妄想満月
妄想万華鏡
妄想まつげ
つきまとう二重の風景は
二重の意味を与えられ
もがき続けた螺旋の渦は
押さえられない猛毒の牙が
密かに待ち受けている
叫びは静かな幕を開ける
妄想が忍び入り
幻想が散り始め
幻が一人勝手に歩き出す
雨と桜と満月がそこに
彩りを添える
あなたのおかげで
夜がこわくてねむれない
あなたのおかげで
笑顔もうまくつくれない
あなたのおかげで
ままごともできなくて
あなたのおかげで
僕は凍えて寂しくて
あなたのおかげで
毎日探している
あなたのおかげで
誰にも触れられない
あなたのおかげで
胸の奥をうずかせつづけ
あなたのおかげで
言葉を失くしてしまう
あなたのおかげで
僕は全てを見失う
愛する人がいないこの世界に
何の意味があるというの
想いのつづりや
幻想の抱き、泪の描きなんて
悲恋、悲劇にはなっても
内に潜む虚しさやメランコリーを埋め尽くす
高くそびえた塀の向こう側は
明るい空さえ覆い隠す歪な曲がりとなり
太陽の憧れは日に日に増していく
いつか来るであろう憎しみの連鎖のために
憎しみはやがて悲しみを生むのに
悲観は他者に喜劇を見せる
場合により他者はそれを愛と呼び
時に他者は憐れとも変わり者とも呼ぶ
遠吠えが胸の内から響いてくる
止められない一方の傍観者は触る
魂の分裂は時間を狂わせ
一つは現世 一つは幻想 一つは消失と
幾重にも散らばり鳥をつくる
鳥は餌を求めるため視界から消え去り
静寂の音が世界を裸にする
数珠のよう
伊勢物語の
わたくしと
季節を織り込み
ほろほろ葉おちる
妖怪が
突飛にいでて
かけっこで
富くじを買う
物欲にした