セレンディピティ日記

読んでいる本、見たドラマなどからちょっと脱線して思いついたことを記録します。

名古屋市議会リコール書名審査期間延長

2010-10-23 19:51:16 | 名古屋
前回一部の市議が、市長不信任決議による解散も考えていると書いたが、あれは間違いであった。一部の市議が考えていたのは自主解散であった。考えてみれば作戦上はこのほうが有利だ。市議会選挙と市長選挙が同時に行われる場合は、市議側に有利な作戦は肩透かしだ。市長の対立候補を立てなければ河村市長の目論む盛り上がりを幾分阻むことができるからだ。不信任決議をすると市議側も立場上対立候補を立てなければならなくなるので肩透かし作戦は取れなくなる。まあ共産党は市長候補を立てるから無投票にはならないけどね。

ところで名古屋市選挙管理委員会は市議会リコール署名の審査期限を10月24日から1カ月延長するという。理由は署名簿の「受任者名」欄の未記入が多数あったこと。署名は定まった区の受任者が署名者と対面して署名を集めなければ無効である。勿論、10人いる請求代表者が集めた署名簿なら受任者でなく委任者なのだから「受任者名」が空欄でも当たり前である。よって「受任者名」が空欄でも、即無効というわけではない。しかし「受任者欄」が未記入のものが署名人数にして114,000人分あるので、それがすべて請求代表者の集めた者とは考えにくいため、審査期間を1カ月間延長して、署名者に手紙で署名状況を照会するという。

市の選挙管理員会で正式に延長決めたのは10月21日だが19日ごろにはマスコミに延長を検討していることが流れていた。でもそれより前に延長の情報は市の関係機関に流れていたと思う。というのは16日(土)と17日(日)に僕は市の現役職員と泊りがけで麻雀をやった。そのとき某区で署名審査の事務手伝いをしている職員が、照会の手紙を出すことになるという。その時僕は、「同じ筆跡と思われる家族の名前が書いてあるのを署名したかどうか確認するのか?」と聞いたら、「そうだ」という。理由は違うが、たとえ週明け月曜日(18日)にすぐ手紙をだしたとしても24日までに結果を出すことは不可能だから、すでに15日以前に延長は決まっていたことになる。

署名者数は465,594名で、「受任者名」欄空欄による署名数は114,000名。差し引き351,594名は全部有効か。仮に有効とすると必要署名数は365,795名だから、14,201名の有効が確認できれば成立する。これぐらいならば代表請求者による分は十分ありうる。しかし受任者名に記入があったものでも、重複や記入誤りなど無効の者がかなりのはずだからそうはいかないだろう。問題は請求代表者によるものでもないことがはっきりしたが、本人がきちんと署名したことがあきらかな場合だ。照会文書がどのような内容になるかはわからないが、それで本人が署名した事実が確認される内容ならば、必要数の有権者が署名していることが明らかなのに、無効署名だといって、リコール署名を不成立にすることができるかだ。これはできないぞ。市民感情を逆なでにして、議会側にはかえって大きなマイナスとなる。

たぶん僕の予想では、リコール署名は成立する。市選管は住民投票と市議会議員選挙を遅らせて、県知事選挙とのトリプルを防ぎ、市議会の本来の任期(3月)に近づけててリコールをあまり意味のないものにしたということで、市議会をなだめたのであろう。

名古屋市議会リコール雑考

2010-10-09 15:31:41 | 名古屋
名古屋市の市議会解散のリコール署名も締め切りまでに46万5000人分が集まり、無効署名が2割ぐらいまであってもリコール署名は成立する。アンチ河村の市議会議員や市職員(一部ただし多数でも一部、つまり全部でないという意味だけ)は、無効署名の数に期待をしている向きもあるが、もし無効署名が多くてリコールが成立しなかったら誰もスッキリしない。こうなっては住民投票の段階で白黒つけた方がスッキリするのではないか。

みんなの党が愛知県知事選の候補者をたてると同時に名古屋市議会選挙にも候補者を出すという。渡辺代表は河村市長に協力しようと秋波を送っている。河村市長は戸惑いぎみだ。それはそうだ、うっかり協力をうけいれて、後で気にそぐわない要求をされると困るからだ。僕の心配は、職業議員を目指して(とりあえず)みんなの党から立候補する人がいるのではないのかということ。そうなると当選後に抵抗勢力化する可能性がある。本やで立ち読みした本によると、東京都の上級職公務員になれる確率は5%で、市町村議員になれる確率は80%で待遇もよいから就職先として議員になろうと書いてあった。

ところでリコールが成立して来年2月にトリプル選挙(知事、市議、市長)になるよりも、リコール成立前に、市議会で市長を不信任議決して市長に解散させ(解散しないと市長は失職)年内にも選挙を行おうという考えが市会議員の中から出てきている。その利点は①早く選挙になれば河村市長派の候補者がそろわないかもしれない。②選挙の公示期間が市長は14日間で市議会議員は9日間なので、不信任議決により市長は先に議会を解散してその後に辞職すると、市長選と同日選挙はできないかもしれない(調整できて可能かもしれないが)ので、河村市長の勢いをそげるかも知れない。③また、みんなの党が候補者をだす知事選と同時だと、全面戦争の相乗効果がでて大きな盛り上がりで河村派が有利になるかもしれないが、県知事選と分離すればそれは防げる。

不信任議決による年内選挙は、以上の点からみて議会側に有利だが、市議の大多数の意見の一致はみないだろうから無理だ。なれ合いの地方議会の議員には腹の据わった者は少ないので、様子見するうちにますます不利になる。

映画鑑賞ノート『十三人の刺客』

2010-10-02 17:00:59 | 歴史
「あり得ない、けどあり得る」とかいう口上の芸人がいたな。江戸時代の知識があることであり得なくみえるが、実はよく考えるとあり得て、逆にあり得そうなのが、あり得ないことがある。この映画はそんな映画。

幕府の老中が、幕臣である旗本の目付に極秘(私的)に命じて、将軍の弟である譜代大名(稲垣吾郎)の暗殺を謀るのである。これはあり得なさそうだが、僕はあり得ると思う。その理由は後で。で、逆にあり得ないのは、襲撃方法だ。

13人で200人の大名行列を襲う。勿論それ自体は誰の目にも不可能に近い。そこでドラマは、罠を仕掛けた宿場町に大名行列を誘い込む。ふむふむ、何らかの仕掛けがなきゃあね、とここまでは納得。ところがその後がいけない。だって大名の一行を皆殺しにするというのだもの。皆殺しが無理というのではない。むしろ、火とか水とかがけ崩れとかを使うならば皆殺しの方が成功する可能性があることも多い。この映画では宿場町の家屋を利用して行列を閉じ込めて、弓矢で数を減らして切り込む作戦。

皆殺しがあり得ないというのは、この映画のテーマは残虐な大名を倒すために、正義の剣士が立ち上がるというものだからだ。しかし明石藩の200名の藩士を皆殺しにしたのでは、この映画で一番の残酷な人間は大名(稲垣吾郎)ではなく目付(役所広司)ということになる。だいたいこの200人の明石藩士のほとんどは、大名の暴虐の賛同者でも協力者でもなく、ただの宮仕え。大量の遺族と父なし子が出るぞ。だから主人公が正義の人という前提ならばこんな映画のストーリーにならない。もちろん旧陸軍の司令官達のように自己の出世や面目のために下級兵士の命をもてあそぶ者が世にはばかることも事実。でもこの映画の前提では老中(平幹二朗)も主人公(役所広司)も大名(稲垣吾郎)の残虐さが許せなかったはずだ。この映画に「『義』のために生きることに共感」という感想を述べる人もいるが、図式的な大儀名分に陥っているのではないか。

ではどのような襲撃方法が考えられるか。まず鉄砲で狙うことである。赤穂事件や桜田門外事件では鉄砲は出てこないが、それは江戸府内だから。俗に「入り鉄砲に出女」と言うとおり江戸府内には鉄砲の持ち込みは禁止である。しかし江戸を出れば別。猟師だって鉄砲を持っている。獣害に悩む農民が代官所から鉄砲を借りて猪を退治するという例もある。鉄砲で大名行列を狙う例は、密告で失敗したが盛岡藩士が弘前藩主を狙う相馬事件がある。だから街道脇から鉄砲数丁で同時に打ち込むのがよい。道は狭いから、大名の籠または馬は常に側面をさらけ出していることになる。1丁では外れることもあるので数丁を同時に発射する。
鉄砲が入手できない等の場合は、大名行列を寸断して、大名と家臣たちを離れさせ。家臣が来ないうちにひたすら大名ののみを狙うのである。映画の宿場町に罠を仕掛けるというのはこの意味でいいアイデアだが、大名行列全部を閉じ込めて皆殺しはいけない。映画でも13人のうち2人しか生き残らなかった。

ところでこの刺客たち、鎖帷子をしていないのは準備不足だね。本当なら赤穂事件の教訓から鎖帷子をしていていいはず。

さて最初にもどり、一般に老中が大名の襲撃暗殺を考えるのが、あり得なくてでもあり得ていいのかを言おう。ふつう大名を排除しようとするとき、何らかの言いがかりをつけて大名家をとり潰すことがある。でも江戸中期以降は、よほどのことがない限り取り潰しはしない。浪人が増えると困るからだ。でもこの大名(稲垣吾郎)は残虐に人を殺傷しているから取り潰しの理由にはなるが、前将軍の子で現将軍の弟なので現将軍がバックアップしているのでそれは無理だ。改易にはできないが問題のある者が藩主についている場合は、その藩の重臣が協議して老中の暗黙の了承のもと、藩主を監禁して幕府に病気届けをしたのち隠居届をだして藩主を替えることがある。これを「押し込め」と言うが、このドラマの設定ではそれも無理だ。老中と藩の重臣が示し合わせても、将軍が弟に見舞いの使者を送ればばれてしまう。それに明石藩では外からの養子の藩主なので藩主自身にはあまり忠誠はないと思われるが、旗本から付き添いできた重臣が藩主への絶対忠義の者なので「押し込め」に必要な重臣全員の合意ができない。

改易もだめ、押し込めもだめならば、忍者での暗殺とくに毒殺という手があるのではないかと思うだろう。協力者がいない限り食事に毒を盛るのは不可能だから、藩主が外出のおりに隙を見て毒を盛る方法が考えられる。よく大名が外出から帰ってから体調が悪くなり死んでしまうケースが多い。毒殺ってそんなに簡単にできるのと思われるかもしれないが、大名に毒味役が普通に付くように、広く行われていた可能性がある。ただ藩主の毒殺が成功したら、家臣も糾弾できなくなる。新藩主が毒殺に関わっていたらお家は取り潰しだから。だから歴史に残るのは保科正之の正室が側室の娘を毒殺しようとして自分の娘を誤って毒殺した例ぐらいだ。

しかしこのころ忍術の技量を保持しているのはお庭番ぐらい。しかしお庭番は将軍直属で将軍の命令しか聞かない。老中が動かせる伊賀組も甲賀組も門番以上の技量はない。

なおこの大名(稲垣吾郎)が、ほっとくと来年には老中となるという。まあこれもあり得るとしよう。ふつう譜代大名が老中となるには、いくつかの役職を経た後なので、大阪城代でも京都所司代でもない者がいきなり老中とは思うかもしれない。だがこの大名(稲垣吾郎)は前将軍の子で現将軍の弟だ。徳川吉宗の孫の松平定信もいきなり老中になったみたいだ。古くは保科正之もふくめて将軍家の近親者はいきなり老中になることが可能みたいだ。