作家・高村薫は言う。
「歳を取るということ。的確に働いていた観察眼が、あるとき働かなくなり、判断を誤る。十分に理解できていたことが理解できなくなり、混乱する。若い頃に比べると、脳のレベルで感情の抑制もきかなくなる。そうしてときに暴走し、周囲の顰蹙を買う。」
「これは歳を重ねてゆく者すべてに当てはまる話である。そのとき人によって道が分かれるとしたら、自分が老いて判断が鈍ったことを認識できているか否か、昔と同じようには出来ないことを分かっているか否かであるが、それこそが老いて一番苦労するところなのは間違いない。」
「人が欲望を抑えることをしなくなった現代社会は、人が上手に歳をとるのが難しい社会である。」
「なかなか尽きるものではない欲望と物理的老いの間で、ひっそり背筋を伸ばしていられる歳の取り方はないものか。」
(歳の取り方 高村薫:岩波書店:図書4月号)
歳の取り方は、生き方と同義である。
輝きながら老いていく。
老いてますます輝いていく。
ずっと人生の求道者。
負けない、泣かない、あきらめない。
老いを自覚することから新たな創造がうまれる。