小保方さんの『Nature』に載せたSTAP細胞についての論文についての問題点がいろいろ指摘され論文の取り下げが噂されている。また小保方さんが早稲田大学に出した論文も無断引用が指摘されこれまた小保方氏は取り下げ意向があるとのことだ。
得意の絶頂からの転落とは猪瀬元都知事に限らずどこの世界でもあるみたいだ。まあ僕のような人間には得意の絶頂なんて来ないから転落もないけど。でも卑下しているわけではないよ。陽明学的人間には得意の絶頂なんて似合わない。つまり外的な評価や基準での得意だとか栄光は関係ない。並び大名の局長になるよりもオンリーワンのスーパー公務員がいいに決まっている。刑事ドラマの主人公はなぜみんなヒラなのか考えよう(太田肇『お金より名誉のモチベーション論』)。アレ?近頃キュアリアの刑事物が幾つかあるな。杉下右京と海月千波(『戦力外捜査官』)はキャリアの警部だけど部下がいないのも同じだからヒラみたいなものだけど、『隠蔽捜査』の主人公は警察署長だ。でも定年間近の杉下右京と大学出たての海月が同じ階級とは!普通の役所なら懲戒処分があったか自発的な降格申し出があったかだろうね。福家警部補もキャリアで自発的な降格のケースだね。とすると未亡人の面接官と科捜研の技官以外は皆キャリアか!いまの刑事ドラマキャリア信仰が過剰。ともかくいつまでも警部ぐらいの階級では中央官庁の東大出なら普通は外資へ転職しちゃうけどね。右京は陽明学徒か?陽明学者の山田方谷は明治政府の出仕の要請も断った。陽明学と同じ本質のオーストリア学派経済学的にはハイエクがノーベル賞について「自分だったらこのような賞の創設を推奨しなかった」と言ったのは理解できる。
さて博士論文も取り下げて博士でなくなると、小保方さんも理研からも追い出されて、ただのお姉さんになってしまう。そうなると東進ハイスクールの講師でもやるのかなあ。
無駄ばなしはここまでにして、ここではあの『Nature 』論文が出てきた謎解きをしよう。といってもぼくは『Nature』論文を読んではいない。読めないし読めても理解できないだろう。もちろん生物学や化学の専門知識もない。でもこの経過は想像できる。見当違いかどうかは何年か経って全体像の記録が出てきた時にわかることだ。
STAP細胞と名付けられた万能細胞は実在するかといえば実在したと思う。だから空想の産物でペテンではないと思う。これは共同研究者に万能細胞が提供されていることが最大の根拠だ。もちろんES細胞やiPS細胞を手に入れて提供したかもしれないので断言はできないけど、実在するから世界で誰かが追試に成功すれば強引な手法も結果オーライになると思ったのではないかと推測する。
コピぺや画像の使い回しなんてバレることが当然予想されるのになぜ行ったのか。早稲田の院生の間では博士論文ならあまり人目に触れなくてばれない確率が大きいので割と広く行われていのだろう。成果をだす強迫観念にとらわれて結末を想像できなかったのだろう。転落する人は都合の良い結果のみ想像して悪い方は見ようとしない傾向があるのかな。
論文の捏造以前の一番の問題点は、小保方氏が独断に陥り間違った方向に研究を進めたため袋小路に陥ったことだ。そのため無理な論説を強引な方法で論文にまとめてしまった。万能細胞が存在することは事実なのだから早く世界に広めたいと言う意気込みと、期限内に成果を出さないと理研の研究員の職を奪われ研究手段を失うという焦りもあったと思う。
ある日突然に万能細胞が現れた。これはガラス管を通ってきたものの中からだ。再び同じことは起こらなかったが小久保さんはなぜかと考えた。そこでストレスということを思いついた。細胞が狭いガラス管を通る時にストレスを受けて初期化したのだと。かくして小久保さんは物理的ストレスのほかに化学的ストレスまであらゆるストレスを試してみた。するといろんな試行の後で弱酸性溶液の中で再び万能細胞が見つかった。おそらくここまでは事実だろう。でも再現性が確保されていないのに焦りから論文にしたててしまったのだ。
ストレスか!小保方さんは医学部出身でもないのに「ストレス」なんてヤブ医者が多用しそうな言葉を思いつくねえ。現代医学は「ストレス」が流行りだ。心の病から体調不良までストレスのせいにされる。ストレスの全くない人間はほとんどいないから患者は思い当たることになり先生は名医だと思ってしまう。でも以前はストレスが原因とされた第一の病気の胃潰瘍は今ではピロリ菌が原因とわかっている。ストレスの多用はご用心だ。
ストレスなんて言う医者にかかったら病気の真の原因の発見が遅れ死に至りかねない。小保方さんも同じ迷宮にはまり込んだ。
偉大な発明発見は偶然から見つかることが多い。偶然はいろんなところで起こる。でも凡庸な人間はその意味が解らず見逃してしまう。有能な人間だけがその意味を理解する。偶然とそこに居合わせる有能な人間の組み合わせが偉大な発明発見をする。ガラス管を通った細胞の中に万能細胞があった。なんかの間違いと思わずそこに重大な意味をみたのだから小保方さんは凡庸ではない。でもそこまで。秀才だけど単なる秀才だから独断の迷路に迷い込んで抜け出せない。
ストレス説が独断というのはまだ検討すべき可能性が幾つもあるからだ。再現性が確保できないのなら他の仮説も検討すべきだ。
例えば僕はこうも考えられる。細胞はストレスがなくても自然に万能細胞化したのではないかと。こう言うと小保方さんは「ガラス管を通る前にも細胞を見たがなにもなかったが、ガラス管を通った後にはあった。だからガラス管を通ったことが原因だ」と反論するだろう。でもたまたま万能細胞の発生とガラス管を通す実験の時期が一緒だったかもしれない。
ガラス管がなくてほっといても万能細胞が現れたかもしれない。こう言うとたぶん小保方さんは「ほっておいた細胞から万能細胞が現れたという事例は聞いたことがない」と言うな。でも見つかったものと存在するもの数値は比例も対応もしないことが多い。この場合は定常の状態の細胞から万能細胞を見つける試みをしていなかったためと言えるかもしれない。別の例えで話すと、鯨統一郎さんの小説『邪馬台国はどこですか?』では主人公(たぶん)が邪馬台国は岩手県の八幡平(はちまんたい)との説を述べた。すると他の登場人物は岩手県では古代の史跡があまり発見されていないからあり得ない、と言う。でも主人公は史跡の発見は道路や建物の建設工事に付随してみつけられたものが大部分だ。だから工事が多く行われてきた近畿や北九州に比べて史跡の発見が少ないのは当然だ。これから八幡平付近で工事が多く行われてくれば史跡がドンドン見つかるだろうと言った。僕はなるほどと思った。
では自然に万能細胞ができたのならどんな原因が考えられるかな?まず天然の放射能はどうだろう。地球上のどんな場所でも常に微量だが放射能にさらされている。宇宙からくる宇宙線もある。それが細胞の遺伝子に当たり初期化のスイッチを入れるかもしれない。放射能と言うのは閾値と言うものがなくここまでなら全く無害ということはない。少ないなら少ないなりに影響はあるのだ。
次は、もともと動物細胞の中では細胞分裂の過程で一定の万能細胞が生まれているとしたらどうだろう。ただそうした細胞はやがて周りに同化していって特定の機関細胞になってしまう。つまり時々「俺は誰だ。此処は何処だ」という細胞が現れるが、周りからお前は肝臓細胞だとさとされてアイデンティティを見つけ出す。ありえないなんて言うなよ。これはガン細胞からの類推。癌にならない人も時々は体内にガン細胞が発生する。すると白血球が飛んできて食べてしまうから大事に至らないだけ。ひょっとしたらガン細胞も万能細胞も初めは同じものかもしれない。周りに同化することを拒んだものがガン細胞か?いやいやガン細胞は徒党を組んで増えるから社会主義者だな。同化も徒党も嫌がった万能細胞は何処へ行く。