それ、問題です!

引退した大学教員(広島・森田信義)のつぶやきの記録

書物の許容量とは

2018-12-31 22:44:48 | 教育

 家人が、古い映画をテレビで鑑賞している。きっと過去に見た作品だろうと思うのだが、初めて鑑賞するもののような雰囲気だから黙っているが、たまに、「作品のビデオが3巻もあれば、一生楽しめるのではないか?」とからかってみることもある。
 私自身は、記憶力に自信があったはず(?)と思っていたが、先日、愕然とすることがあった。
 たくさん抱え込んでいる蔵書のうちから、めぼしいものを再読しようと選択して読み始めたのだが、最初から最後まで、過去に読んだ覚えが全くない。これまで、読んだことのない作家、作品を購入して楽しんできたが、この分では、そんな必要はないのかもしれない。蔵書の数を、ざっと数えてみると3,000冊弱はあるようだ。むろん辞書や画集などもあるので、すべてが一般読書の対象ではないが、ほとんど読んだ記憶がないのであれば、数千冊を読み返さなくてはならない。生きているうちには読みこなせないだろうから、新規に購入する余裕などないはずである。
  自宅の書棚の前で呆然とするだけでなく、書店で、玉石混淆の新刊書群を目にすると、こんなに多量の本をユーザーは、読みこなせるのだろうかと空恐ろしくなる。クリスマス用のホール・ケーキの半分は廃棄処分されるというニュースが思い起こされるが、これは不謹慎だろうか。


暗い番組の意図は?

2018-12-27 16:57:01 | 教育

 NHK朝の連続ドラマ『まんぷく』は、それなりの視聴率を獲得しているようだが、「憲兵による残虐な取り調べ」「GHQの理不尽な逮捕と取り調べ」「入獄」「財務局による差し押さえ」「会社の解散」「追加課税」と、よくもまあ、こんな暗いことを、かなり長期にわたって、朝の出勤や登校前(BSでは7:30から視聴可能)に放映するものと、皮肉な思いで見ている。事実を背景にしたドラマだと言うから、実際にも、これに近いことがあったのかもしれない。しかし、『ひよっこ』に悪人がまったく登場しなかった(リアリティが乏しいとは言えようが)のと対照的で、見ていて心地よいものではない。女主人公の母親の「武士の娘!」という言いぐさも回数が多過ぎて、古くさく、ある種の優越感がにじみ出ていて、聞き苦しい。
  他の局は、とチャンネルを回すと、これまた、韓国ドラマのオンパレード。いったいどこの国のテレビかと不審に思うほどの盛況ぶりである。。本当のところ、なぜ、こんなに、韓国ドラマが多いのであろうか。
 先日は、アメリカ映画で、日本軍玉砕の島の戦闘の映画を放映していた。当然、日本人としていい気持ちはしない。
 特に、反米、嫌韓の思想は持ち合わせていないが、少なくとも、全国民から視聴料を徴収する放送局は、自らの立場を自覚してもらいたい。やや躊躇するところもあるが、民放にも、日本の放送局であることの矜恃を持っていて欲しい。少なくとも「バランス感覚」は、保持していて欲しい。
  上記のような番組の他に、芸能及び芸能的要素の濃い番組に取り巻かれている身としては、よほど確かなメディア・リテラシーを身につけておく必要があると考える今日この頃である。


スプレイ缶とガス爆発

2018-12-21 00:01:51 | 教育

 

 北海道で、スプレイ缶のガス抜きを屋内でしていて、大爆発を起こしてしまったという。隣接する建物を含めて崩落し、居酒屋は階上の床が抜け落ち、そのお陰で客は逃げ出すことができ、驚くことに死者が出なかったという。
 自然科学部門でノーベル賞受賞者を輩出する国の出来事としては、あまりに情けない。可燃性ガスを使用したスプレイ缶の廃棄方法には、穴を開けて残りのガスを排出する場合だけではないようだが、穴を開ける場合は、戸外で行い、火災にならないように注意すべきことは、缶にも記載がある。我が家でも、スプレイ缶をいろいろ使っているが、すべて、屋外で、おそるおそる穴を開けて内容物を全部排出し、缶をつぶして廃棄している。一度など、床下のガス管から漏れ出したガスが、部屋にも漏れて、大慌てしたこともあり、ガスと電気には十分以上の注意をしているつもりである。
 新品のスプレイ缶2ダースを、使用期限が過ぎたということで屋内に排出するという行為は、無知として笑い飛ばして済むことではない危険な行為である。手を洗うために湯沸かし器に点火したのが爆発の原因だと知って、小学校、中学校での理科教育のあり方を疑問に思った次第である。最先端の科学教育の前に、日常生活の安全を保障する程度の基礎的、基本的な理科教育が必要なのではなかろうか。いやいや、文字で書かれた危険情報、警告をきちんと理解できる国語教育の責任かもしれないと反省したりもする。
 危険運転をする輩も、くるまの性能や危険性、また、道路交通法についての理解の必要性がるなど、同様の問題を抱えている。
 最先端の分野での教育は人を救う可能性を持っているが、日常的で基本的な知識の欠如は人命を脅かす危険な存在である。


「南青山」の教訓

2018-12-18 11:00:07 | 教育

 

 東京都港区が南青山に、児童相談所を含む施設を造ろうとして、地元民の一部の反対にあい、ちょっとした騒動になっている。予定地の1,000坪は、区が国から買い上げた土地であり、区有地に区の施設(カジノ等の遊興施設ではない。)を造るのに、どんな支障があるのかと、かねてより不審に思っていた。
 港区による説明会の様子を報道していた。出席した区民のひとりは、あらまし、次のような発言をした。
 「私は3人の子供の母親です。青山の学校に子供を入れるために大金をはたいてやってきた。青山という土地は、自分でしっかりお金を稼ぐ人が住む街で、貧乏な家庭の子供たちが来ると肩身の狭い思いをして、その子たちがかわいそうではないか。」
 一部、意味不明の理屈を含むが、発言の背後にあるのは、強烈な優越感、差別意識である。こういう妙な理屈を、公の場で、堂々と口にする神経が理解できない。恐ろしい街である。
 反対派の一部には、反対理由のひとつに、自分たちの土地の価格が低下する恐れがあるというものもあるという。「金持ちけんかせず。」という言葉がある。裕福な人間の余裕、懐の深さを意味するが、この土地は、そういう人達の少ない所のようでもある。
 土地価格低下論については、不動産鑑定士の言葉がふるっていた。
 「児童相談所ができるから土地価格が低下するという話は聞いたことがない。それよりも、住民が、今回のような妙な理屈を声高に叫ぶような街であることが土地価格の低下の原因になるのではないでしょうか。こんな街に住みたくないと思って。」
 まさにその通りである。過去に保育園ができると土地価格が下がると心配するという報道もあった。子供の声がやかましいのだそうだ。自分も子供だったこと、自分にも子供や孫がいたであろうし、これからできるかもしれないことなど念頭にない。特に、反対者の多くが、70代以降の老人らしいことが、同世代の私としてもやるせない。地域内が老人ばかりになることが不安で、若い人や幼い子供たちの声が聞こえるとほっとするという話をして共感する人達と付き合っている私には、理解を超える事態である。
 自分の子供ができた時に、「こんな時代の、こんな国、社会を生きていくのは大変なことだ。気の毒なことだ。」と思ったのもあながちまちがいではなかったような気がする。


ことばの力と危険性

2018-12-10 23:00:28 | 教育

 

 BS-TBSの『にっぽん!歴史鑑定「どこから来た?縄文人の真実」』を興味深く観た。この種の番組はNHKの得意とするところであろうが、民放の取り組んだ成果の一つとして評価したい。
 縄文人の生活レベルが、従来考えられていたものより、遙かに高度なものであることが証拠を挙げて説明・解説されて、認識を改めざるを得なかった。
 彼らのコミュニケーションの方法、つまりは「ことば」についての研究の成果を期待したのだが、これについては、オノマトペ(擬声語・擬態語)を用いての近隣の人々とのやりとりをしていたらしいことの指摘のみで終わったのが、やや残念であった。骨や住居などと違い、ことばの痕跡はとらえにくい。どうして、オノマトペが使用されていたことが判明したのかについて疑問が残ったが、使用の事実の提示は刺激的であった。(数百人も収容できる集会所を、共同で建築するには、相当に緻密な説明が可能なコミュニケーションが必要であったろうし、それを可能にすることばも存在したに違いないのだが……。)
  ことばは、人と人、人と集団、集団と集団を結びつけるとともに、自己を思考や行動の主体としてとらえ直し、成長させる上でも必須のものである.動物との違いは、ことばの使用の有無によるとされる。(チンパンジーやイルカのレベルの言語能力とは本質的に異なる使用能力を言っている。)
 が、時に、ことばは、事実、真実を覆い隠し、人や社会を欺くためにも使用される。SNSの発達は、虚偽の情報を量産し、人を欺くために多大のエネルギーを費やし、不幸な状況を生み出し続けている。ことばによるコミュニケーションが、人々を結びつけ、家族や自分自身の日々の生活をよりよいものにするために機能していた時点に遡って、ことばの力をとらえ直す必要があるのではなかろうか。
 国会で話題になった、「武力衝突」と「戦闘行為」は別物というようなやりとりを、縄文人ならどうとらえたであろうか、聴いてみたい。知恵がつき、ことばが複雑な構造になるとともに、悪用も誤用も進化し、真実を覆い隠すことにもなる。雑駁かつ不誠実なことばの使用は、いずれわが身に、災いをもたらすことになろう。
 
          偽装
     
      ちりめんじゃこの目玉
      数知れぬ命の残骸
     
      チキン・フラワー
      若い鶏のか細い手羽先
     
      いか(烏賊)リング
      原型は何だったか?
     
      いのちの存在を
      希薄にすることばの
      「偽装」