内閣府は2014年11月17日、7~9月期のGDP(国内総生産)速報値を発表した。物価の影響を除いた実質でマイナス1.6%(年率換算)と大幅な下落となった。予想を超えた悪い数字に市場では驚きが広がっている。
エコノミストなどによる事前予想の多くはプラス2%台であった。日本経済研究センターが民間エコノミスト42人の予測をまとめた調査では、年率換算で実質成長率がプラス2.4%となっていた。だが実際にフタを開けてみると、プラス2%どころか、マイナス1.6%と大幅なマイナスであった。
為替市場ではGDPの発表と同時に、一気に円安が進み、一時1ドル=117円を突破した(その後値を戻している)。東京株式市場も100円以上値を下げて取引がスタートしている。
GDPの内訳で影響が大きかったのは住宅で前期比マイナス6.7%と大幅な下落となっている。個人消費も弱くプラス0.4%にとどまった。消費増税の影響で消費が脆弱になっていることがよりはっきりしてきたといえるだろう。民間の設備投資もマイナス0.2%となっており、政府による公共事業以外は総崩れといった状況である。
これまでの各四半期における実質GDP成長率(年率換算)は、2013年10~12月期がマイナス1.6%、2014年1~3月期はプラス6.7%、2014年4~6月期はマイナス7.3%だった。4~6月期が消費増税の駆け込み需要に対する反動なのだとすると、7~9月期は大幅なプラスとなるはずである。
実際、安倍政権は7~9月期のGDPが大きくプラスになることを見越して、このタイミングでの消費増税の決断を目論んでいた。だが実際には、4~6月期を下回る結果となり、景気の腰折れが想像以上であることが明らかになってしまった。
それにしても、エコノミストの予想があまりにも当たらないため、個人投資家などからは、エコノミストの予想を批判する声も上がっている。
だがエコノミストが、正確にGDPを予想するのは難しいというのが現実だ。彼等の多くは証券会社や銀行など金融機関に属しており、当局に先んじて市場にインパクトを与える予想を出せる立場にはない。過去の予想を眺めてみても、その時点でのGDP水準の近傍に予測が集中する傾向がはっきりみて取れる。
エコノミストといっても、所詮はただの商売であるということを理解した上で、彼等の分析結果を参考にするという、冷静な態度が必要だろう。