はらはらとこぼれ落ちてくるのは
あの年の記憶だけだ。
今はもう、痛みは感じない。そこ
にはひと粒の涙も、ひとかけらの
悲しみ宿っていない。あのひとの
記憶は愛よりも優しく、水よりも
透明な結晶となって、わたしの心
の海に沈んでいる。
この十二年のあいだに、わたしは
いくつかの恋をした。
ただ、どんなに深い幸せを感じ、
それに酔い痴れている時でも、
わたしの躰の中に一ヶ所だけ、
ぴたりと扉の閉じられた、小
部屋のような領域があった。
扉を無理矢理こじあけると、
そこには光も酸素もなく、
植物も動物も死に絶えた、
凍てついた土地がだけが
広がっている。
だからうっかりドアをあけた
人たちは、酸素と息苦しさに
身を縮め、わたしから去って
いく。離婚の本当の原因は、
もしかしたらわたしの方に
あったのかもしれない。
こんな言い方が許されるな
らば、わたしは誰かに躰を
赦(ゆる)しても、心を救
したことはなかった。
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Sarah Vaughan ft The Bob James Trio - The Shadow Of Your Smile (Live from Sweden) 1967
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あなたは燃ゆる火の鳥で
あたしはついてく恋の鳥
夜露のふかき横浜の
密航船の船底で
たしかめあった愛などは
忘れたように群衆の
中にまぎれてゆくあなた
あなたは燃ゆる火の鳥で
あたしはついてく恋の鳥
ともに入った監獄も
つめたい壁にへだてられ
信じるだけの月あかり
美は乱調にありながら
みだれ過ぎる黒髪を
せめてあたしも火の鳥と
なって翼を燃やしたい
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DREAMS COME TRUE - LAT.43°N ~forty-three-degrees north latitude~ (from THE DREAM QUEST ...
https://www.youtube.com/watch?v=NPwYxAwH6JQ
人の「記憶のキーワード」に
香りがあります。
香りは、暮らしのあらゆるシーン
に存在します。
花屋さんに足を踏み入れ、馥郁たる
香りにつつまれたとたん、気分が
たちまち和らぐということがある
でしょう。
部屋に小さな花を飾るだけでも、
居心地よい場所になります。
秋の木の葉の香りは、たきたての
ごはんの香り、雨上がりの道の
香り。暮らしに漂うさまざまな
香りは、人を豊かにしてくれる
でしょう。
香水の都はフランス“グラース”
映画祭で有名なカンヌから20キロ
内陸に入った山沿いに、その街は
あります。
街に入ったとたん、どこかえあとも
なく良い香りがします。フランスの
男の子は小学生の頃からブレンドを
覚えすきな子にプレゼントをするのは
お国柄でしょうか。
人生でも、香りとなるものを、おろそ
かにしてはなりません。
生きる目的、仕事や夢、愛し、信じ、
かかわる相手といったものが人生
の味や栄養であるならば、趣味や
学びなどは、暮らしの香り=
アロマではないでしょうか。
大切なものは、目に見えないと
星の王子さまは言いましたが、香も
また、目に見えない宝物だともいます。
〇マスクにアロマオイルを数滴垂ら
すと、リラックスと乾燥対策、風邪
などの予防になります。
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Keith Jarrett Trio - I Fall In Love Too Easily
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生きていることはそれだけで
素晴らしい。
人はでも、そのことを普段、
意識しないように生きている。
あるいは、知らないで生きて
いる。
知らないで生きている人も、
一緒に
ごたまぜに この世界にいる。
奇跡の中に私たちはいるのだ。
そのことを、たまには思い出したい。
そのひとカケラでも私はだれかに
手渡したくて、その素晴らしさの
中にいるという奇跡を
一瞬でも感じさせたくて、私は
今日もまだ、見ぬあなたに
会いたくて生きている。
割れた鏡のなか
たたみの青がふるえる
何をそんなに視てるだい
髪を切ったんだね
まるで男の子だよ
外は乱れ髪のような雨な
のに
窓を埋める影から
きみの瞳がひかる
何をそんなににらむんだい
髪をきったんだね
ボーイッシュショート、
外は乱れ髪のような雨な
のに
ごらん
きみが切った髪が降る
ごらん
きみの髪が降る
まるでかわいい男の子だよ
外は乱れ髪のような雨な
のに
私は人間の不幸は只一つのこと
から起こるものだということを
知った。
それは部屋の中で休息できない
ことである。
これはフランソワ・トリュフォー
の映画の中で、一人の文芸評論家
がする公演の一節。
私はこのパスカルのことばが好き
だが、部屋は文字通りに部屋と
考えたい。
そして私自身は部屋の外、つまり
群衆の雑踏や競馬場や草原に休息
を見出し、結構一息ついていると
いうことを、このセリフへのクリ
テーク(批評)にしたいと思う。
朝がカーテンの隙間から
洩れ
横たわるきみを優しく包む
白い壁に光は遊び なんて
眠りはきみを綺麗にするんだ
今ぼくのなかを朝が通りすぎる
顔をそむけひとりで生きて来た
何も見なかった何も聞かなかっ
たそんな今までが
昔のような気がする
もう起きてるの眠そうな声
眼を薄くあけて微笑みかける
何も言わずに息を吸いこむ
ぼくは暖かい
窓の外は秋
ゴールインするための恋じゃ
なく
友達に自慢するための恋じゃ
なく
昔の恋をなぞるような恋じゃ
なく
どっちかが不幸になる恋じゃ
なく
黙ったまま誰かを想う恋じゃ
なく
たぶん、一人より二人のほうが、
人生は楽しいから。
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Marcos Valle, Stacey Kent - Amando Demais (Video Ao Vivo)
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