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坂本龍一、ベネチアで福島原発問題を懸念【第74回ベネチア国際映画祭】
現地時間3日、第74回ベネチア国際映画祭にて坂本龍一を追ったドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』の公式記者会見が行われ、坂本と監督のスティーブン・ノムラ・シブルが出席。2012年から製作が開始された本作とあって、2011年に起きたばかりであった東日本大震災が切っても切り離せないテーマの一つになっており、坂本はその体験を振り返るとともに、今なお続いている原発問題を危惧する一幕もあった。
日本人の母親とアメリカ人の父親を持つシブル監督が、2012年から5年間にわたって密着取材をして完成させた本作。音楽家としての姿だけでなく、被災地を訪れる坂本の姿なども収められている。「地震、津波、そして原発は私にとても大きなインパクトを与えました」と切り出す坂本は、「それ以前から環境問題を心配してはいたんです。
1992年頃から、CO2の排出量を減らそうとしたり、自分でできることは取り組んでいましたので、自然について考える時間はたくさんありました。アーティストにと
って自然は偉大なるインスピレーション源なんです。でも地震や津波が起きて、気づいたのです。十分なほど、自然に耳を傾けていなかったのだと。それから、自然に耳を傾けることを思い出したのです。それは大きな影響でした。今年発売したアルバムも、自然を通して作りました。この映画にも通じる要素があると思います」とアーティストとしての気づきを振り返る。
続けざま、「2番目の問題は、福島での悲劇です。今でも福島の原発問題は続いています。これは全く別の問題です。私が恐れているのは、日本の人々が現実に目を向けようとせず、メディアは報じず、政府は隠そうとするということです。
それこそが本当の問題だと思っていて、この問題はまるで津波の力のようにとてつもなく大きなものですから、無意識に人々は現実から目を背けることを選んだのだと思います」と日本における原発問題の現状を懸念した。
また、本作の製作中には想定外の出来事も起こる。2014年、坂本は突如として中咽頭がんを診断され、闘病生活を経て復帰した。そのことについて「監督は運がよかったと思いますよ。私の病気が3年前に発覚して、それによりこの映画にドラマチックな要素が加わったんじゃないかな」とジョークを放ちつつも、「最も死に近づいた瞬間でした。医療を受けなければ死ぬわけですから。その感覚をなんて表現したらいいのか。でも、死も音楽の大きなインスピレーションだと思います。ノスタルジーや思慕もです」としみじみ語った。(編集部・石神恵美子)
映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』は11月4日より角川シネマ有楽町ほか全国公開
ベネチア国際映画祭は現地時間9月9日まで開催