なんとなく
どうしようもなく
潮と波
光のダンス
海を見に行く
「男」
柳美里 著
物語は柳美里がポルノ小説を書いてみないかと
副編集長に言われたことからはじまる。
あいだに挟まるポルノ小説ふうは単調だが、
からだの部分を語るのはポルノグラフィはみせる。
ひとは生きもの。
生きものであることからはじまる。
言葉を持ったことからはじまる。
目、耳、爪、尻、唇、肩、腕、指、髪、
頬、歯、ペニス、乳首、髭、脚、手、声、背中。
なににふれているだろうか。
なににふれただろうか。
男がいて、女がいて、男はいる、女がいる。
コロナ。
この世界でやさしさを持っていられるだろうか。
やさしさとはなんだろうか。
夢はやさしくなりたい。
ある本のことばにあった。
明らかになにかがこころに兆している。
やさしさがないからそう思うのだろうか。
ねがわくば、本心を花びらにいだかれ。
枯れ葉が
気付かない間に
さりげなく
横切ったのものは
光の粒子
「水辺のゆりかご」
柳美里 著
あとがきにあるように、
エッセイであり小説であり自伝であり
そして物語である。
在日韓国人として生まれたことからことから
はじまり、
個と集団、親との軋轢。
不幸は罪を生む。
罪はやがて自身のすべてを満たし
死を望む。
視るものすべてを。
自意識過剰の檻のなかをこぼすのは
感情の坩堝。
涙はどうしてあるのだろう。