[書籍紹介]
殺人事件が起こる。
都内、千葉県、神奈川県と
別々の場所で、若い女性が襲われた。
千葉県のアパートの漫画家・土屋萌亜が、
神奈川県の被害者の写真をテレビで見て、
前に、近所のコンビニで見かけた人で、
隣のマンションに入って行ったことを思い出す。
しかし、人違いかもしれない。
土屋は隣人の雑誌ライター、小崎(こざき) 涼太にそれを話す。
小崎は、隣のマンションに住む姉の今立晶(あきら)に話す。
晶は親しい加納彩に話す。
彩は刑事の妻で、マンションの理事長をしているので、
管理人の寺内に防犯カメラの録画を見せてもらえる。
しかし、記録の映像は一週間で上書きされてしまうので、
証拠にはならないと分かる。
そうこうしている内に、
萌亜が襲われ、失踪してしまう。
目撃者として始末されたようだ。
涼太の調べで、
神奈川の被害者が、
萌亜の言ったとおり、
髪の下半分がピンクだったことが分かる。
萌亜の目撃は正しかったのだ。
マンションが事件現場であることが色濃くなったが、
警察の協力は得られないため、
涼太、晶、彩の三人が事件を捜査することになる。
一人住いの男性で、
車を持っている何人かをターゲットにするが、
どんどんシロが判明していく。
その一方、バラバラだった殺人が
連続殺人だった可能性が高まる。
というのは、前の被害者の持ち物(靴や時計)が、
次の被害者の身につけさせられている、
ということが判明したからだ。
しかも、前例があった。
26年前、やはり連続殺人で、
前の被害者から奪った遺品を
次の被害者の身につけた、
という事件があったのだ。
しかも、犯人は捕まっていない。
5人を殺した犯人は
後で「スタイリスト」と名づけられた。
模倣犯の可能性が高まり、
しかも、前の連続殺人の最後の被害者の風貌が
彩に似ている、というおまけまでつく。
模倣犯ではなく、犯人本人の仕業かもしれない。
そんな中、マンションの一室を訪ねた晶は、
そこに、萌亜のもののイヤリングを見つけ・・・
自分のマンションに
殺人犯が住んでいるかもしれない、
という設定は面白い。
日常に生じた一点の疑いが
じわじわと広がって心をかき乱す、なかなかの趣向。
帰宅途中の晶のあとを
黒パーカーの男に着けられる位というサスペンスもある。
一旦犯人は捕まるが、
涼太の持つ疑問が
明かされる最終章は、
ほーと驚かされた。
なるほど、そうだったのか、
という、ミステリを読む楽しみを味あわせてくれる。
そう思って振り返ると、
プロローグをはじめ、
様々な伏線が用意されていたことに気付く。
複数の人間の一人称で書かれているのだが、
途中で人間が変わるし、
誰の視点なのか判然としない点は読みにくい。
また、一人称の語りて視点の人物が殺される、
というのは、あまりないのではないか。
作者の織守(おりがみ)きょうや(女性)、
ちょっと注目したい。
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