両手で顔を覆ったまま、あのひと
に呼びかけた。
東京にいるあのひとに?いいえ、
わたしを取り囲むこの暗闇と、肩
や膝に舞い降りてくる雪の、その
結晶の、すべての粒子の中に
棲んでいる、
今、ここにいるあのひとに。
ずっと、好きだった。
今までずっと、好きだった。
あなたに別の人との暮らしがあり、
あなたに別の人生があったとし
ても、わたしは、あなたがくれた
言葉を、想いを、決して忘れは
しない。
わたしたちは、ここではないど
こかで、別の惑星で、深くつな
がり、愛し合っていたのだと。
そんなおとぎ話を信じていたい。
今はそう信じさせて。
好きでいさせて。
お願いだから。
これからも、ずっと。