恋っていうものは暖炉の
中で燃えている火のような
もの、時々かきたててやら
ないといつのまにか消えて
しまう。
だからこそ、約束の時間に
ぴったりと現れちゃダメ、
いかにも嬉々として見える
から。
三十分ぐらい遅れてちょうど
よい。
いちばん大事なことは、あな
た自身がステキであること。
すぐに他の女とすげ替えが
できないようないい女、
絶対に失いたくないような
魅力的な女であることが
先決。
さて、こうした手練手管を
全部身につけて恋に挑んだ
とする。多分、相手の男は
こう言う。
「君、ひとつ訊いてもいい?
ほんとうに僕のこと、
愛しているのかい?」
忘れな草の水色を滲(にじ)
ませた、夕暮れ前の空。
ときどき、急に何かを思いだ
したように、吹いてくる突風。
ここは成田空港の出発ロビー、
ごーっと唸るジェットエンジ
ン音。
日常から切り離された、どこ
かよそよそしい、緊張を孕(
はら)んだ空気に包まれて、
わたしたちはただ、寄り添っ
ていた。あのひともわたしも、
言葉を失っていた。
五分前に会えた、でも五分後
に迫っている、別れを前にし
て。
「驚かせてごめんなさい。で
もどうしても会いたくなって」
「俺も。もう、どれだけ会いた
かったかというと」
言葉はそこで途切れて、長い両
腕を持てあますようにしながら、
ぎこちなく、それでいて、まる
で電流のように容赦なく、
あのひとは、わたしの躰を抱き
しめてくれた。男の腕だと思っ
た。欲望を感じた。わたしの
欲望だ。心臓が、早鐘を打ち
鳴らしていた。
あのひとに、聞こえてしまうの
ではないかと思えるほど、好き、
好き、好きと。恥ずかしいくら
いに。でもその時、わたしの耳
はちょうどあのひとの心臓真上
にあった。
だから、聞こえた。あのひとの
胸の鼓動。それはわたしの鼓動
よりも何倍も烈しく、波打って
いた。
それから、キスがやってくる。
ギュッと引き戻される
気持ち。
また、あなたを探す感覚。
でも、もう長く続かない
ことを知っていて。
私の心変わりは完璧だっ
たので・・・。
そう、順番に、広い畑を
几帳面に耕すように。
端から端まで、キレイに
時間をかけて、
心変わりをしていったのよ。
YouTube
駅/竹内まりや
https://www.youtube.com/watch?v=X1lzteVuuYc
私の孤独は
光にとけるオリーブの木
のよう
さんざめく緑の中
私の思いは
このようなことを語り
あえる
だれかを求めて川を下る
ポートには草花が
青空からこぼれ落ちて
きたようにあふれ
孤独はつめたくすみきって
水晶のようにすきとおる
YouTube
中森明菜 セカンド・ラブ/スローモーション
https://www.youtube.com/watch?v=XTo4PwdnSkU
強い人間ほど、小さな
ことにくよくよするので
す。
「くよくよする」のでなく
「くよくよできる」のです。
表に出さないだけ。
小さいことにくよくよでき
ない人でないと、小さな
ことにくよくよしている人
の気持ちはわかりません。
人の痛みは分かりません。