商業が盛んになって、会社勤めが増えてくると、外の仕事は男、家の仕事は女として、
家の仕事の一切を女性が担うようになったのが専業主婦の時代。
「料理するひと」と「食べるひと」をはっきり区別するようになったのが、男子厨房に入らずの時代です。
料理は女性にとって家事の中心、一大事の仕事でした。
敗戦後の復興を経て、日本国民の栄養改善運動熱が高まり、油を使う料理や肉食が一般化されます。
栄養指導のもと、一般家庭に広まります。
料理は、茶道、華道と並んで必須の花嫁修業でした。こうして国を挙げての栄養改善運動は功を奏して、
喜ぶのですがそれも束の間、それまでになかった生活習慣病、メタボや、アレルギーなどの病因ができ、
多くの人が健康に不安を感じるようになるのです。
私が『一汁一菜でよいという提案』を書いたきっかけは、若い女性、結婚を控えたカップルや、子供を
もった女性たちから、「幸せな家庭を持ちたいけれど、料理ができない、料理した事がない」
「子供を手料理で育てたいと思うけれど、どうすればいいか分からない」という切羽詰まった声を聞いた
からでした。それまで私は彼女たちの苦しみ、悩みを理解していなかったので本当に驚きました。
私は、ごく当たり前に「ご飯を炊いて具沢山の味噌汁を作ればいい」と話したのです。
一汁一菜でまずはオッケー、一汁一菜は手抜きでないと、ごく当たり前にしてきたことを彼女たちに話した
のです。彼女たちみんなが喜んで安心したようでした。一汁一菜は何も新しいことではなく、昔から日本の
生活にあった食事スタイルです。実際に我が家でも忙しい日はそうしていたし、料理屋の3食の食事もすべて
一汁一菜が基本でした。ちゃんこ鍋とは味噌汁のことですから、相撲部屋も一汁一菜が基本です。
世界に誇る日本の懐石料理も、一汁一菜からはじまります。一汁一菜というスタイルを基本にして考え、
日々の暮らしの中で変化させていけばよいのです。
それ以上の料理は、時間があるとき、心に余裕があるとき、お金があるときに、食べたいもの、食べさせ
たいものを作ればいいのです。味噌汁を作るだけなら、10分もしないうちに温かいものが食べられます。
それ以上のことは、やらされるのではなく、自分の意思でやることです。そうすれば料理は楽しみになる、
できるのです。メインディッシュの作り方なんて後回しでいいのです。
◆「文藝春秋」2023年4月号の一部を抜粋し転載しました
家の仕事の一切を女性が担うようになったのが専業主婦の時代。
「料理するひと」と「食べるひと」をはっきり区別するようになったのが、男子厨房に入らずの時代です。
料理は女性にとって家事の中心、一大事の仕事でした。
敗戦後の復興を経て、日本国民の栄養改善運動熱が高まり、油を使う料理や肉食が一般化されます。
栄養指導のもと、一般家庭に広まります。
料理は、茶道、華道と並んで必須の花嫁修業でした。こうして国を挙げての栄養改善運動は功を奏して、
喜ぶのですがそれも束の間、それまでになかった生活習慣病、メタボや、アレルギーなどの病因ができ、
多くの人が健康に不安を感じるようになるのです。
私が『一汁一菜でよいという提案』を書いたきっかけは、若い女性、結婚を控えたカップルや、子供を
もった女性たちから、「幸せな家庭を持ちたいけれど、料理ができない、料理した事がない」
「子供を手料理で育てたいと思うけれど、どうすればいいか分からない」という切羽詰まった声を聞いた
からでした。それまで私は彼女たちの苦しみ、悩みを理解していなかったので本当に驚きました。
私は、ごく当たり前に「ご飯を炊いて具沢山の味噌汁を作ればいい」と話したのです。
一汁一菜でまずはオッケー、一汁一菜は手抜きでないと、ごく当たり前にしてきたことを彼女たちに話した
のです。彼女たちみんなが喜んで安心したようでした。一汁一菜は何も新しいことではなく、昔から日本の
生活にあった食事スタイルです。実際に我が家でも忙しい日はそうしていたし、料理屋の3食の食事もすべて
一汁一菜が基本でした。ちゃんこ鍋とは味噌汁のことですから、相撲部屋も一汁一菜が基本です。
世界に誇る日本の懐石料理も、一汁一菜からはじまります。一汁一菜というスタイルを基本にして考え、
日々の暮らしの中で変化させていけばよいのです。
それ以上の料理は、時間があるとき、心に余裕があるとき、お金があるときに、食べたいもの、食べさせ
たいものを作ればいいのです。味噌汁を作るだけなら、10分もしないうちに温かいものが食べられます。
それ以上のことは、やらされるのではなく、自分の意思でやることです。そうすれば料理は楽しみになる、
できるのです。メインディッシュの作り方なんて後回しでいいのです。
◆「文藝春秋」2023年4月号の一部を抜粋し転載しました