ビスクドール・雛人形店・オーディオ販売 佐久市 ヤナギダ店長ブログ

ビスクドール64体他お節句雛人形をフランスへ輸出128年、軽井沢方面がお店の場所。

「はさみのあそび」ブリュー・ミュージアム 軽井沢/佐久:ヤナギダ店長コラム

2016年05月29日 04時45分38秒 | owarai
【コラム:】
「はさみのあそび」
豊田章一郎氏(トヨタ)が、以前
新聞で、対談されていた。

戦後の教育では、画一的管理
者ばかりを養成してきたので、
職人がいなくなった。

それが今日の企業の混乱を招
いたと、大ざっぱにいえばそ
うことであった。

私が、祖父の関係でつきあって
いた工芸の世界でも、同じこと
が起こっていた。

大企業とは比較にならぬほど
ささやかな手工芸であるが、
芸術家やデザイナーは山ほど
いても、

地味な職人は少なくなった。

たとえば花鋏一つ作るのでも、
わざわざ京都まで行かねば気
に入ったものは少ない。

そして、行けば必ず貴重な体験
を得て帰ってくる。

花鋏は、日本刀と同じようには
がねを用いるため、特殊な技術
を要する。

私の鋏屋さんは、土の上に蓆
(むしろ)を敷き、昔ながら
のふいごを使っているが、
場所をとらないのでその方
が簡単で、仕事がしやすいと
いう。

そうして出来上がった二枚の
刃を真中でとめる。

この止め金のことを「遊び」と
いい、花鋏では一番重要な部分
だと教えてくれた。

花を生ける時は、片手に花を
持ち、もう一方の手で鋏を使
うが、「遊び」の部分がきつす
ぎると鋏がひらきにくく、

ゆるすぎると巧く噛み合わ
ない。

つまり、その止め金はいつも
真ん中でふらふらしていない
と、自由に動かないのである。

ゾーリンゲンでもまったく同
じ形の花鋏を作っているが、
似て非なるもので、

日本のそれは手をひらくと鉄
の重さで自然についてくるし、
手を握るとしまる(切れる)。

重さもバランス、自分の手の
延長のような感じがして、ただ
もてあそんでいるだけでも気持
よい。

ある時錆びたので、知合いの
研屋さんに持って行くと、

この花鋏さけは研ぐことはで
きない、「遊び」のところをは
ずすと元に戻らないからだとい
った。

鋏を作った職人も断ることの
できる職人も、両方とも偉い
と私は思った。

何でもないようなことだが、
「遊び」が完全にきる人は、
一人か二人しかいない。



野沢93番地十二町
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~柳田二助商店~
℡0267-62-0220

『創業121年』