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太陽舎 パート2
あいからわず、私はまだ川原の大工の手伝いで大迫にいたときのこと
台所の工事がおわるころ、今度はその奥の部屋の工事もして欲しいと依頼を受けて、作業しはじめていたころのこと
施主の京子さんが、現場に来て、川原と相談しはじめた
そして、目の前にある、奥の部屋に続く入り口の柱があって、このままでは、入り口がせまくなりそうだったので、この柱は削ってほしいと、京子さんが言った
私はドキッとした
川原と目があって、お互い言いたいことは飲み込んだ
施主さんの意向をうけて、二人でまた台所の工事をしていた
川原は、削らないといけない柱のところで、考え込んでいたように見える
きっと、奥に続く部屋の構想でもしているのかな?そう思い、川原のことは気にしないで、自分に課されていた仕事をしていた
なぜなら、その頃にはドライバーを持たされ、得意になって新米大工みたいに仕事をしていたからだ
京子夫妻はでかけたようだった
ふと、削るように京子さんに言われていた柱と、川原の間を、たまたま通った時、
バン!!!
と、
何かがいきなり入ってきた
そして、すぐにその場に倒れこんだ
おーっ!!と、嗚咽して大声で泣きはじめた
心の中で葛藤している気持ちが、嗚咽になる
なんで、けずらなければいけないのだ!
今まで、俺はこの姿で、ずうっと、家をささえてきたんだ
この姿でずうっと、ささえてきたのだ!なのに、なんで、けずられなければいけないんだ
一瞬にして、柱の想いが感じ取られ、嗚咽は治らない
悲しさもあるが、泣くのを止めたい気持ちもある
なのに、深い悲しみが、治らない
川原はまだ、柱とにらめっこしている
私に構う暇はないようだ
ならば仕方ない
私は柱に伝えた
ここに、ずうっと、住むことになる夫婦はね、とっても人がいいんだよ
この家を愛してくれる人たちなんだよ
いっとき我慢してくれたら、そのあとは絶対に、家を大事にして、住んでくれる人たちだよ
そう訴えた
そうしたら、すうーっと、それは抜けた
はーっ。と言って私は大きく息を吐くと、また、得意になって、大工仕事を始めた
嗚咽したのを、施主さんたちに、知られなくてよかったな、これは、誰にも言えないな
なーんて考えながら仕事をしはじめた
気づいたら、川原が、柱を削り始めた
悩んでいたようだが、やっと解決したようだ
川原は、どうやら、けずられたくない柱と攻防をつづけていたらしいのだが、私が説得?したものだから、やっと、川原のする仕事を柱が受け入れてくれたようで、抵抗なく柱を削ったようだ
どうやら、私は今日は大きな仕事をしたらしい
きっと、川原もそう思ってくれているに違いない
と、
私は思っていたから、帰りの軽トラで帰るときも、何も言わないで帰宅した
あとで知ったのだが、私のこの、一連の一仕事を、川原は、全く気に留めていなかったらしい
え?
あんなに、大声で泣いていたのも気づかない??
どうやら私は空気らしい
柱が言うことをきいてくれないんだよなー
と、腕組みして、手をこまねいていた川原を救ったのは、眼中になかった私のおかげだと思うんだ
救われたのは柱かな
姿は見えていないけど、影になって今も太陽舎をささえている柱
太陽舎という家
改築を許し受け入れてくれたから
今では住人である京子夫妻だけでなく、お客さんまでが、大好きになる太陽舎という建物になっている
太陽舎に向かうとき、太陽舎カンバンのある橋を渡り、さらに、庭に入って行くための、小さな橋を渡るとき、
そこは異次元空間だ
岩手に生まれたイヤシロチ
土地を救ってくれたのは京子夫妻
整えてるのは京子夫妻
いつも幸せでいてくれて
ありがとう
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