空飛ぶ自由人・2

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映画『ジャワーン』

2024年12月09日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

インドの国境付近の村。
川に流れ着いた傷だらけの男が救助され、
村人たちによって手厚く保護される。
その矢先、中国兵による侵攻が起こり、
村人たちは惨殺されてしまう。
祈祷師が神に助けを求めると、
それが通じたのか、
包帯だらけの瀕死の男は立ち上がり、
中国兵を一人残らず殲滅してしまう。
男は救世主と呼ばれ崇められたが、
自分の過去を全て忘れていた。
記憶はなくても、体が反応して闘ったのだ。

一挙に飛んで30年後
ムンバイの電車が武装集団によってハイジャックされてしまう。
チーフと呼ばれる首謀者の丸坊主の男が、
政府との交渉に入る。
矢面に立たされたのは農業大臣で、
男は年間に1万人以上の農民が借金苦で命を絶っているのを、
ある実業家から金を融通してもらって救え、という。
そして、その金を借金を抱えている農民に配り
負債を帳消しにしろというのだ。
武器商人のカリの一人娘が乗っており、
4000億ルピーを出させることに成功し、
警察は身代金が振り込まれた口座を凍結しようとしたが、
すでにその金は70万人の貧しい人々に配られていた。

解放された乗客たちに紛れて
姿を消した犯人たちが向かったのは、
郊外にある女性刑務所だった。

事件の交渉と捜査には女性警官のナルマダが抜擢され、
捜査を開始する。
ナルマダには娘スージーがいて、
その縁で、ナルマダは、
女性刑務所の所長アーザードに好感を持ち始める。
その男こそが一連のテロの首謀者であったが、
そんなことを知らぬまま、
ナルマダは娘のためを思って、
アーザードと結婚することになった。

と、話は再び30年前に戻り、
兵士隊長のヴィクラムは
武器商人のカリの納めた武器が正常に作動せず、
沢山の部下を死なせたことでカリに恨みを抱く。
しかし、ヴィクラムはカリに捕らわれ、
飛行機上からジャングルに突き落とされてしまう。
冒頭、瀕死のところを村人に助けられ、
中国人の侵入に対して、
自然に体が動いて撃退した男の過去があらわになる。

また、ヴィクラムの妻のアイシュワリヤは、
刺客を殺したことで逮捕されるが、
死刑の直前に妊娠していることが分かり、
死刑囚が妊娠していた場合、
その生んだ子供が5歳になるまで、
死刑を延長されるという規定に従い、
女性刑務所で子供を生み、
5年後に死刑台の露と消える。
息子は看守が養母となって育て、
長じて、刑務所改革を行った。
その人物こそハイジャックの首謀者アーサードで、
囚人の中からチームを編成してテロに及んでいたのだ。
そのメンバーはそれぞれが不当な罪で投獄されていたり、
理不尽な所業ゆえに犯罪を犯した人ばかりだった。
彼らの行為には世直し的な意味合いがあり、
アーサードの仕業は国民の支持を得ていく。

そして、最終的にカリとの対決が始まる。
山奥の村からヴィクラムがやって来て、
アーサードと父子の対面を果たす。

という30年に渡る物語を
時間軸を交錯させながら、
父子の物語として展開する。

インド映画は面白い。
面白さの秘訣は、
まず勧善懲悪であること。
いろいろあっても、最後に善が勝つ。
観客は喜ぶ。
娯楽映画の王道だ。
次に主役が美男美女であること。
それも桁外れの。


やはり、映画の主役は美しくなければ。
反対に悪役は、こんな面相の人間がいるのか、
と思うほど、顔がものを言う。
こっけい部門の担当は、
ひたすら間抜けな人物で、笑いを誘う。


そして、工夫をこらした怒涛のアクション
今までにないアクション画面を作ろうと競い合う。
更に、歌と踊り
本作でも、要所要所で、歌と群舞が展開する。
なんだかヘンテコな振り付けで。


そして、ド派手な音楽
これこそ娯楽映画、これこそ映画を観る楽しみ

ただ、今回の作品は、単なる娯楽映画だけでなく、
社会問題を内包する。
農民が疲弊して、借金まみれなのに、
政治家は大金を銀行から帳消しにされている、とか
医療設備が整っていない病院を救うために
保健大臣に迫って、
全ての病院に最新の設備やトイレなどを設置させる、とか。
5時間しか持たない蚊取り線香に熟考するのに、
5年続く政治に無関心なのはなぜか、
選挙の1票が大事、
しっかり見極めて国や地域の代表を選ぼう、とか。
政府が10年経ってもできないことが、
テロリズムによって5時間でできる、とか。
日本と同じだな、と思わされる。

ただ、インドの俳優は顔が見分けがつかない。
本作でも、あの人とこの人は顔が似ているが、
と思ったら、
ヴィクラムとアーサードは、
同じ俳優(シャー・ルク・カーン)が父と子を演じているのだ。
監督は、アトリー

この映画、
初日世界興収は22億円を突破、
最終興収200億円をたたき出し
インド映画世界歴代5位を記録したという。

でも、日本での人気は今一つ。
私が観た幕張の映画館では、
観客は7人しかいなかった。

タイトルの「ジャワーン」は、
「兵士」の意。

5 段階評価の「4」

新宿ピカデリー他で上映中。