白河夜舟

水盤に沈む光る音の銀砂

たまには酔狂に

2006-03-10 | 日常、思うこと
今から25年ほど前、タモリが深夜番組で
「誰にでも出来るチック・コリア」という
密室芸を披露したことがある。
何のことはない、ピアノの白鍵部分を適当に弾く、
というもので、
4拍子を念頭に置き、一小節に1和音を当てはめ、
左手でミ・ラ・レ、半音上がったファ・ラ・ミ、
この四度間隔の和音を一小節ずつ交代に弾き、
右手で跳ねるようにして、白鍵を適当に弾くと、
チックコリアの音使いに聞こえる、というわけだ。





理論解釈をすれば、旋律的に見れば、Eのフリジアンと
Fのリディアンのモードを交互に弾いていることになり、
和声的に見れば、トニックとドミナントの裏を
交互に動いている、ということになるだろうか。
しかし、そんなことを全く知らなかったとしても、
上のような形で演奏してやれば、「それっぽく聴こえる」。





ぼくの場合はこれを応用して、
コルトレーンチェンジの考え方を応用したり、
短三度・二度、長三度・減二度、という具合に
転調を進めたりしてやる。
あるキーに対する、コンビネーション・オブ・
ディミニッシュスケールの、下から4つ分の音を
テトラ構造と捉えて、
その音型を転調に合わせて動かしたり、
あるいは動かさずに多調・複調へとすすめたり、
反行させたりする。
左手は転調しながら、右手は元のキーで演奏する。
すると、より一層、チック・コリアっぽくなる。





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昨年の今頃は、ケツメイシなる和製似非ヒップ・ホップ
グループによる「さくら」とかいう曲が随分流行したが、
あの曲のサビの部分、

D♭→E♭(onD♭)→Cm→Fm→D♭→E♭→A♭→Fm

という進行は、非常に明快、黒人R&Bから白人産業ロック、
和製Jポップ、ジャズ・フュージョンの類に至るまで
さまざまのジャンル、さまざまのアーティストによって
使われてきた、コード進行の定石である。
これと並んで有名な進行といえば、

D→A→Bm→G

あたりになるだろうか。





ケツメイシの「さくら」を歌ってもっとも似合うであろう
アーティストには小田和正がいる。
小田和正の曲には、こうした4、5、3、6、(4,5,1)

F→GonF→Em→Am→(F→G→C)

のパターンを持つ曲が数多く見られる。
つまり、このコード進行に乗せて、

「君に会いたい 待ち焦がーれて 
この胸の中 張り裂けそうに」

などと適当に歌えば、小田和正っぽい音になる。





もはや60歳になんなんとする、団塊世代の筆頭
昭和22年生まれの小田和正が、未だにあの声と

「君に会いたい 君を抱きたい 
凍えた胸が 溶け出すように」

などという歌詞を作り、歌ってしまえる感性を
失っていないことは驚嘆に値することであり、
彼と同世代の歌い手たち、例えば細川たかし、森進一、
井上陽水、南こうせつなどが小田の曲を歌っても
なにかの罰ゲームにしか聞こえないだろうことは
明白だろうが。
よほどお盛んなのだろうか。





ポイントは、上記のコード進行に合わせて、
「君に会いたい」の部分を、例えばドドレレミミミ、
というふうに、メロディを上行させること。
まあ、こんな感じだろうか。

ドドレレミミミ、ミミミミーレレ、
シシドドレレレ、レレレレードド

これに、さっきのような7文字で出来たラブリーな詩を
乗せてみれば、小田和正っぽいサウンドが出来上がる。
歌い方は、単音はスタッカート気味に歌い、
伸ばすところはきちんと伸ばす。





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矢野顕子の場合は、少しややこしい。
ジャズの理論を知っているほうがやりやすいだろう。





例えば、

(歌詞) そんなー まいにちの はじまり

というふうに、文字数が3,5,4、となるように
適当に歌詞を準備する。

おなじー ゆめーみて いたのに
いつも  あいたくて ないてた
ひとり  ぼーっちの ゆうぐれ

と、いった具合。
これに、Am9→D7♭9→G7→CM7、という感じで
コードをつけ、鼻にかかった声で
始めの3文字は上がるように、次の5文字は上から
下へ落ちるように歌う(ここでややはにかみ、発音も
あいまいに)。
そして、最後の4文字はオクターブ上で近い音程で歌う。
例えば、

ドレミー ラソミレド シシドファ♯

ぐらいで歌ってみるといいかもしれない。





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キース・ジャレットの場合は、ピアノを前に、
「にぃにぃ、デュフヴーン、あー、にゃー、でぃでぃでぃ」
とうなりながら、
椅子から立ち上がって腰をグラインド、
あるいはピストン運動させて「ピアノとやってるつもりで」
恍惚の表情を浮かべてやれば、見掛けだけは真似できます。





音使いまで真似することはおそらく不可能でしょう。





このほかにも、特徴がとらえやすいアーティスト
(トム・ウェイツなど)はまねがしやすい。
鈴木宗男衆院議員とヒューザーの小島社長と
阪大文学部の藤田教授の話し方は
イントネーションやアクセントの位置が同じなので
話す速度と声の高さを変えれば、3人分の真似が出来る。





インチキボサノヴァやインチキカンツォーネ、
インチキ日本民謡、インチキ外国語などは
節回しと発音とイントネーションの流れに気をつければ
簡単に出来るはず。





ちなみに、物真似の能力は、耳の能力、あるいは
音楽的な聴力・再現力の高さに比例しています。


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