[演劇紹介]
一昨日は、浦安市文化会館小ホ-ルで、
↓の公演に出かけました。
「イノック・アーデン」は、
ヴィクトリア朝時代のイギリスの詩人、
アルフレッド・テニスン(1809- 1892)による物語詩。
1864年作。
ある田舎の港町に、三人のおさななじみが暮らしていた。
船乗りの息子で孤児のイノック・アーデン、
粉屋の一人息子フィリップ・レイ、
そして、町一番の器量良しのアニー・リー。
やがて三人は成長し、
イノックとフィリップはアニーに恋心を抱くが、
アニーが選んだのは、イノックで、
フィリップは遠くから二人の様子を眺めるばかり。
イノックとアニーは結婚し、
3人の子どもに恵まれるが、
イノックはケガをして、家計が苦しくなり、
誘われてアジアへの航海に出て、
消息を絶ってしまう。
困窮に陥ったアニーを助け、
子どもたちを学校に行かせたのが、
粉屋を継いだフィリップだった。
10年の歳月が経ち、
フィリップはアニーに求婚するが、
「あと1年待ってくれ」と答え、
ついにイノックは帰らぬ人と諦めたアニーは
フィリップと結婚し、子どもをもうける。
一方、船が難破して、孤島で生き延びたイノックは、
望郷の念と、アニーへの想いで生き延び、
近くを通りかかった商船に救助される。
しかし、苦労のために、イノックの容貌は一変していた。
故郷にたどりついたイノックを待っていたのは、
妻が旧友と再婚したという現実だった。
イノックは密かに新居を訪ね、窓から
子どもたちに囲まれて幸せなアニーとフィリップの姿を見て、
身を引く決心をする。
面替わりしてしまったイノックのことは
町の誰も気づかず、
死の間際に、宿屋の女将に自分が誰かを明かす。
イノックの死を知った町の人々は、
かつてないほどの盛大な葬儀をして、
イノックを天国に送り出すのだった。
このように、おさななじみの恋、
遠くに旅立った夫を待つ妻、
その貧困を援助する旧友、
夫をあきらめての再婚、
難破での望郷、
救助と帰還、
妻と旧友の幸福を守るために身を引く男の心情、
などが散りばめられたストーリーが受け、
沢山の言語に邦訳され、
和訳も数多い。
(長谷川康訳、入江直祐訳、長谷川康訳、幡谷正雄訳、田部重治訳、
竹村覚訳、酒井賢訳、原田宗典訳、原田俊孝訳など)
この物語詩にピアノで音楽をつけ、
朗読劇に仕立てたのが、
リヒャルト・シュトラウスで、
グレン・グールドのピアノ、
名優クロード・レインズの朗読は
1961年にレコード化され、CDにもなった。
今回の公演は、
女優の泉田洋子さんがギタリスストの建孝三さんとの話の中で企画し、
はじめ、ピアノ譜をギターにしようとしたが、
果たせず、作曲家の二橋潤一さんに依頼して、
新たにギター曲として作曲してもらったもの。
ピアノ版のものは、
石丸幹二をはじめ、
あちこちで上演されているが、
ギター版は新作。
昨年初演し、今回はうらやす財団の主催で、
浦安市文化会館での上演のはこびとなった。
泉田さんのきれいな声の朗読と
建さんの華麗なギターの掛け合いが
物語世界を盛り上げ、
ホリゾントに映し出される波の模様とあいまって、
「イノック・アーデン」の世界が展開する。
なお、朗読の部分は、
泉田さんの手で、枝葉を削ぎ落し、
聴衆に分かりやすく編集されている。
プログラムには「原作は2時間以上と長く」とあり、
上演後のトークでも「普通にやると3時間かかる」と言っていたが、
何かの思い違いで、
オリジナルの英語版もそれほどは長くない。
イノックが幸福な家庭の様子を見て身を引くクライマックスで、
音楽がなかったのは何故だろう。
ピアノ版、ギター版、それぞれの良さはあるが、
この物語はヴァイオリンの旋律の方が合うような気がした。
ドラマチックでロマンあふれる物語、
映画にはうってつけだが、
映画化されたという話は聞かない。
それとも、英国では映画化されたが、
日本に来なかっただけだろうか。
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