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後期高齢者になって、とんと買い物をしなくなっている。経済の活性化に何らの貢献もなしえていないことを実感するこの頃であるが、しかるがゆえに,冷静に,商品の「価格」なるものについて考えることができた。
昨年、論文の一部を収録したCDを作成した。著書にする煩わしさを避けたのであるが、CDの表面には、論文名や著者名等の印刷が必要になる。かねて購入しておいたインクジェット・プリンタのレーベル・印刷機能を使って,首尾良く仕上げた。今回も引き続きその方法で印刷をと思ったところ、あいにく「インク切れ」の表示が出た。インクカートリッジを求めに,近くのホーム・センタ-に出かけて驚いた。「純正」と称するそのインクの価格の高額であることにである。
いずれのメーカーのカートリッジの価格も大同小異で、高い。純正品を6色セットで購入すると、安価なプリンタ本体と、ほぼ同額になる。プリンタを買った限りはインクを購入せざるを得ない。ユーザーの弱みである。こういうユーザーのために、サードパーティから、「互換」製品なるものが提供されている。これは安価でいいが、品質は様々で、しかも故障した場合には、プリンタの保証適用外となる。
プリンタとインク価格の関係を、乱暴にたとえるなら、乗用車にガソリンを給油したら、1回か2回で車の価格を凌駕する費用がかかったというに等しい。どんなに高くともガソリンなしの乗用車は、ただの大型ゴミである。互換インクメーカーが、純正の三分の一程度の価格を設定できるのなら、純正にできないはずはない。場合によっては、さらに低い価格の設定が可能なのではなかろうか。
このところ携帯電話業界で価格を下げる試みが続いている。いちいち、市場問題に、「お上」が出てきて口を出すのはいいことではなかろうが、政府は、ほぼ40パーセント値下げが可能と試算している。価格は,需要と供給で決まるはずだが、供給側の独占・寡占状態があるかぎり、ユーザーの論理は無視される。これまで、明らかにもうけすぎていたのである。ユーザーも企業の手の内に取り込まれて、必要でもない機器やソフトを購入し、長時間使いまくり、通信費に、従来は考えもしなかったほどのお金を使っているのである。結果として,ライフ・スタイルまで変質することになった。携帯・スマホに関しては、ユーザーはもう少し厳しく、賢明になる必要がある。
一方で、100円ショップで驚くことがある。多種多様な商品のほとんどが100(108)円という低価格であることだ。製造業者の納入価格は、どれほどだろうかと心配にも気の毒にもなる。おそらく、製造現場は、低賃金で過酷な労働環境であろう。多くは労働力が豊富で低賃金の国や地域での生産であろうが、ああわが身が生産者であったなら、勤労意欲を失う恐れがある。安いのがいいとは限らない。安全、安心の商品開発のためにも、適正かつ合理的な価格設定が身近な経済の基本であってほしい。現に100円ショップでも、200円、400円などの商品も扱っているではないか。