セレンディピティ日記

読んでいる本、見たドラマなどからちょっと脱線して思いついたことを記録します。

オリンピックと消費税増税

2013-09-11 20:31:21 | 社会経済

研究して書きたいテーマはいくつもあるが常に興味が拡散する事もありなかなか筆が取れない。これではいつまでたってもブログが書き込めないのでとにかくつれづれなるがままに旬のテーマについて思うことを書こう。

最近の話題は2020年の東京オリンピックだね。新聞なんかでは経済効果を期待する論調がある。アスリート以外の人にはそちらの方の関心が深いかもしれない。でもさあ今この時期にオリンピックの経済効果を期待するのは正しいことかな。アベノミクス支持者の人はデフレ脱却のこの時期こそオリンピックによる需要喚起が必要と言う。でも今は東日本大震災の復旧と過去の公共事業の老朽化による補修の喫緊の必要性に加え防災目的の国土強靭化も叫ばれていて建設土建業については人手不足でさえある。つまり2020年までは建設業は過度に忙しいが2020年をすぎる頃にはバタリと需要かなくなり建設恐慌になりかねない。極端な建設労働者不足はオリンピックに間に合わすためにやむなく多量の外国人労働者を導入することになるかもしれない。そうなると2020年に多量の外国人失業者が市中に放たれ新たな社会問題になりかねない。

インターネットの「アゴラ」で反リフレ派の小幡績氏がオリンピックに反対の記事を書いているが僕はまだ読んでいない。だから上記の考えは僕の自然発生的なもの。後で小幡氏と比較してみよう。

ところでオリンピック以外の今の話題は消費税増税だね。アベノミクス支持者にも意見の分裂があるみたいだ。つまり今消費税増税すると国民の購買力を奪うからデフレ脱却の腰が折れるから避けるべきだと言う意見と、今消費税増税しないと日本は財政再建をする気がないというメッセージを世界に放つことになり国債が買われなくなり国債価格が暴落して金利があがり日本政府の債務が雪だまり式に増え日本は財政破綻すると言うもの。

確か何日か前の日経新聞「経済教室」で伊藤元重氏が「どちらも危険があるならリカバリーできない方に対処しなければならないので消費税は増税して国債暴落に備えなければならない。消費税増税で景気が悪くなるというなら、持論の金融緩和で対処すればよい」との趣旨のことを書いていた。伊藤氏は皮肉のつもりではないだろうが、僕にはきつい皮肉に聞こえる。あ、「経済教室」の内容は僕の記憶で書いたので用語や言い回しは本人と違うかもしれないが内容はだいたいあっていると思う。もっとも消化しすぎて別物になっていたらご免。

消費税増税への景気への弊害は2種類あるらしい。一つは直接に購買力を奪うと言うもの。もう一つは消費税増税前に駆け込み需要がでるがその反動で増税後に需要が極端に減ると言うもの。新聞に多分日経新聞の記事だが、地デジとエコポイントでテレビ産業が大打撃を受けたと書いてあったが何を今さらと笑ってしまう。火を見るより明らかなことなのに当時新聞はエコポイントに反対したのかな。僕がこのブログで度々言っていたことだ。ただエコポイント当時に書いたかどうかは記憶がない。ただこうした政策の弊害はオーストリア経済学のイロハなのだから当然思ったはずである。この件に関してリフレ派(自分はリフレ派ではないと言ってるけど)の首魁の浜田氏と反リフレの小幡氏がもし消費税増税するなら1%ずつ上げるのが良いと同じようなことを言っているのが面白い。浜田氏はあげない方がいいけどもし上げるならだが。小幡氏は以前からの持論だ。

リフレ派にとっては進むも地獄退くも地獄と言ったところだと思うのだが、神懸りリフレ派は消費税を上げなければ万事うまく行くつもりらしい。「日本政府の財政は絶対に破綻しない。国債の買い手がいなくなったら日銀がいくらでも買えばよい。デフレの日本はハイパーインフレにならない。」とのことだ。すごい確信だね。「アメリカ人は個人主義だから厭戦気分で講和を求めてくる」「アメリカ人は潜水艦に乗るものがいないので通商破壊はない」とかの戦前戦中を思い出す。そういえばリフレ派評論家の上念氏は「国体」とか戦前の右翼論客みたいなことを言い出している。

リフレ派でもイデオローグの評論家は消費税増税反対、実務家の黒田日銀総裁は消費税増税やむなし。最近の政治情勢から見ると消費税は増税の方向だね。え、経済情勢もだって?それは保留。というのは経済報道が操作されている可能性がある。多くのデータが意図的に消費税増税を許容できる経済という解釈で報道されている。例えばなかなか設備投資が上向かなかったのが本当の景気回復ではないとの証拠だったのだが、ここにきて設備投資が上向いたとの報道が新聞の一面を飾った。でもよく読むと製造業の設備投資は減って非製造業の設備投資が増えてトータルで設備投資が増えていることになる。報道の仕方で記事の印象はだいぶ違う。日本人は日本が民主主義国家で報道の自由があると思っているが、日本の民主主義度は先進国の中では低くランクされている。その原因は女性の社会進出の低さの他は報道の自由度だ。役所が記者クラブを通じて発表した事柄は役所の発表の趣旨で記事にしなければならない。多数の人が読むわけではない評論では異論も許されるが報道記事では皮肉ることさえ許されない。

リフレ派の中にはこの段になっても安部首相が自分のリーダーシップを見せるために敢えて消費税増税を延期するだろう言うものもいる。でもあの人は周りの意見に逆らわない人だから消費税は来年4月から行われる。でも僕は消費税増税反対のリフレ派が本当は消費税増税を実行してもらいたいのではと思っている。そうすればどのみち破綻するリフレ政策の失敗の言い訳ができるから。こんなことを僕が思うのは、歴史にこんなことがあった。戦前の日本は陸軍にしろ海軍にでも敢闘精神が尊ばれた。だから戦に勝った指揮官が敢闘精神が足りないとけなされ、戦に負けた指揮官が敢闘精神があると敗戦をとがめられるどころか出世さえした。こんなわけで大日本帝国軍人は常に勇ましいことしか言わない。日米開戦にあたって東條首相を含む陸軍指導者も海軍指導者も戦争の見通しに自信がなくて、誰かが開戦に反対するだろうからそしたら自分は開戦したいがシブシブ従うということにしようと思っていた。ところが誰も開戦をのぞんでいないがそれを口にする者がいなかって日米開戦となった。もし重臣のなかに一人でも見えや外聞にとらわれないで国を思い開戦に反対して腹を切るものがいたら天皇も戦争回避を強く求めることができて太平洋戦争は起こらなかっただろう。

ところでリフレ派が消費税増税の反対の理由に「よいインフレと悪いインフレがあると」という。よいインフレとはそれで景気がよくなるインフレと言う意味だがそんなものないよ。高度経済成長の時に物価が持続的にあがったのは経済成長の結果であって原因ではない。そんなのは誰にでもわかることだ。それも結果に付随したことであっても避ければ避けたいことだ。だから都知事が物価を抑えられるとは思えないけど「物価の美濃部」と言う人が都知事に当選した。リフレ派の人は諸外国ではインフレターゲットを定めているというが、アメリカ以外ではそれはインフレ達成の目標ではなくてインフレの許容範囲の限界として。これを超えそうになったら金融緩和を中止しなければならないもの。過去の日本だけでなく世界の成長国ではもちろんインフレは歓迎されない。リフレ派みたいに成長の素とは思わないで、むしろ成長の阻害要因と見ている。

リフレ派が「悪いインフレ」というのがおかしいのは、よいインフレなどないからだけでなく、「悪いインフレ」の中でも「より悪いインフレ」を推奨しながら「比較的悪くないインフレ」の懸念をいうからだ。物価上昇が国民の購買力を奪うのは、あんたらが今さらいうまでもない。しかし経済学的にみれば消費税増税は国民の購買力を奪う反面、政府支出が増えるから国民経済的にはブラスマイナスゼロ。これは比較的悪くない物価上昇といえる。ところが円安によるエネルギーや食料の価格上昇は購買力が国外に流出するから悪い物価上昇だ。不況下の物価高というスタグフレーションが1970年代で起こったのは産油国が原油価格を上げたためだ。おっと僕は消費税増税がいいと言っているわけではない。経済学の解釈にもかかわらず現実の消費税増税分は政府支出としては十全に経済を潤さない。たぶんそのうちの一定の部分は行政癒着企業や役人の懐にただ移るだけ。つまり貧乏な庶民から裕福なものへの所得移動が起こるだけ。これならそのまま庶民の手元に残った方が健全な経済活動に資するよ。以上はリバタリアン的見解でした。

リフレ派はその場その場で非論理的な取り繕いするな。一年前のリフレ派からは「悪いインフレ」に気をつけようなんて言葉は絶対に出てこなかった。

オリンピックの影響で株価が再びあがり始めたね。僕の予想では10月末に株価の大暴落がありそれからしばらくさらに下がり続けるはずだが、大暴落には落差がたりない気がしていたが予定どおりになりそう。