http://blog.goo.ne.jp/mayumilehr/e/15ab53cdbb243f3ea5db142604c6a372
ウィンザー通信より転載
「東電が巨大津波を予測できていた新証拠。何度も司法記者クラブで話したが、新聞は記事にしなかった」
津波対策の緊急性を、東電取締役らは知っていた!
2002年7月
政府の地震調査研究推進本部(以下、推本)は、福島第一原発の沖合を含む、日本海溝沿いで、
マグニチュード8クラスの津波地震が、30年以内に、20%の確率で発生すると、予測しました。
2008年6月
東電の社内組織である、土木調査グループが、武藤栄(副本部長)に対して、
15.7メートルの津波が襲う試算を報告しています。
2009年2月
「中越地震対応打ち合わせ」で、武黒一郎(原子力本部長)は、津波について、
「女川や東海はどうなっている」という質問をしています。
しかし、同年7月
武藤栄は、推本の予測を土木学会の検討に委ねることとし、さらにこれらの方針について、
土木学会の津波評価部会や、保安院の「理解を得る」ことなどを指示しました。
津波評価部会は、電力会社や関係団体に所属する人が半分以上を占め、研究費も電力会社から支給されています。
東電は、津波対策の必要性を容易に無視できないことを認識しながらも、工事のために、原発が長期停止になることを恐れ、
土木学会へ検討を依頼して、時間稼ぎをしたのです。
「工事しなくていいの?」
「ちょ、ちょっと待っててね」
東電の、同年9月の社内文書は、
「推本の知見を完全に否定することは難しく、現状より大きな津波高を評価せざるを得ないと想定され、津波対策は不可避」と結論付けています。
「そりゃまー、工事必要っちゃ必要なんだけど、原発運転止めたくないし…」
2009年8月
保安院は東電に対し、平安時代に起きた貞観津波などを踏まえた津波対策の現状について、説明を求めました。
東電は、2009年9月、貞観津波に関する佐竹論文に基づいて試算した波高が、 約8.6~8.9メートルであると説明しましたが、
土木学会手法では、2~3割水位が増すことと、15.7メートルの試算の存在も隠しました。
貞観津波については、勝俣恒久社長まで報告されています。
さらに、2010年3月
保安院の森山審議官が、部下にあてたメールから、貞観津波を考慮すれば、追加対策が必要になることを認識していたことがわかります。
しかし、何の対策もせず、運転の継続を認めていたのです。
地震防災では、
「いつか起きることは、明日起きるかもしれないと考えて、対策をとらなければならない」と言われています。
特に、大きな危険性をはらんでいる原発については、例外なくこのように判断しなければいけません。
対策を怠った東電の責任は重い、と言えるでしょう。
東電株主代表訴訟 http://tepcodaihyososho.blog.fc2.com/
脱原発・東電株主運動 http://todenkabu.blog.fc2.com/
そしてここから先は、上記の件について、さらに詳しくまとめてくださった記事です。
IWJの岩上さんのインタビューでの、福島原発告訴団・代理人の海渡雄一弁護士の、極めて重要な『証言』です。
↓以下転載はじめ
【スクープ速報!】
「想定外の巨大津波」は、実は想定の範囲内だった!
震災から5年、東電が「巨大津波」を予測できていた「新証拠」を、福島原発告訴団・代理人の海渡雄一弁護士が、岩上安身のインタビューで証言!
「何度も司法記者クラブで話したが、新聞は記事にしなかった」
衝撃の事実をIWJで公開!
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/291231
※公共性に鑑み、ただいま全編公開中!
インタビューの全編動画は、こちらの画面でご覧いただけます。
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/291231
事故当時、東電は、巨大津波を予測できていた――そんな新証拠が存在するという。
福島第一原発事故をめぐり、2016年2月29日、検察審査会から「起訴議決」を受けた、東京電力の勝俣恒久元会長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長の3人について、
検察官役の指定弁護士が、業務上過失致死傷の罪で、強制起訴を決定した。
起訴状によると、3人は、
「原発の敷地の高さである10メートルを超える津波が襲来し、建屋が浸水して電源喪失が起き、爆発事故などが発生する可能性を事前に予測できたのに、防護措置などの対策をする義務を怠った」としている。
実は、起訴状の中身を裏づける、当時の東電が巨大津波を予測していた、決定的な「新証拠」があるという。
告訴団代理人の海渡雄一弁護士が、2016年3月10日、岩上安身のインタビューで明かした。
東電は、福島第一原発事故の主な原因を、「想定外の巨大津波」であると結論づけているが、新証拠が事実であれば東電の従来の主張は覆り、
「想定外の原発事故」は、予測できた「人災」だったことになり、東電幹部らの刑事責任は、避けがたいものとなる。
以下、岩上安身のインタビューでの、海渡弁護士の「証言」をお伝えする。
▪️津波を予測していなかったという嘘。
2009年の6月までには、すべての津波対策を完了させると決定してた?!
岩上:
2000年の電事連報告では、福島第一は、日本一津波に対し、最も脆弱であることが、示されていたそうですね。
海渡:
福島第一と島根がそうです。
岩上:
2006年9月13年、保安院の審議官らが出席した安全情報検討会では、津波問題について、
「わが国の全プラントで、対策状況を確認する。
必要ならば、対策をたてるように指示する。
そうでないと、”不作為”を問われる可能性がある」と、報告されていたといいます。
海渡:
2006年9月というのは、耐震バックチェックの指針が決まった年です。
安全情報検討会というのは、電力会社、電事連、保安院が参加している、公の会議です。
つまり、ここで、津波対策をきちんとやるんだ、と指示していたわけです。
これは、国会事故調の中で、出てきた事実です
この時期に、2009年の6月までには、すべての津波対策を完了させる、と決定していました。
こちらは、7月に開催された検察審査会の議決で、明らかになりました。
岩上:
これは、決定的な証拠じゃないですか。
海渡:
証拠は、まだまだありますよ。
▪️握りつぶされた防潮堤計画
2008年6月の時点で、10メートルの地盤の上に、10メートルの防潮堤を立てる計画があった
岩上:
2月29日、福島第一原発事故をめぐり、検察審査会から基礎議決を受けた東京電力の勝俣恒久・元会長、武黒一郎・元副社長、武藤栄・元副社長の3人について、
検察官役の指定弁護士が、業務上過失致死傷の罪で、強制起訴されました。
海渡:
告訴事件では、僕は、この被害者側の代理人をしています。
実は、7月に開催された2回目の検察審議会議決内容が、画期的なものでした。
東京電力は、2007年12月の段階で、
福島沖でも大きな地震と津波が起きる可能性を踏まえ、対策を取らなければならない、という方針を決めていたのです。
津波対策を預かっている部局が、そう決めていたのです。
武藤氏も加わった状態で、決めていました。
翌年の2008年の3月に、シュミュレーションをやって、福島第一に15.7mの津波が来る、という計算結果が出ていました。
これに基づいて、2008年の3月末に、耐震バックチェックの中間報告があり、最終報告までには津波対策をきちんとやります、と説明することになっていました。
証拠として、県に説明するための、QA資料が残っています。
これは、つまり、社の方針です。
2008年の6月、津波対策案がまとまり、土木調査グループが武藤氏に、その案を持っていきます。
案では、10メートルの地盤の上に、10メートルの防潮堤を立てる計画が立てられていました。
しかし、武藤氏はその1か月後に、防潮堤建設をやらない、と決めました。
岩上:
知らなかった、どころではなく、津波対策の計画が実際にあり、それを東電のトップが却下したのですね。
▪️数百億円の費用と地元住民の反発を回避するため
そんな理由で防潮堤は『先送り』されていた!
海渡:
却下した理由まで、議決に書いてあります。
防潮堤建設には、数百億円の費用がかかると。
さらに、防潮堤を建てると、地元住民の反発により、原子炉をストップさせなくてはならない可能性があると。
つまり、高い防潮堤ができれば、津波が来れば原発も危険なのだと、住民が感じるから、というのが理由です。
だからこの問題は『いったん』先送りして、何年も先に、土木学会で調査してもらうということにしました。
土木学会というのは、東電など、電力会社によって固められているものです。
そこに丸投げし、検討させるとしました。
岩上:
国民が主権者なのに、正確な情報を知ることもできない。
無為無策のまま戦争に進んでいくのと、同じ構造に思えてなりません。
海渡:
この決定に、武藤氏、武黒氏が、関わっていたことは明らかになっています。
では、勝俣氏はどうか。
彼は、その上に立っていた天皇のような人でした。
しかし、この人も有罪であるとして、理由も明記されています。
中越沖地震に関する対応会議に、勝俣氏は必ず出席していました。
この会議は御前会議と呼ばれていまして、勝俣氏は欠席した場合も、書類には必ず目を通していました。
数百億円を通すような対策案が、トップのところにいかないはずがありません。
以上のような理由で、今回は強制起訴したというわけです。
岩上:
危険性は認識されていたのですね。
海渡:
今回、(震災時に)最も高い津波は、15mだったと言われています。
防潮堤をつくっておけば、助かっていたということです。
岩上:
数百億を出し惜しんだ結果で、あんな事故が起こったのですね。
海渡:
この事実は…どうしようかな…この話は…話してしまおうかな。
岩上:
話してください!
▪️検察庁も政府事故調査委員会も、知っていた?!
様々な情報が隠ぺいされていた事実は、司法記者クラブで何度話しても、記事にならない!
海渡:
この事実は、検察庁も知ってたはずなんです。
そもそも、審査会が、検察の記録の中から見つけたことなのですから。
そうなると、政府事故調も知っていたはずです。
政府事故調は、東電が15.7mの津波を予測していたことや、2008年の6月、7月に開催された会議の存在も認めています。
ただ、ここで対策をやるか迷って、やらないことに決めました、という物語を設定しています。
耐震バックチェックは、2009年6月に終わらせる予定だったこと、
2007年の12月に、津波対策を取る方針が決まっていたこと、
2008年のQA集の存在、防潮堤の建設計画…、
僕が今話した4つが、隠ぺいされていたようです。
ここから先は推測ですが、2011夏頃の時点で、既に政府事故調と検察庁には、全ての情報が手元にあったのではないかと思います。
しかし、これを全部出したら、大変なことになってしまう。
日本の原子力産業が、崩壊しますから。
岩上:
上層部のボスが一掃されただけでは、すまなかったということでしょうか?
海渡:
すまなかったでしょうね。
やるべきことを何もやっていなかったことが、全て明らかになってしまうのですから。
そもそも、本当は、逮捕しなければならないような事件です。
東電のトップが逮捕されるようなことになれば、原子力産業全体が崩壊するでしょう。
だから、明らかになっている情報の大事なところを抜き取って、提示していたのではないかと思います。
重要なものは、抜かれていた。
絵で言えば、ピントのずれた写真のようなものを、見せられていたわけです。
岩上:
これは、権力犯罪ではないでしょうか。
検察もおかしいですよね。
適正に権力を行使していない、ということじゃないですか。
海渡:
司法記者クラブで、何度も話したのに、記事になっていません。
検察審議会の議決書を報じて欲しいと、僕は言ったのです。
報じたのは、東京新聞特報部くらいです。
強制起訴の報道は、東京新聞もひどいものでしたが。
東電の内部資料が、大量に、株主代表訴訟で明らかになってきています。
僕たちは証拠契約を結んでおり、コピーを見せることはできません。
証拠を引用した、準備資料を出すことができるのですが。
そのなかのひとつ、大事なものをお伝えします。
▪️東電の内部資料
現場には津波対策をやる必要があると、あきらめきらないで粘り、訴えた人もいた
海渡:
この話は、司法記者クラブで何度も話しているんですけどね。
2008年9月10日の資料です。
東電では、同年7月31日に、津波対策をやらないことに決めました。
その1か月後の、耐震バックチェック説明会での議事録に、こんなことが書かれています。
まず、
『津波は機微事項だから回収 議事メモには残さない』と記載されています。
そういうことで配られたメモです。
このメモには、
「予備津波に関する学識経験者の、これまでの見解、および推本の知見を、完全に否定することが難しいことを考慮すると、
現状より大きな津波高を、評価せざるをえないと想定され、津波対策は不可避」と書いてあります。
つまり、武藤氏は、「津波対策を先延ばしにしろ」と言ったわけですが、
現場の担当者は「やる必要がある」と、あきらめきらないで粘り、訴えた人もいたということです。
おそらく、阪井さんという人です。
当時の土木調査グループのヘッドでした。
岩上:
まだ東電にいらっしゃるのでしょうか。
もう既にやめているのなら、全てをぶちまけてほしいですね。
海渡:
この文書は、去年の春ごろ、東電から東京地裁に提出されました。
裁判所が東電に迫ったから、出てきたんです。
東京地裁の商事部で、会社のことばかりやっている保守的なところですが、それでも一生懸命やってくれる裁判所があるんです。
こういう資料が、実はいっぱい存在します。
岩上:
やっぱりこれは、犯罪だったのではないでしょうか。
きちんと対策せず、正しくない動機で、防潮堤の計画を潰してしまった――。
業務上の過失は絶大なものだ、と思います。
海渡:
どこの新聞も、「過失責任には高いハードルがあって、検察審査会のケースは無罪が多い」とか、
まだ、「津波の予見可能性があったかどうか」、というレベルでの報じ方をしています。
しかし、予見が可能だったかというようなレベルではないですよ。
予見してあって、対策を立てさせて、実際に却下したわけだから、何も難しいことはないはずです。
刑事法のまともな専門家がいれば、こんな分かりやすい事件はないと感じるようなものです。
10mの土台に10mの防波堤、という計画があった事実が、隠されていることが大問題なんですよ。
岩上:
どれくらい判決までかかるでしょうか?
海渡:
公判の全整理をやるのに、1年くらいかかると思います。
証人尋問が始まったら、集中審議になって、そこからは早いのではないかと思います。
最終的な結論までに、2年くらいでいくのではないでしょうか。
岩上:
この裁判で裁かれるのは、東電、保安院、そして原子力ムラに取り込まれた検察庁、
そして、先ほどお話しされていたように、政府事故調と検察が、真実を隠ぺいした事件であると。
海渡:
そうです。
非常に画期的な裁判となるでしょう。
(記事構成:原佑介・山本愛穂、文責:岩上安身)
IWJのこうした取材活動は、皆様のご支援により直接支えられています。
ぜひIWJ会員にご登録いただき、今後の安定的な取材をお支え下さい。
新規会員登録
カンパでのご支援
↑以上、転載おわり
・10mの土台に10mの防波堤、という計画があった事実が、隠されていることが大問題。
・予見してあって、対策を立てさせて、実際に却下したわけだから、何も難しいことはない。
・この裁判で裁かれるのは、東電、保安院、そして原子力ムラに取り込まれた検察庁であり、政府事故調と検察が、真実を隠ぺいした事件である。
そうですよね、やはりこれは事件の他の何物でもない。
自民党がどう足掻こうが、原発にしがみつく人間がいようが、原発はもう終わっています。
きちんと対策せず、正しくない動機で、防潮堤の計画を潰してしまった。
その結果、甚大な被害と苦しみと、深刻な放射能汚染を、多くの人々や動物や自然が被り、それらはこれから先、まだまだ続いていく。
業務上の過失は絶大な、正真正銘の事件です。
東電のトップの逮捕は、原子力産業全体の崩壊につながります。
告訴団のみなさん、がんばってください!
わたしも精一杯応援します!