渦潮を
見すぎていると
呑み込まれ
鼓膜をふさぐ
狂う恋しさ
「かたちだけの愛」
平野啓一郎 著
主人公相良郁哉、あいらいくや。
どうしてもさがらと読んでしまう。
うーん。
出合った言葉を変えるのはむつかしい。
相良はデザイナー。
事故を目撃したところからはじまる。
女性の脚が車の下敷きになっていた。
女性は脚を切断することになる。
その女性の義足を作ることから
ふたりの関係性が育っていく。
育っていくことは育んでいくこと。
育む過程は巡る感情がうずまく。
怒涛の展開。
こんな言葉があったことを思いだす。
食べ物に好き嫌いがあるように、
人同士でもおなじようにどうしても嫌いな人がいて、
どうしても好きな人がいる。
時間を費やすということは果実である。
法外な時間をひとは想像する。
印象的な文章。
いつも鏡で見ていた自分
今日は違って見える
左右がアンバランスの不恰好
何を失ってしまったのだろう
毎日携えている鏡の中の顔は
切り崩されたステンドグラス
それでも光で色が映える
歪なもの
この顔は
どうせ誰にも愛されない
私は毒を塗る
頬に眉に鼻に唇に
舌に残る微かな色香は
最後に余った支え
別れの言葉を鏡におくる
思い出せる最高の
過去の私に毒の唇を交わして
幻に沈んでいく
私が私を望むために
清らかすぎる毒を飲む
桜に何を想い描く
花びらは鮮やかに咲き
恍惚を与えてくれる
幻想の入口
短くおえる
散っていく艶やかさ
色っぽいなで肩は
時空の針を少しだけずらし
あなたの姿が色をつけて
ソコニアル
唇は
万有引力の法則でなりたっている
全ての物事、宇宙の有形
そして唇
引き合うものは互いを選び
結び
二つの位置は互い合わせ
遠くで見るハートの形態
万有引力の引き合う力
いつでもあなたに引かれ続けるのは
赤の魅惑のせい
青の温度と二つの灯りをは合わさり
再会する季節をぬらす
唇は万有引力によって
導かれていく