これからしばらくリムスキー=コルサコフのピアノ曲のCDをご紹介していきます。
まず最初は、ピアノ・ソロ全集です。
Rimsky-Korsakov : Complete Music for Solo Piano (tower.com)
Laura Oppedisano (piano)
リムスキー=コルサコフの唯一のピアノ・ソロ全集として1999年にリリースされたCDです。
JL Recordsという超マイナー(多分)レーベルから出されたものですが、発売当時は国内でも輸入盤として入手可能でした。
現在(2020年)はもちろん廃盤となっていて、手に入れるためには中古品がネット・オークション等に出されるのを気長に待つしかないでしょう。
このアルバムは「全集」との看板に偽りなく、収録されている曲は1875年頃に習作として作曲したフーガやフゲッタを含めたピアノ・ソロ作品のすべて。
リムスキー=コルサコフのピアノ曲が、ソロ全集という形でCDになっていること自体がもう奇跡的です!
曲順も作曲年代順となっており、私のようなマニアのみならず、(そんな研究者がいればの話ですが)学術的な研究資料としても有益なアルバムでしょう。
収録曲は楽譜全集から採用したらしく、《3声のフーガ ニ長調》(1875)は、楽譜全集にある異稿版も律儀に収録しています。
ベリャーエフ・グループの作曲家たちとの合作である《ロシアの主題による変奏曲》は、残念ながら主題とリムスキー=コルサコフが受け持った第1変奏のみ。これもまた楽譜全集とおなじです。(この作品の全曲は、後年ブリリアントからリャードフのピアノ作品全集がリリースされた際に収録されました)
なお、彼のピアノ作品として「夜想曲」「葬送行進曲」などが作品リストに挙げられますが、これは自伝にのみ登場する若いころのもの。
これらは、そもそも楽譜が存在しない(というか、見つかっていない)ので、当然このCDには収録されていません。
さて、リムスキー=コルサコフのピアノ作品については、「室内楽よりさらに価値がなく、演奏されることも少ない」(井上和男『ボロディン/リムスキー=コルサコフ~大音楽家・人と作品21』音楽之友社)と断じられているように、《熊蜂の飛行》を除けば一般にはほとんど知られていないように思います。
現在のようにクラシックの世界でもマイナー作品に光が浴びせられ、聴衆の価値観が多様化している状況においても、この評価はそんなに変わっていないでしょう。
その点、リムスキー=コルサコフのピアノ・ソロ作品「全集」という形では、おそらくこのCDが空前絶後、唯一無二のものとなるかもしれませんね。
演奏はアルゼンチン生まれのピアニスト、ラウラ・オッペディサーノ。
彼女の生年はネットを見てもよくわかりませんでしたが、1990年代から本格的な演奏活動を始めたようです。
ロシア人でもない彼女がリムスキー=コルサコフのピアノ・ソロ全集を録音することになったのは、1994年の作曲者の生誕150年のイベントに参加したことがきっかけだったとのこと。
このアルバムでの演奏ですが、前半の作品は習作ということもあり、ほかに比べられる演奏もないので何とも言えませんが、後半になると俄然盛り上がってくるのです。
例えば、《BACH主題による6つの演奏曲》(作品10)は、それまで私はかったるくてあまり好きではない曲でしたが、彼女のメリハリがある演奏は、どこか現代風な作風ともマッチして結構聴かせられました。
また、珍しい《アレグレット》は、リムスキーらしからぬお茶目な雰囲気があり、また比較的人気のある《二つの小品》(作品38)とともに、彼女の才気煥発さとうまく融合された、いい演奏だったと思います。
総じてこのアルバムは、カタログ的な価値もさることながら、ほとんど知られることのないリムスキー=コルサコフのピアノ作品に光を当て、その全貌を知らしめ、魅力を引き出したことで、賞賛に値するものと考えています。
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