空飛ぶ自由人・2

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『反回想』

2024年12月10日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

青山繁晴さんという人は、
「ぼくらの選択」三部作を読んで、驚いた。
本ブログでの感想に
「こんな気骨のある、
 世界と日本を正しく認識している国会議員がいたのか、
 と希望を新たにした」
と書いている。

政治献金を1円も受け取らず、
政治資金集めのパーティーも開かず、
地元も後援会も作らず、
団体支援もお断りし、
派閥に属さず、
独立した立場で議員活動をしている。
特別職の国家公務員である国会議員は
全体の奉仕者であるべきだからだ。
政治資金は原稿を書いて、自分で作る。

その代わり、誰に遠慮することも、
指示を受けることもない。
頭を下げるのは、ただ、主権者たる国民だけ。

派閥パーティー資金のキックバックという、
事柄で露呈された
今の国会議員の品性下劣さを見れば、
それとは反対の道を行く人だと分かる。
支援団体があると、
その意向を取り入れなければならず、
ひどい時には支援団体の利益代表として、
国会質問をせざるを得ないことも起こりうる。
企業献金、団体献金を受ければ、
その方向に政治を曲げざるを得なくなる。
その弊害は自明なのに、
企業団体献金一つ廃止できないのが
今の国会だ。

その中で、独自の路線を行く青山さん。
この人に入れなくて、誰に投票しろというのか。

反回想とは、                                  起きた事実を懐かしむのでもなく、
都合よく事実を再編、編集するのでもなく、
現在と未来を良くするために、
ありのままに記憶という財産を活かす、
という意味。
副題に「わたしの接したもうひとりの安倍総理」
とあるように、
青山繁晴さんと安倍晋三元総理との
友情の物語

冒頭、硫黄島に行ってきたという青山さんの話を覚えていて、
第二次安倍政権が発足してから、
硫黄島を訪問した安倍さんの話を読んで、
涙腺が破裂した。
安倍さんは、硫黄島の
アメリカ軍が作った滑走路の下にある
日本兵の遺骨を思い、
滑走路にひざまづいて、
両手を着き、何事かつぶやく。
今だ帰還できぬ遺骨に対して謝罪したのだ。
こんな総理がいただろうか

硫黄島とは、戦争末期、
米軍が上陸した島だ。
すぐに落ちるという米軍の見込みに反して、
日本軍の抵抗はすさまじく、
それによって米軍の本土進攻を遅らせ、
本土上陸後の抵抗の恐怖を米軍に与えたのだ。
硫黄島の日本兵たちは、
日本の本土を守るために、
食料もない、水もない中、戦った。
そのことを分かっていたからこその安倍総理の行動。
繰り返すが、こんな総理がいただろうか。

いくつか青山さんが語る内容に驚くようなものがある。
たとえば、総理官邸の執務室に行くための秘密の通路
たとえば、中曽根首相と霊園で
自分の墓を見せられた時のこと。
中曽根首相は、こう言う。
「青山くん、私はいずれ、ここに入るんだよ。
 きみはいつも、私をあれこれ追及するがね、
 私はこういう覚悟でやっておるんだよ」
政治記者時代に選挙への誘いがあった時、                     それを母親に言うと、
正座させられ、こう言われた。
「おまえなっ、
 政治家ごときけがわらしい者にするために
 育てたんや、無いっ」

私も今の政治家ほどけがわらしい職業はないと思う。
いつも票とお金のことを心配し、
国民のことは後回し。
そして、自分がした業績を
常に「あれもした、これもした」
と吹聴せざるを得ない。
人間として悲惨だ。
こんな惨めな、職業はないと思う。
なのに、なりたがる者は後を断たない。
よほどうまい話でもあるのか。
最初の清新の志であっても、
政治の長い間作り上げた悪習に染まって、
変貌して行かざるを得ない。

青山さんが出馬を要請する世耕弘成官房副長官に対して言ったことば。
「世耕さん、国会議員になるのを避けているんじゃないんです。
 選挙に出たくない。
 選挙に出ると、たすきに自分の名前を書いて、
 演説でも自分の名前を言って、
 要は、自分を売り込むのが嫌なんです」
また、選挙に出馬すると
「人生が壊れる」と確信していたからだとも。
ポスターを貼るのもいやだと言う。
よその家の塀に貼ったり、
道路に看板を立ててあったり、
そうやって自分の顔と名前を売り込むというのは、
育った家の「自分を売り込むな」という
家庭教育に反している
(ただ、ポスターが1枚もないと、
 立候補していることが有権者に分からない、
 という説得に応じて、1枚だけポスターを作り、
「選挙やったら、たすき掛けてるはず。
 これはテレビ番組だろ」
 という老女の声から、
 たすきはかけた。)
出馬の決意は、安倍総理の
「青山さんが来てくれたら、
外務省、経産省、自由民主党が変わる」
という言葉。
「総理が電話で、ひとことでも、
わが党のために出てくれと仰ってたら、出ませんでした」
と言う。

国会議員になる前は、独立総合研究所というシンクタンクの社長だった。
その社是がすごい。
「会社の利益は追求しない。
 国益を追求する。
 外交や安全保障、資源エネルギーを
 官だけに任せているから
 日本がおかしくなる。
 民間もそれをやる」
まさに、国会議員に通じる道である。

海洋資源について期待する。
日本の海の広さは世界第6位。
メタンハイドレードだけでなく、
レアアース、レアメタル、コバルトリンチクラフト、
マンガン団塊、金銀銅を含む熱帆水鉱床。
日本は隠れた資源大国です。
しかし、なかなか進まない。
邪魔する存在があるからだ。
それは、
高値の輸入資源だけをエネルギーにするエネ庁(資源エネルギー庁)と、
その高値でマージン(利鞘)を取る、
既得権益型の経済界と、
その経済界にカネと票を依存している自由民主党
しかし、資源開発課が設置され、
早田豪課長は、
「メタンハイトレートが実用化に進み出すまでは、
 この課長を辞めません」と。
自身の出世を捨てて、このように発言する人もいる。

予算委員会で質問に立った時、
財務省の局長クラスがやって来て、
紙を渡す。
そこには、「青山先生の質問イメージ」と書いてあり、
質問事項が並べてあった。
「何ですか、これは。
 他の議員は財務省にこんなものを渡されて
 そのまま質問するんですか」
と言って突き返した。
国会議員が官僚に踊らされている姿である。

2020年、2月、
二階幹事長が記者会見して、
「国会議員の歳費から
 一律5千円を天引きして、
 コロナ対策で苦労されている中国に贈ることにした」
と発表。
これに対して、二階幹事長に面会して、
「幹事長、歳費は国民からお預かりしているものです。
 ふつうの給料ではありません。
 国民の同意もなく
 一律に天引きして中国に贈ることは許されません」
と抗議して、「任意」に変更させた。
そんなことはあったとは知らなかったが、
それにしても、コロナの震源地である中国に
支援するなど、二階さんという人は、
どこまで親中なんだ、と驚く。
もう一人、不思議な政治家が登場する。
野中広務氏である。
「日本には戦争責任がある。
 中国、韓国、北朝鮮が望まない憲法改正はするな」
という長老政治家の代表格。
今でも自由民主党の中には、
親中、親韓、親北挑戦の議員は沢山いるという。

青山さんは、
GHQの置き土産としての憲法9条と並び、
財政法4条の改正を強く訴える。
それこそ、緊縮財政を生み、
国民に増税を迫る元凶である。

青山さんの言う、
「日本の総理には、五観が必要だ」というのも素晴らしい。
五観とは、国家観、歴史観、人間観、政局観、経済の相場観
国家観とは、仁徳天皇の故事にあるように、
国家は民のためにあり、権力者のものではないという国家観。
歴史観とは、日本の通史もさることながら、
戦後の80年をどう見るかという「観」。
人間観とは、赦しの「観」。
寛容であり、他者を裁かない。
政局観とは、時機を見誤らない「観」。
経済の相場観は、国民経済のために打つべき手を
打つべき時に打てる「観」。

歴代の総理に、この五観を持つ人がどれだけいるだろうか。

安倍元総理が暗殺されたことで、
青山さんとの友情は終わってしまった。
その日、羽田から伊丹に向かう飛行機で、
安倍元総理と乗り合わせたのは偶然ではないだろう。
機内で、後ろから肩を強く叩かれると、
嬉しそうに笑っているのは安倍さんだった。
まもなく狙撃されるとは知る由もなく、
短い会話を交わして別れた。
伊丹に着いたのは、10時05分。
その1時間後、
安倍元総理は凶弾に倒れた。

よく考えてみれば、
安倍さんの暗殺は不思議だ。
射撃に慣れた人でも、拳銃で人を撃つのは難しいという。
それが素人の作った改造銃の
たった2発の銃弾で命を奪うとは。
何か大きな力が働いたとしか思えない。
安倍晋三という、
本心から日本を憂い日本を再生しようとした政治家を
望まない一群の人々の怨念が
それを起こしたとしか。
安倍さんは、日本を戦後の呪縛から解き放とうとした。
そして、日本を強くしたいと思った。
だから、朝日新聞をはじめとする一群の人々は安倍さんを憎んだ。
その憎しみがあの奈良駅前の一点で収束したのではないか。

その時、宝塚駅前で応援演説をしていた青山さんに起こった
不思議な体験。

本書を読むと、安倍晋三という政治家が、
どんなに懐が深く、
器量が大きかったかが分かる。
その貴重な人を日本国民は失った

青山さんの著作を読みながら、
その思いを深くした。



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