神戸大学メディア研ウェブログ

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カッター部事故1ヶ月① 転覆は「和歌山沖」? 続報少なく修正されず

2019-09-06 20:45:50 | ニュース
 8月6日の神戸大学端艇部のカッター転覆事故から1ヶ月。第一報は「和歌山沖で転覆」と報じられ、昼のテレビでは全国ニュースのトップで伝えた局もあり、大々的に報じられた。事実と見出しの食い違いもあったが、続報はほとんどなく、メディアでその印象が修正されることはなかった。<玉井晃平、森岡聖陽>


(写真:事故を報じる新聞各紙 写真付きで報じた社は少なかった)

 第一報で「カッター部転覆」の情報が入ったとき、神戸大総務部広報課は騒然としたという。その後、「全員救助」の報も入り、広報課は早い対応を見せた。8月6日昼ごろまでに、大学公式サイトに、「本日、和歌山の沖合にて発生した神戸大学端艇部課外活動中のカッター転覆について、乗船していた1~3回生の男子学生23名は、1名が脱水症状で救急搬送されましたが、全員意識はあり命に別状はありません。現在、教員が現地へ向かい、詳細情報を確認しているところです」と掲載した。(http://www.kobe-u.ac.jp/NEWS/info/2019_08_06_01.html

●テレビ各局は昼ニュースで大々的に速報 新聞の扱いは小さく

 今回は、10時ごろの118番通報で、昼ニュースに間に合う時間だったため、テレビ各局の対応が早かった。11時30分、45分からの民放各系列と、NHKの正午のニュースは、いずれもヘリからの映像を放映。テレビ朝日のように全国ニュースのトップで伝えた局もあり、船底を見せる神戸大艇や、救助されて上陸する端艇部員の姿を報じた。
 地元のサンテレビは、淡路側での陸上の取材が中心だったため、由良港近くの公共施設に収容された学生の様子やインタビューを生々しく報じることになった。
 一方、新聞各紙は、広島原爆の日と高校野球開幕日が重なったことや、「全員救助」の情報が早かったこともあり、夕刊での紙面の扱いは小さかった。

●「ボート事故」漕艇部と取り違えて報じた社も

 第一報で、共同通信や毎日新聞は見出しで「カッターボート転覆」とせず、「ボート転覆」とだけ報じたため、漕艇部(ボート部)の事故と誤って伝わりかねない報道となった。実際、「神戸大漕艇部から118番通報があった」と誤って報じた社もあった(11時31分 神戸新聞NEXTメールニュース)。
 ヨット部は、「本日ニュースで報道された和歌山沖で起きたボート転覆事故はカッター部で起こった事故であり、神戸大学ヨット部との関連性はございません」と、13時38分にツイートしている。

●テロップや見出しの「和歌山沖」に誤った印象

 カッター部顧問の古莊雅生・海事科学部教授は、「『和歌山沖』という表現は間違いだ」と指摘する。「部員が海を泳いでなんとか陸に着いたかのような印象受けるが、実際は岸辺から30メートルのところでの転覆で、一番長く海中を泳いだ人でも5分間だった」という。
 昼のニュースで報じたテレビ各局は、フジテレビの全国ニュース(11時30分すぎ)が「和歌山市沖 ボート転覆22人投げ出される」、読売テレビ(同)が「和歌山・友ヶ島沖 ボート転覆 約20人海に」。
 NHKの昼の全国ニュースは、「友ヶ島と淡路島の間でカッターボートが転覆し、20人余りが投げ出されたと和歌山海上保安部に連絡が入りました」、「警察や消防によると、22人が泳いで淡路島にたどりつき、残る一人は近くの漁船に救助されました」とコメントし、友ヶ島水道で転覆し、そこから泳いで淡路に渡った印象を与えることになった。
 
 ネットでも、朝日新聞デジタルが「神戸大のカッターボート転覆 和歌山の沖合、全員無事」(12時10分)と伝えたが、13時37分の毎日新聞は「神戸大生ボート転覆 兵庫・洲本沖 全員無事」、15時過ぎの読売新聞オンラインは「部活ボート転覆 学生2人けが…淡路島沖」、16時12分の神戸新聞NEXTは「神戸大のボート転覆 投げ出された23人全員無事 兵庫・洲本沖」などと、位置が修正されている。
 現場からの通報が和歌山海上保安部に届き、それがニュースソースになったために「和歌山沖」という表現になったとみられる。

●広島原爆の日、高校野球開幕の特別な日 続報の出にくい条件

 新聞各紙で、翌8月7日の朝刊で報じたのは、神戸新聞(写真あり)、産経新聞(写真あり)、読売新聞、毎日新聞(神戸版)。
 顧問の古莊雅生教授のコメントを詳しく伝えたのは、夕方のNHKニュースと神戸新聞の7日朝刊にとどまった。

 この日は、広島原爆の日、高校野球開幕の特別な日で、さらに台風8月九州縦断が重なるなどニュースが多い日だったことと、早い段階での全員救助という情報に、第一報にとどまる報道機関が多かった。そのため、続報に割かれる紙面が少なく、初動の「ボート」、「和歌山沖」という絞りきれないワードが修正されにくい状況だったといえる。

【訂正】「実際は港から30メートルのところでの転覆で」とあるのは、「実際は岸辺から30メートルのところでの転覆で」の誤りでした。訂正します。(2019年9月9日11:50 編集部)

<テレビ各局の扱い>関西地区
毎日放送「JNNニュース」11時30分〜
 全国向け CMあけ9項目目「速報です」 ヘリ生中継映像 35秒
 関西向け ①徳島で土砂災害警戒情報
      ②神戸大事故 45秒
       「全員救助 神戸大ボート転覆 23人投げ出される」
      ③京アニ 京大防災研データ
関西テレビ「FNN Live News Days」11時30分〜
全国向け 6項目目 43秒
      「和歌山市沖 ボート転覆22人投げ出される」
 関西向け ①原爆の日
      ②京アニ労災に
      ③徳島県知事
      神戸大の扱いなし
読売テレビ「NNNストレイトニュース」11時30分〜
 全国向け 扱いなし
 関西向け ①神戸大事故 22秒 ヘリ映像
       「和歌山・友ヶ島沖 ボート転覆 約20人海に」
      ②奈良でも原爆の日
      ③京アニ 京大防災研データ
朝日放送「ANNニュース」11時45分〜
 全国向け トップに神戸大事故「けが人がいるかどうか確認中」60秒
      9項目目に続報「23人救助2人けが」ヘリ生中継映像 42秒
 関西向け ローカル枠なし
NHK「NHKニュース」12時〜
 全国向け 8項目目 ヘリ映像 57秒
       「20人余 海に投げ出されたが無事確認」
 関西向け ①全員救助 ヘリ映像 72秒
       「カッターボート転覆 神戸大の20人余無事」
      ②暑さ続く
      ③奈良でも原爆の日
      ④甲子園開幕

<新聞各紙の扱い>大阪市内版
 朝日 6日夕刊 社会面 2段見出し 18行 写真なし
 毎日 6日夕刊 扱いなし
    (7日朝刊 神戸版)
 読売 6日夕刊 社会面 2段見出し 22行 写真なし
 産経 6日夕刊 社会面 3段見出し 15行 写真なし
    7日朝刊 社会面 3段見出し 41行 写真あり(ヘリ)
 日経 6日夕刊 社会面 ベタ    17行
 大日 7日朝刊 社会面 1段見出し 33行 写真あり(共同ヘリ)
 神戸 6日夕刊 社会面 3段見出し 36行 写真あり(共同ヘリ)
    7日朝刊 社会面 3段見出し 49行 写真あり(岸壁の船体)
 京都 6日夕刊 2社面 3段見出し 27行 写真あり(共同ヘリ)


50年ぶりの「卒業式」 10月27日に六甲台講堂で

2019-09-06 00:09:09 | ニュース
 学園紛争の影響で、行われなかった1969(昭和44)年3月の卒業式。この学年の卒業生らが、半世紀の節目を機に10月27日(日)、「50年目の卒業式」を六甲台講堂で開催する。実行委員会はひとりでも多くの同期生に参加してほしいと呼びかけている。<玉井晃平>


(写真:六甲台正門付近でデモを行う学生と、それを取り巻く学生、教職員。1969年)

●学園紛争で中止に追い込まれた「昭和43年度卒業式」

 「50年目の卒業式」を行うのは、新制大学17回生。
 1965(昭和40)年入学の文・教育・法・経済・経営・理・工学部の学生と、県立から移管された医学部は1963年(昭和38年)入学の1期生の学生だ。
 卒業間近の1968年から69年にかけて、全国の大学で「学園紛争」が激しさを増し、神戸大でも相次いで各学部が封鎖される異常事態となるなかで、1969年3月の卒業式は実施できず、4月の入学式も中止に追い込まれた。

 「50年目の卒業式」の計画は、東京地区の学部横断の同期会「四四会」で「50年になるのを機に卒業式をやってはどうか」という声が上がり、その話が武田学長に伝わったのが発端。去年2月に呼びかけて、4月に大阪でメンバーが集まり本格的に動き出した。
 しかし、卒業生名簿は学部同窓会ごとにしかなく、全員加入制でもないため、「部活・サークルやゼミ・研究室などのあらゆるルートをたどって住所や電話番号を調べた」と、実行委員会共同代表の番尚志さん(経営卒、三菱倉庫特別顧問)は苦労を振り返る。
 ほとんどが72歳から74歳で、社会の第一線から退いた人も多い。最終的に、約1500人のうち、約1200人の連絡先がわかり、郵送で参加を募ったところ9月3日現在でおよそ300人から参加の意向が寄せられているという。

●一人一人に手渡された異例の“学長祝辞” 会場で読み上げも

 当時はストライキや学舎の封鎖という混乱のさなかにあって、卒業証書は学部ごとに異なる方法で1969年3月末に学外で手渡されたという。その証書には、当時の戸田義郎・学長事務取扱(故人、のちに第6代学長)の直筆コピーのメッセージが添えられていた。
 「学士試験合格証書を授与された諸君へ」と題されたメッセージには、「私は諸君におわびの言葉を述べなければならない。(中略)諸君のために全学合同学士試験合格証書授与式を持つことができず、また学部によっては単独の授与式すら開催しえなかった点であります」と、卒業式が中止に追い込まれたことに対する謝罪が前段にある。
 そして、「全学合同学士試験合格証書授与式を挙行することができた場合、その機会に私は諸君に神戸大学革新構想を語り、諸君からも自由な発言をえて、(中略)ともに大学の将来を論じて諸君とおわかれしたいという希望を持っていた」と、対話形式の卒業式を望んでいたことを明かしたうえで、「諸君との印象的な送別を持ちたかったのであります。この点は残念です」とむすんだ、異例の“祝辞”となっている。

 今回の「50年目の卒業式」では、このメッセージがあらためて読み上げられるほか、第14代となる武田廣・現学長からの祝辞も予定されている。さらに、グリークラブや混声合唱団アポロンの歌、神戸大の歴史についての講演、懇親会も予定されている。

●一人でも多くの参加呼びかけ 実行委

 参加費は、近畿6府県(兵庫、大阪、京都、滋賀、奈良、和歌山)在住者は10000円。それ以外の都道県の在住者は7000円。同伴者出席の場合はそれぞれの半額。参加にあたっては、上着の着用を求めている。
 問い合わせは、実行委員会共同代表の番尚志さん(経営卒)yamaasobi_61[at]ac.em-net.ne.jp 、または、三谷史生さん(経済卒)yachtingmitani2218[at]Hotmail.com (送信時には[at]を@に置き換え)まで。
 参加申し込みは9月30日(月)まで。実行委員会は1人でも多くの同期生に参加してほしいと呼びかけている。