あれは、わたしがまだ二十歳(はたち)
の女の子だった頃。
初めてのキス、初めてのデート、シャ
ボン玉のようにふわふわ飛んで、空中
でばちんと弾ける、そんな片思いの
恋をいくつか経たあと、
わたしはまるで巻き込まれるように、
苦しい恋に落ちた。
それは、手探りで進むしかない
真っ暗な闇の谷底に、真っ逆さまに
堕ちてゆくような恋だった。
どうしようもなかった。
好きで好きでたまらなくて、四六
時中会いたいくて、いつも一緒に
いたいと追い求めた。彼のそばに
いない時の自分は、まるで不完全
な人間のような気がしていた。
息もできないくらいに、身動きも
できないくらいに、焦がれていた。
こんなに好きなのに、こんなにも
愛しているのに、こんなに不安な
のは、なぜ?
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