“釜玉”の山越うどん。 「恐るべきさぬきうどん」の本はご存知だろうか?さぬきのうどん屋を、讃岐弁丸出しで読み物風に紹介している。第1巻の発刊が1993年、今から約13年前。ちょうどその頃、勤めていた会社の奥さんがこの本を見つけ、得意の讃岐弁で読んで聞かせた。私たちは腹を抱えて笑い、うどん巡りを始めた。 |
何故穴場めぐり?田んぼの真ん中に、さしたる道も看板もなく、ぽつりと建った民家。その土間に近所の連中が集まる。あそこのうどんはうまいよ!噂を聞き、またうどんを食いに人がやって来る。店はそんな始まりかもしれない。土日は営業せず、昼の1時で終了。当たり前だ。嫌ならよそで食ってくれ…その堅さがまたいいのだろう。 |
さて、本題の「山越」。私が当時訪れた頃は数台の駐車場しかなかったと思う。「これがそう?」とびくびくしながら入り口を入る。店内の狭い通路を歩き、ベルトコンベア式に注文した。「かまたま大、あったかいの!」当時、注文を受けるおじさんは、足でうどんを踏み、口で注文を繰り返し、両手で麺を伸ばし…合間にお金を受け取った。粉だらけの店内。どこで食べようかとウロウロし、店の外に寄り添うように引っ付いている小さな縁台にやっと腰を落ち着ける。居心地の悪さが漂う中、一口すすったうどんは「うまい!」の他に言葉はない。うどんブーム寸前の「山越」、それほどにうまかったが、この不安のせいか、以後10年程は足が遠のいてしまった。 |
写真は最近の店内。今では古い時代の良さも残して生まれ変わっている。同時にやってのけたおじさんの作業もそれぞれ分担の係りが出来た。駐車場はドドーンと増え、庭先でうどんをすする格別の雰囲気もある。味は変わらない……と思う。今もあの喉ごしのよいツルっとした麺、今やうどん本のNo3には必ず入る「山越うどん」。生たまご入りの「釜玉」が有名だが、ちなみに私はシンプルな「釜上げ」をいつも頼む。