それ、問題です!

引退した大学教員(広島・森田信義)のつぶやきの記録

どの口で言うか

2018-03-29 23:10:27 | 教育

  (リンゴの花。その2 受粉木)

 突然行われた中朝の首脳会談の中で、以下のような発言が報道された。

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  金氏は会談で「祖父の金日成主席と父親の金正日総書記の遺訓により非核化実現に尽力することはわれわれの終始変わらない立場だ」と強調。
**************************************** 核実験をし、核弾頭の開発に意欲的に取り組み、トランプに、「ロケットマン」と呼ばれるほど頻繁にミサイル発射をしてきた人間の口から出た言葉である。
 今日は、ブーメラン発言・行動で立場が苦しくなった大相撲のT親方が降格処分を受けたが、規模も迫力も異なる鉄面皮発言である。もめ続けている国会の議員諸君の言動がなんと正直者、小粒に見えることか。あきれかえるとともに、国際政治の現場が、並の道徳観や正義観、潔癖さなどで乗り切れるほどに単純なものでないことがよく分かる。
 「非核化」など簡単な問題だったのかと思わせる発言であるが、さて、米朝首脳会談の行方はどうなるのか? 危機感を抱いて見守ろう。


「救助」の意味は?

2018-03-29 22:53:44 | 教育

  (庭の、今年のリンゴの花)

 国語教育を専門にしていた身としては、読書の量も多い方だと勝手に信じ込んでいるが、時々、違和感のある言葉の使用法に出会うことがある.その一つが、表題の「救助」という語である。
 昨日のテレビのニュースで、火災を報じる内容のものがあり、次のように言った。
 「火災現場からは、一人が救助されたが、その後死亡が確認されました。(発見された時点で、既に焼死状態だったようである)」
 こういう報道は、水害や雪崩の犠牲者についても頻繁に起こる。
 「雪崩の下から一名が救助され、救急搬送されたが、病院で、死亡が確認された。」
などである。
 火災現場や雪崩の中から、掘り起こしたり、引き出したりすることは、生死の如何を問わない場合、「搬出」という行為であろう。死亡と推定される状態の場合は「心肺停止状態」と説明が付加していて、普通の意味での「救出」ではなかったのだなと推定できる。
 私は、「救出」されたと聞くと、まずは、「安心」する。そして「死亡が確認」されたと知ってがっかりするのである。
 一般的には、「心肺停止状態で救出された」とは言いそうにないので、「救出」は、命を救う、生きている状態で危機的状態から救い出すことを意味するのではなかろうとかんげえるがどうであろうか。 


言葉を巡る諍い

2018-03-27 17:15:47 | 教育

 (植物公園にて)

 東京の花見風景をテレビで放映している。
 アジア系外国人のグループが、殴る、蹴るのけんかをしている。わざわざ日本まで来て、迷惑な行為を!と思って画面を見ていると、けんかの原因がおもしろかった。一方のグループが他方のグループに呼びかけるのに、日本語で「お前」と言ったのだという。「お前とは失礼だろう」ということで大げんかになったとのこと。
 肩がふれた、足を踏んだ、睨んだ等がけんかの要因になることはよく聞くが、日本語の使い方を、しかも外国人が喧嘩の理由にしているのが興味深かった。しかも、日本語での言い合いをしていることが、更に興味深かった。花見の場での喧嘩の種類としては上等な部類ではなかろうか。
 もともとは敬意を含む呼称が、今は、喧嘩の種になる。今回は、単に”you"のつもりで悪意もなく使ったのだろうが、多様な呼称を持つ日本語の皮肉な結果というべきか。「お前さん」「お前様」「あんた」「君」なども教えてあげるべきか。


権力と民意

2018-03-22 20:49:36 | 教育

 (バオバブの木・オーストラリア原産) 

 NHKの朝ドラマ「わろてんか」では、戦時下の場面が続いている.朝、出勤、登校前に、こんな暗い世相を見せつけられるのは遠慮したいと思いつつ観ている。前回は、ついに「非国民」なることばが、町内会の役員の口から飛び出した。それで、思い出したのが、自民党議員経由、文科省から名古屋市の中学校で行われた前川・前文部事務次官の講演についての「詰問メール」である。
 権力(国家)が、学校の教育内容に干渉、介入することの是非は、わが国の教育の歴史における一大問題であり、国と教組とは、長い間対立してきた。今回の問題に関わった自民党議員は、文教部会の会長と副会長であったが、この問題の重大性を認識した上でのことであろうか。いわば、軽率に「非国民的行為」と考えて、正義の味方を気取ったのであろうが、与党からも批判される結果となった。おそらく選挙民、自民党からは賞賛されると考えた上のことであったろうに……。(市教委、中学校校長の対応は、なかなかのものであったことも付記しておこう。)
 教組優勢の時代の出来事だったらおそらく国会はデモ隊に取り巻かれるような自体になっていたであろう。こういう力関係にも問題があったが、こんにちは、国家、行政優位の時代で、これも問題を抱え込んでいる.先日は、四国の学校だったと記憶しているが、校内分掌(学校内での役割分担)を、教員相互の話し合い、投票で決めたというのが問題となり教委から注意を受けたという.校長の権限を奪った、制限したというのである。何の問題もないことだろうが、大きな問題のように扱われた。この頃は、教員の会議は、校長による伝達の場(上意下達の場)になり、意見の交換、意思決定の場でなくなっているという。そういえば、大学の教授会も同様であった.よほど、国家、行政機構、管理職に自信がないのであろう。権威・権限でもって押し切るという非民主的な手法は、近隣の不自由な国に見られるものと同じである。
 世の中の、こうした力関係は、それを許容する国民、大衆の考えと無関係ではないところに、また重大な問題がある。
 戦時中に、非国民を糾弾する人々の背後には、それを是認する多くの人々の意思があったはずである。無謀な戦争に踏み切った原動力にも、国民の意思があった。恐ろしいのは、戦後になって、一転して民主主義、自由主義を賛美するようになったのも、国民・大衆の意思であったということである。国民の意思を忖度する政治家が出てくることは、十分に想定できる。それを警戒すると同時に、自分自身の立ち位置についての反省的思考ができるようでありたい。


分かりにくい歌詞

2018-03-17 23:17:44 | 教育

 (近くの公園の梅)

1. よく取り上げられるロシア民謡の、下記の歌詞。
    ♪ 月曜日にお風呂を焚いて、火曜日にお風呂に入る。
 いろいろな解説(高説)を拝聴、拝読しても、やっぱりよく分からない。これほど難解な歌詞にする必要があったのかどうか。

2. 日に何度も流れたCMの歌詞
    ♪  飛行機雲の流れる青い空……
  飛行機雲は、流れるものなのか? 絶対に流れないということはない.例えば、飛行機雲に交差する形で強風が吹き荒れるような場合は、流れることもあろう(飛行機にとっては危険な状態であろう)が、一般的ではない。青空に、一直線に引かれる白い直線は、何と表現すればいいのだろうか。これは、私が悩むことではなく、印税をもらった人の考えるべきことである。

3. これまでNHKの朝ドラマはあまり見ていなかったが、今回の「わろてんか」は、芸達者な役者が多数出ていて楽しめる。毎回ドラマのテーマ・ソングの歌詞の一部に引っかかる。
    ♪ パレードは回り続ける
    パレードは回るものなのか?メリー・ゴーラウンドなら回るだろうが、パレードは、くるくる回るものではなかろう。

   「音楽は、歌詞を聴くものではない 」と言い切った歌手がいた。その心意気は頼もしいが、歌詞のある歌には、言葉はついて回る。歌に涙するのはメロディよりも歌詞によることが多いのが普通である。

 「♪ ウサギオイシ、カノヤマ…」 を聴いて、文語に慣れない者の中には、「ウサギっておいしいものなのか?」というような誤解する者もあることは聞き知っているが、これなどは致し方ない。しかし、多くの歌詞が、少なくとも同時代に生きる者(聴き手)にとっては理解しやすい、納得のいくものであって欲しい。