[書籍紹介]
樋口乙葉(樋口一葉ファンだった母が命名)は、
東北地方のターミナル駅ビルの書店に勤めていたが、
店長とうまくいかず、
転職を考えていた時、
SNSで連絡を受けた
東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。
オーナーとのネット面接で採用が決まったのだが、
オーナーの顔は見えず、
声も変換されたもので、
オーナーが何者であるかは分からない。
そこは普通の図書館と異なり、
亡くなった作家の蔵書が集められた図書館で、
開館時間が夕方7時から夜中の12時まで。
入館料は千円で、
月間パスポート1万円、
年間パスポート5万円もある。
裏手に職員用の寮も用意されており、
家賃は無料、光熱費だけ自己負担。
カフェもあり、夜食も出る。
主に研究者などが利用するもので、
どう考えても採算は取れないと思われるが、
オーナーの私財でまかなわれているようだ。
職員はみんないい人だが、
どうも過去に何かを背負っている気配。
時々、いろいろな職員の視点で過去が語られる。
蔵書印がない、持ち込まれたらしい本が発見されたり、
ある作家が乗り込んで来て、
自分とライバルだった作家の蔵書を点検させてくれと申し出たり、
最近亡くなった人気作家の蔵書を引き取るために
作家の家を訪ねると、
作家の妹という人物が出て来て、
実は、その妹が作家自身で、
死んだというのは虚報ではないかと疑ったり、
マネージャーとオーナーの不思議な関係が語られたり、
ミステリー的要素もある。
オーナーの正体も終わりの方で明かされる。
カフェのシェフが作る料理(お夜食)が、
様々な作家の本から取られていたりの趣向もある。
オーナーの口から語られる、
職員採用の基準が、
傷ついている人、疲れている人、
そして、秘密を抱えている人、
というのも興味深い。
ちょっとユニークな作品を書く原田ひ香の作品。
現実には成り立たない特殊な図書館の話。
ファンタジーを読むような感覚で読んだらいいだろう。
WEBで、紹介マンガというのがあるようだ。
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