それ、問題です!

引退した大学教員(広島・森田信義)のつぶやきの記録

新コロナ対策の矛盾

2020-03-26 11:46:18 | 教育

 前代未聞の危機的状況に全世界が茫然自失の態であるが、こういうときこそ冷静でいたいものである。

 政府は,経済の落ち込みや国民の収入低減の恐れを考慮して、補助金(補助券)の給付を考えているようだが、経済が危機的状況にあることを訴えて消費税率を上げたばかりのわが国にそんな余裕があるのか、あったのか。結果として大赤字に陥った場合のツケは、誰の負担になるのか。キャッシュレスを支援するポイント付与も妙な(税率アップと矛盾する)と思っていたが、思いつき、その場しのぎの感を免れない。

 今日のネットニュースでは、旅行支援の補助金が話題になっている。旅行会社支援の意味もあるのだろうが、国民の行動を規制する動きが顕著なこの時期に、旅行を奨励するかのような補助金の発想は、整合性のない、その場しのぎの思いつきではなかろうか。

 国民・市民の「新コロナ疲れ」「新コロナ慣れ」などの心の緩みは、大きなパニックに繋がる可能性があるが、行き当たりばったりの施策は、国家や自治体の意思の乱れを示すもので,人々の危機意識を煽る原因にもなる。危機的状況の今こそ落ち着いて、信頼できる方針、対応策を打ち出し,人々を安心させるのがプロの政治家というものではなかろうか。


国語新辞典 政治家の言葉

2020-03-25 19:00:33 | 教育

 今に始まったことではないが、国会中継や不祥事の当事者である政治家の言葉を聞いていると、正統国語辞典の語義を見ていては、到底理解しえない言葉が多々ある。そのうちのいくつかを取り上げてみよう。

【仰るとおり】不都合な事実を自分の口から表現したくない場合、相手の言葉に便乗する時に用いる。「俺は口にしたくもないが、あんたのいう通りかもよ。」の意味。

【個別の事例、個別の案件】具体的事例・案件に踏み込んで言及することを避ける言い訳として用いられる表現。かつて法務大臣が地元で浮かれて発言し、有名になった。

【重く受け止める、真摯に受け止める】「一応頭に入れておきます」と同義。

【しっかり】「一応」の意味。

【粛々と】雑音や異論、正論には耳を貸さず。自分のやり方で進める時に用いる。

【シュレッダー】都合の悪い情報を「無いことにする装置」。具体的に粉砕するかどうかは問題外。

【整合性】言っていることや証拠相互の関係が矛盾しているかどうかを表す言葉。この言葉が使用される場合、相互に矛盾していることがほとんど。

【注視する】行動せず,、見てるだけの意味。

【長期政権】物理的に長く続いた政権。腐敗、劣化することが多く、「凋」期政権という表記がふさわしいこともある。

【体調不良】不祥事を起こした政治家が、窮地を脱する合図にする言葉。本当に体調が悪いかどうかは問題外。

【丁寧に】丁寧に説明するという文脈で用いられることが多いが、聞き手が納得することは、ほぼない。

【データの削除】不都合な真実を「ないことにする」行為。関連語は【シュレッダー】。

【法治国家】『広辞苑』では、「国民の意思によって制定された法に基づいて国家権力を行使することを建前とする国家。」とあるが、為政者の思いつきで国家の意思決定がなされることの少なくない当今は、法に目もくれない【放置国家】が適切かもしれない。

【「募集」と「募る」】日本の政治家の読字能力の低さを証明することになった事例。「死亡はしていないが死んでいる」などとSNSで揶揄された。文科大臣の発言でなくて幸いであった。PISA調査で,日本が世界15位だったことを嘆くには当たらない。

 


「新型コロナ」対策考

2020-03-02 10:19:45 | 教育

 全国で、今週から休校になる模様で、様々な問題が生じているようだ。

 毎年、いくつかの学校で、インフルエンザによる学級閉鎖があることを考えれば、原則的に、学校を休校にすることは、有効な措置であろう。

 にもかかわらず、様々な問題が生じ、不満が噴出する理由は何なのであろうか。その理由の一つは、対応策が「唐突」な印象を与えていることである。

 新型コロナによる肺炎は、特効薬もなく、パンデミック(世界的大流行)に突入するかもしれない危機的状況にある。いわば非常時である。新型ウイルス征圧の戦いの体制を整える必要のあるときなのである。

 こういうときに必要なのは、国民一人一人が、戦いの意識と方策を準備してかかることである。宰相たる者は、学校を休校にし、親の就業保障や、学童保育や保育所の具体的手当の方法等の細部にわたる方策の提示ではなく、高次元の基本的、原則的考えの提示によって、国民に、問題に対する戦いの必要性を訴えることであった。個々の方法については、それぞれの方法を講じるにふさわしい部署があろう。例えば、休校については文科省が責任を持つべきである。もたもたして信頼を失いがちであっても、医療面のことは厚労省の責任で決定すべきである。休校については、総理周辺や担当部署の反対を押し切って、独断で発表したとのことで、「思いつき」「唐突」の印象を免れなかった。記者会見で、総理に保育所の問題を問いかけても、納得する回答は得られまい。総論なしの各論の暴走では、問題の根本的な解決は望めない。マスコミも同じアナの狢である。

  自粛を求める声に反して行われたライブ・コンサートに五千人も集まり、客の中に数名の感染者がいることが判ったという。また、警告したマラソンの応援には七万人以上が参加していたという。学校が休みになっても、学童保育で子どもの集団での受け入れに腐心するという。国民の意識の希薄さは、非常時の認識の低さに比例しており、原則論を打ち出さなかったつけである。国民も二週間か二十日間、個人の権利を抑制して、難局を乗り切る覚悟が必要である。少なくとも感染源(スプレッダー)にならぬようにすることは国民の義務である。買い占め、便乗値上げなど(非常時には必ずデマ情報が出現する。今回もトイレットペーパーがなくなるなどの低級デマ情報が出現している)は最も忌むべき行為である。

  果たして、我々は、このたびの国難を意識改革の契機になしうるのか。