都道府県の知事や議長の公用車の価格について調査した結果、国産最高級車で2,000万円以上の車を購入したり,レンタル利用したりしていルケースが少なくないことが判明したという。
高価な車を使用する理由が珍妙である。ある県の担当職員は、「わが県には山あり谷あり、多様な地形なので……」と苦しい説明。これに対して,インタビューを受けた県民の一人は,「山も谷もない県がどこにあるか!」というものであおった。
別の県の職員は、「議長の品位・品格に見合うように選んだ車」とのことである。立派な車に乗らなくては維持できないような品位・品格というお粗末で,空虚なものが存在するのであろうか。(しかも購入原資は税金である。)
アメリカの大学に客員教授として勤務した折のことを,作家の村上春樹氏が良質のエッセイに書いているが,その中に、立派な車で出勤してくる教授は、もう研究者生命が終わった人だと評価されるという趣旨の記述がある。ぼろ車は研究者のステイタスなのである。味わうべき考え方である。見苦しい大統領選にがっかりしている最中、また学術会議に関する低次元のやりとりの行われているこの時期、とても爽やかな印象を受ける。
かつて,外国から贅沢とは無関係の清貧の元首が来日して日本国民に感銘を与えたことがある。品位・品格と高額製品は無関係である、というより対立概念である。