空飛ぶ自由人・2

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小説『バーニング・ダンサー』

2025年01月10日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

警察ものだが、SFと合体した新機軸。
そのSF的設定が大前提となるので、以下に記す。

ユーラシア大陸某所に隕石が落下した日、
この世に百人の超能力者が誕生した。
コトダマ遣い」と呼ばれる人々で、
「コトダマ文書」というルールブックが発表されている。
それは、タイに澄む5歳の少女が綴った文書で、
少女はまだ読み書きを習っていないにもかかわらず、
論理的を文章を書いたもの。
それによれば、
コトダマは百ある。
「燃やす」「凍らせる」「知る」「動かす」「押す」・・・


「燃やす」は発火能力、
「透ける」は透明人間になる能力、
「爆ぜる」は爆破能力・・・など。
一つのコトダマを持つ人間は地球上に必ず一人。
選ばれた人間は、死ぬまでそのコトダマを保持するが、
その者が死ぬと、
コトダマは別の誰かに引き継がれる。
誰に引き継がれるかは予測不能。
一説には、この現象は、
宇宙からの飛来物による磁場の影響だと推測されるが、
それにしては、整然とし過ぎている。
一体、誰がこんなシステムを作ったのか。
(まあ、この本の作者ですけどね)

コトダマによる犯罪も起こり、
その捜査のために、
警視庁に特殊な部署が誕生する。
「警視庁公安部公安第五課 コトダマ犯罪調査課」
コトダマの超能力者ばかり7名を集めた。
課長は三笠葵=「読む」
班長は水嶺スバル=「入れ替える」
調査員は、
「硬くなる」「放つ」「伝える」「吹く」「聞く」の
能力を持った5人。
そして、能力者ではないが、
外部委託員の森嶋航大。

早速、「燃やす」によって2人が殺された事件が起こる。
全身黒こげの死体と、体内の血液が沸騰した死体。
調査員たちは、それぞれの与えられた能力を駆使して捜査する。
その過程で、その能力を発揮する際の制約が判明する。
たとえば、「硬くなる」は、息を止めなければならないし、
「吹く」の適用範囲は5メートル以内、
「聞く」で話すことが出来る物体の大きさは、手の平サイズ、等々。

捜査の過程で、ホムラを主犯とする2人組の犯人が浮かび上がり、
その最終目的が原発の破壊だと分かり、
コトダマ犯罪調査課の捜査は
国民の命を背負うことになる。
原発に厳重な警戒態勢が敷かれるが、
途中で永嶺が犯人の真意に気づき・・・

特殊能力者によってなされた殺人事件を、
こちらも特殊能力者から成る警察のチームが追うという、
今までにない展開だが、
話の前提となる「コトダマ」の存在を受け入れれない読者は             置いてけ堀となるだろう。

従って、読書体験としては、ウザいが、
ラスト近くの意外な展開は楽しめた。

作者の阿津川辰海は、
6作品連続「このミステリーがすごい!」にランクインし、
「本格ミステリ大賞(評論部門)」受賞作家だという。