[映画紹介]
人間の体内には37兆個もの細胞が存在するという。
37兆。
すごい。
卵子と精子が結合して、
細胞分裂して、そんなに増えたとは。
一細胞1円に換算しても、37兆円。
すごい価値だ。
(その換算には、あまり意味がないが。)
皮膚や組織を作る細胞以外に、
赤血球や白血球や血小板や神経細胞など
無数の細胞たちが、
人間の健康を守るため日夜はたらいている。
その細胞たちを擬人化したのが、この話。
もちろん、原作はコミックで、
「月刊少年シリウス」(講談社)に、
2015年から2021年まで連載された、
清水茜の漫画「はたらく細胞」と
スピンオフ漫画「はたらく細胞 BLACK」が原作。
アニメにもなった。
それを「翔んで埼玉」「テルマエ・ロマエ」の武内英樹監督が実写で映画化。
高校生の漆崎日胡は、父の茂と2人暮らし。
健康的な日胡と不摂生な茂。
その現実生活の父娘の生活と
その体内で働く細胞たちを交互に描く。
特に、体中に酸素を運ぶ役割の赤血球の一人と、
侵入した細菌と闘う白血球の一人を中心に描かれる。
永野芽郁が赤血球役、
佐藤健が白血球役、
その他、T細胞やNK細胞や化膿レンサ球菌や肺炎球菌など
いろいろ登場するが、
メイクがきつくて、誰が誰やら分からない。
人間の漆崎(うるしざき)茂を阿部サダヲ、
その娘・日胡(にこ)を芦田愛菜が演じ、
体内パートと現実パートが交互に描写される。
日胡が白血病になり、
それを治療するため、
体内と体外で奮闘する。
日胡は助かるが、
体内には、細胞たちの死体が死屍累々の様となる。
ピクサーの「インサイド・ヘッド」を想起するが、
脳内ホルモンの話よりも体内全体だからスケールアップ。
その表現はCGだが、
何やらテーマパークのよう。
アニメではなく、実写でやったことに
志を感ずる。
その設定に最初に乗れない観客は取り残されるだろう。
ある場面で、「ワルキューレの騎行」がかかるが、
こんな場面で自分の音楽が使われようとは、
ワーグナー先生も知らなかっただろう。
観終わると、
健康に気をつけなきゃな、
という気持ちになるのは教育効果だ。
日頃、気にもしていない体内細胞、
見ることも話すことも交流することもない幾多の細胞たちが
頼まれもしないのに、
一生懸命健康維持のために働いてくれているのだ。
感謝の念を持つしかあるまい。
そして、自分という存在は
沢山の(37兆の)細胞の集合体なのだと改めて思わされる。
そう考えると、
人間の死とは、
その37兆の細胞たちが
まとめて死に至るということ。
荘厳な、生命の死。
脳に蓄積された記憶も知識も、
全て消え失せてしまう。
豊富な経験も失われ、
宇宙の中から消滅してしまう。
うわ、哲学的にもなる。
5段階評価の「3.5」。
拡大上映中。