○あわしまマリンパーク特徴
イルカの飼育に自然の海を利用している(静岡県内ではこちらだけの飼育方法)
少人数のスタッフで運営している
規模が小さい
○特徴から
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メリット |
デメリット |
自然の海 |
自然に流れたり入ったりしてくる物で遊べるので楽しみの要素が多く、イルカのストレス軽減になる (プールで飼育されているイルカは楽しみが人間しかない) |
・ゴミ、海藻、タコや魚などエサとして管理しきれない物や誤飲の原因となる物が勝手に入ってくる ・水温コントロールが出来ないので、エサでイルカ自身の皮下脂肪を調節しなければならない |
少人数 スタッフ |
連絡や連携がとりやすい |
スタッフ一人ひとりに掛かる負担が増える |
施設の 規模 |
・手作り感のある温かい展示でお客様の関心を高める ・短時間でも施設全体を楽しむことが出来る |
迫力のある大水槽での展示などは難しい |
○イルカの飼育と訓練
●概要
・イルカ 6頭
・トレーナー 5人
●飼育
・マンツーマンでの飼育だが、万が一担当者が居ない時に体調が悪くなったりしたときのために他のスタッフにも慣れさせるようにしている
・自然の海を網で仕切って飼育
網で仕切りはイルカの相性や成長に合わせて区切られている
オスメスについては、小さいうちしか一緒に入れておくことが出来ない
・夏と冬では海の水温差は7℃もあるので、体温管理が重要
●エサ
・冷凍コンテナを1台丸ごと購入
・旬のもの、仕入れる時にとれたもので、栄養バランス、皮下脂肪を調整
体温管理に重要な要素
研修に伺ったときはサバ、ししゃも、サンマを与えていた
エサ・ご褒美 |
効果 |
備考 |
ししゃも |
強化子としても利用するので、サイズが食べ過ぎを防止でき、適度に空腹を保てる |
卵はカロリーが高くなってしまうのでオスのししゃもしか与えない |
マメアジ |
ししゃもと同様 |
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サンマ |
旬である冬は多めに与えることで皮下脂肪を増やすことが出来る |
冬以外も量を調節してご褒美として与えている |
・今後の展望として仕入れに左右されないエサ作りも研究、試行されている
例))水ゼリーや寒天に犬用ミルクを混ぜた、時期に左右されない栄養補給
※ただし、試行にも金銭的リスクがあるので、なかなか実現まで繋がらないのが現実とのこと
※イルカは味覚よりも食感を感じる方が強いので、イルカの理想の食感づくりも大切
○訓練
●心得
・偶然は消える可能性がある
発情期は特に消える可能性がある
消えたら次の偶然を待たなければならない
しかし、一度憶えた行動は身体のどこかで憶えているもの
・成功体験に捕われすぎないようにする
・イルカが集中できない時以外は成功で訓練を終わらせる
・イルカに対して感情的になってしまったときは反省して成功へ活かす
・ムキにならない
・トレーナーは絶対に落ち着いて行動する
・イルカの気持ちに気付く努力を怠らない
・ちょっとした動きを見逃さない
・とにかく褒めて憶えさせていく
・何をさせたいのかイルカに明確に伝える
伝わると絆や信頼関係が生まれる
イルカにとっての幸せは楽しいことがたくさんであることと繁殖が出来る環境
※繁殖についてイルカはまだ技術が確立されていない
●訓練
・トレーニングは決まった場所でショーの後行う
・訓練時間はイルカの調子に合わせて考える
最初の頃は集中力が15分~20分程度
楽しく夢中に出来るよう訓練を工夫すればもっと長い時間集中させられる
一つの動作について、40分くらいあればイルカは覚えることが出来る
飽きたら訓練はやめる
・1ヶ月目標を設定し、訓練の行程を考える
(シェーピング:階段トレーニング計画)達成したら次の段階に進んで行く
・陸に顔を出しているときも水中に居るときも、基本的に手のサイン
手のサインは行動がしっかり身に付いたら覚えさせる
そうしないと曖昧なまま記憶してしまう
●訓練の段階
①人の前に止まり食べることから始める
②目を合わせさせる・上を見るのはイルカにとって不自然な動きなので慣らす
・目が合うことはトレーナーへの集中、水面から顔を出すときの高さを出すことにも繋がる
③口を閉じさせる ・口が開いたままだと噛む行動に繋がるので重要
④身体をさわる ・健康管理をする上で重要な行為
⑤道具を使っていく・ターゲットと呼ばれるあらゆる動作を憶えさせる基本的な道具や芸に使う道具
●フットタッチ
・足をターゲットにする
・パターンを変えて新鮮なトレーニングを組み合わせるための手段
パターンを変えないと、状況だけで判断して勝手な行動が出てしまう
・タッチは少しでも口を開けていたら噛むに繋がるので褒めない
●発情期の訓練
・食欲より性欲が高まり、訓練やショーに集中できなくなる
→魚だけの繋がりにせず、トレーナーがきたら楽しいことがあると思わせる努力が必要
●距離における訓練の工夫
・近場で指示を出すときの強化子は主にエサを用いる
ホイッスルも利用して音とご褒美を結びつける
・水中など、距離が出るときは金属、フリッカーでホイッスルの代わりになる
ものも教える
○トレーナーに必要な要素
・気が利くこと
何を考えているのか、動物同士の関係に気付けるか、どんな気分か、考えて臨機応変に追求していく力が必要
・柔軟に可能性を考えられる力
・見逃さない力
無理矢理やろうとしない
攻撃行動を出させないようにする
行動を決めつけない 思い込みは危険
・先輩の動きを見て憶える力
・骨格を調べ動物の動きの限界を知っていること
・とにかく体験が無いと生きた知識にならない
・常に試行→改作→追求をしていける力
○まとめ
・訓練は人のためにあるだけではなく、訓練を受ける動物のためにも繫がるということを改めて感じた。
・白井先生は、私がものすごく小さく起こした行動や発言にも気付いて下さり、そのような気付く力が、動物の変化にも気付く力に必要なのだろうと感じた。
・協会の訓練とあわしまマリンパークの訓練には無理をさせず楽しく訓練をする部分や、音とご褒美を絡めていく部分など、共通する部分がたくさんあることに驚いた。
・協会での日常業務でも感じることではあったが、どの動物に対しても、ストレスの少ない環境を作るためには、エサの管理や予め防止できる危険の回避など、人間側の大きな努力が必要だということが分かった。
・今回お話し頂いたトレーナーに必要な要素は、私たちにも必要な要素であると感じるので、頭に置いて行動していきたい。
日本聴導犬・介助犬訓練士学院
第5期生 T・N