だし、とにもかくにも、自分の足で歩いてルクラまでは辿り着かないと、どうしようもないのです。仕方が無いので、ふらふらしながらも、とりあえず歩き始めることにしました。バックパックの腰のベルトを締めると膀胱の辺りの違和感が強まるので、ベルトを外して歩くことにしました。バッグの重量は全て肩にかかってしまうのですが、仕方がありません。水ぶくれがつぶれて痛む左足を引きずりながらゆっくりと歩きました。30分ほどしてすぐに次の尿意がやってきました。なんたる頻尿ぶり。しかし、今度の尿は、前回よりも赤色が薄れていました。赤というよりはオレンジ色です。このことで、心が随分と楽になりました。血尿は、そんなに酷くない!歩くペースも少しずつ元に戻り始め、左足の痛みもあまり感じなくなってきました。その後も、頻尿は続き、40分に一回くらい野小便をしたのですが、だんだん赤色は無くなっていき、ついには通常の尿の色に戻りました。どうやら、腰のベルトを締めすぎていて膀胱がダメージを受けたことが原因らしかったみたいですね。
そんなこんなで、13時半ころ、無事にルクラに辿り着けました。尿意を感じる感覚も徐々に長くなっていき、夜も途中で起きることなく、安眠できました。いや、血尿が大したこと無くて本当に良かったです。
ルクラの村
◆3月12日・トレッキング11日目・ルクラ→カトマンドゥ
空港に行くと、瞑想仲間のQちゃんと偶然会えました。彼は僕よりも4日早くカトマンドゥを出て4日長くトレッキングしていたそうです。その間、ゴーキョなど僕の行っていないところも行っています。しかも、途中で遭難して一日テントで震えながら寝たらしく、そんな話をしながら大笑いしました。天気は快晴で、飛行機も無事飛んでカトマンドゥへは昼前に辿り着きました。11日間の間にカトマンドゥはさらに暖かく初夏のような暑さで、半袖でも十分です。人が多く、車も多く、排気ガスや埃で汚い空気なのですが、やっと自分達の世界に戻ってきたような気がして、僕もQちゃんも嬉しくて笑いが止まりませんでした。
日本食レストランでカツ丼を食べた時、ようやく、ああ、トレッキングがついに終わったんだなあ、と心から思えました。
「うまい。幸せ。」を連呼しながら、カツ丼を掻きこみました。
<おわり>
現在、3度目のインド入国を果たし、バラナシの久美子ハウスでのんびりしています。日本の7月くらいの暑さです。かなり暑いです。そして蚊が滅茶苦茶多いです。でも、やっぱりバラナシはいいですね。好きです。ホーリー祭はここで迎えました。想像以上に面白かったです。この後、涼しいであろうリシュケシュへ行って、しばらくヨガをする予定です。