ビスクドール・雛人形店・オーディオ販売 佐久市 ヤナギダ店長ブログ

ビスクドール64体他お節句雛人形をフランスへ輸出128年、軽井沢方面がお店の場所。

-ショート・ショート小説ー Ti Amo

2021年05月26日 20時00分20秒 | owarai

あなたは注文する。バーテンダ 
ーの背中に向かって、ため息を 
つく。 

彼はまだやって来ない。どこか 
らも、姿を見せない。エレベー 
ターのと扉はさっきから何度 
も、開いたり、閉まったりして 
いる。が、彼は乗っていない。 

あなたは気づく。やっとのこと 
で、悟る。 

今夜、彼は来ないかもしれない。 
いや、来ない。来ないに決まっ 
ている。きょうの約束は、あの 
約束だったのだ。 

あの約束――― 

いつだったのか、このバーの 
ちょうど真下にあるはずのベッ 
トの上で、交わした指切り。 

「いつものように待ち合わせ 
をして、仮にどちらかが現れ 
なかったら、それを『別れ』 
のメッセージにしよう。 

きれいさっぱり、あと腐れな 
く、別れよう」 

ついさっき見た、気持ちのいい 
夢が一瞬にして、悪夢にすり替 
わる。 

夢のなかで、誰かの体を抱き 
しめているのは夫だ。夫は 
恋人の耳に囁いている。 

「妻にきみのことを打ち明けた。 
何もかも話した。別れるつもり 
だ。俺にはもう、きみしかいな 
い・・・・・」 

まぶたをこすっても、こすって 
も、あなたの目にはすべてが 
二重に映っている。 

YouTube 
Ms.OOJA - Ti Amo 
https://www.youtube.com/watch?v=AlXvPoCVtVA 


涙で、まくらが濡れていた・・・。  校正後

2021年05月26日 13時02分45秒 | owarai

その商人は時を売っていた。

「いらっしゃいませ。時は

いかがでしょうか。

1分から承ります」

ある男は商人から試しに1時間買った。

1時間買った男は、

それを読書の時間に使った。

ある女は1週間買った。

1週間買った女は、

それを海外旅行に使った。

「10年欲しいのだかね」

男は商人に聞いた。

「お客様、10年だと、だいぶ

値がはりますが」

「かまわん、10年ぶんよこせ」

10年かった男は、

それを病気の妻に譲った。

 

YouTube

Killing Me Softly with His Song - Cheryl Bentyne

 

https://www.youtube.com/watch?v=fUKfGdyRUcc

 


大海に生きる回遊魚のような人   >『時は詩人』

2021年05月26日 12時07分27秒 | owarai

時は詩人である。皆さまは、 
何を言っているのだろうと、と 
首を傾げられるかもしれない。 

しかし、詩人とは言葉の網で時 
を生け捕りにする魚師みたいな 
ものなので、多少の脈絡のなさは 
お許し頂きたい。 

そう、魚師である詩人は、文字を 
打ち込むキーボードのキーに、 
“今”という魚を、ピカピカ光る 
鮮魚のまま封じ込めることにやっ 
きとなる。 

銀色の刃物のような尾びれや背鰭 
と格闘しながら、命懸けにもなる。 

また深い海に潜り“過去”という 
名の美しい巻貝を盗むのに余地が 
ない。 

未来は波間に漂う深緑色の藻だ。 
それを網で掬い上げ、先取りする 
ことに懸命になる。 

大海に生きる回遊魚のような人 
の一生を見つめて、その生き様 
を書き記す。 

恋の歌を書いても、人生の喜び 
や悲しみを綴ったとしても、そ 
れは時を描くことに他ならない。 

一瞬たりとも留まることのない 
のも、消え去り、流れ去ってゆ 
くものを追いかける作業。 

今日もどこかで、時の狭間に迷い 
込んだ詩人が、難破船で独り言 
を呟いている。 

所詮、勝目はないのだ。詩人が 
どんなに頑張ったて、時の方が 
ずっとずっと詩人なのだから。


変わるもの 変わらないこと

2021年05月26日 08時25分55秒 | owarai

21世紀生まれが、高校生に 
なって。 
親子ととに平成生まれが、 
増えていく。 
新しい時代、新しい世代が、 
やってくる。 

ちょっとまえの話、のつもり 
で話しても。 
それって、前世紀、昭和時代 
の話しですよね。 
なんて言われそうだ。気をつけ 
よう。 

いろいろなことが、変わって 
いくだろう。 
人口知能とか、クルマの自動運転 
とか。 

住宅の設備や機能も、新しく 
なっていく。 
それでも、窓明かりが、LED 
に変わっても。 

そうだ、前世紀でも、今世紀でも。 
家路を急ぐ、ひとの気持は変わら 
ない。 
変わったりするだろうか、人間の 
幸せが。 


「遠 恋」真夜中の雨音 ―Ⅳ―

2021年05月26日 08時24分20秒 | owarai

返事は届かなんだ。 
金曜日にも短いメールを送った。 

今までなら、最初のメールをあの 
ひとが読んだ段階で、すぐに電話 
がかかってくるはずだった。 

けれども、電話は鳴らなかった。 
一週間のあいだに出した四通の 
メールに対する、あのひとの返事 
は沈黙だった。 
もしかしたら、小旅行か何かで、 
家を留守にしているのかと思った。 

日曜の夜、「戻ったら、メールか電 
話を下さい。何度も催促してごめん 
なさい」と書いて送り、その週はた 
だ、あのひとからの連絡を待った。 
その次の週を待った。 

連絡が途絶えて一ヶ月後、電話をか 
けたことはあった。 

あのひとは電話回線をインターネ 
ットにつないでいるので、話し中 
のことが多かったけれど、そんな 
時には、一階に住んでいる大家さ 
んの留守番電話に、メッセージを 
残しておけばよかった。そうすれ 
ば一両日中には必ず、あのひとか 
らの電話がかかってきた。 

受話器を取り上げて記憶している 
番号を押した。今、ニューヨーク 
は、朝の六時半。それは、あのひ 
とが部屋にいる確率が最も高い時 
刻だった。 

わたしたちはこれまで、そ 
の貴重な僅かな時間帯を使って、 
辛うじてつながってきたのだ。 

やっぱり旅行中だったのか、少し 
だけ、気持ちが落ち着いた。 

わたしは留守番電話に向かって、 
話し始めた。ふたりのあいだに 
横たわっている果てしない距離 
と、ふたりを朝と夜に切りわけ 
ている時差の壁に向かって。 

できるだけ爽やかに、穏やかに、 
何気ない風を装って。 

「もしもし、快晴。こんにちは、 
詩音です。メール、何度か送った 
んだけど、ずっとお返事がないの 
で・・・・・きっとどこかに、旅 
行中なんだよね。実はわたしの方 
にも、あれこれいろいろあって、 
相談したいこともいろいろあり 
ます。とりあえず、このメッセ 
ージを聞いたら、お電話かメール、 
下さいますか。待ってます」 

受話器を置くと同時に、それまで 
わたしたちを結びつけていた、細 
く透明な蜘蛛の糸が、ぷつん、と 
切れてしまったような気がした。 

窓の外は、篠突く雨だった。 
許すことを知らない、優しくない 
雨だ。強風に煽(あお)られ、斜め 
に降っている。まるで地上に突き 
刺さる、銀色の無数の針のように。 

あなたに、尋ねたいことがある。 
あなたに、話したいことがある。 
もうこれ以上、待てない。 
もうこれ以上、わたしを待たせな 
いで。 

お願い、電話をかけて。 
お願い、声を聞かせて。 


YouTube 
Eva Cassidy - autumn leaves (cover by Angelika Gil) (Studio M Opole) 

https://www.youtube.com/watch?v=BhxxvEBYNg0