月の鳴く
そんな夜に
モモはいた
やすらかにきっと
眠りにつける
手をつこうと
した先に
なにもなく
運命のいたずらか
恋くすね
「停電の夜に」
ジュンパ・ラヒリ 著
小川高義 訳
9つの短編集。
インドの人々とアメリカ。
物語は静かなかなしさと
ほんのひとときの気付き。
その国のアイデンティティと個の存在と、
男女の季節と、縛られた自由。
訳された言葉は独特の言葉、文章になり、
それはニュアンスのまた違う日本語となる。
あらためておもう。
ガラクタの中からつくられた
つぎはぎだらけのデクノボー
コンプレックスの塊の
アイアイ傘を一人でまわす
穴だらけの傘と
穴だらけの体と
けっかんが浮きでた脳内
左右される感情の浮き沈みに
呼吸をするのもやっとのほど
顔はみるみる木目調
腕はどんどんペットボトル
足はひょろりとかかしどまり
胸は皿で腹はなべ
お尻はコーヒーカップで腰は電話機
おかまいなしの筆さばきに
妙な感覚が目を覚ます
何か足りない足りないと
あわててさがすがわからない
指をくわえて見比べる
うめられない壁は仮面の告白
あれは初恋
欠陥は僕のここ
爪を噛んでうらやましがる
飛びたい 飛びたい
紙飛行機にのってみる
嘘で固めた翼をつける
空をおちていくたび
ぽろぽろと止め具がとれる
欠陥品の人形
花の息吹でとられていく
肌のひだにふれられて
亜鉛の空気のひらひとに
背中がうずくあいあいがさ
爪は減るマニキュアの
性が土へうもれていく