久しぶりに、本の話をします。
夏樹静子さんは、私の好きな作家の一人です。
最初に読んだのが「天使が消えていく」。
母親の視点からのミステリー。これは、男性には絶対に書けない。
そこから作家読みを始めました。
どの作品からも、真面目で真摯で誠実な作者の姿勢が感じられました。
その夏樹さんがある日原因不明の腰痛に悩まされるようになり、
それは立っても座ってもいられないほどの激痛にまでなり、
治療法を求めて、それこそ奔走するに至ります。その時の様子を書いたのが、
この本です。
腰痛放浪記 椅子がこわい新潮社このアイテムの詳細を見る |
あらゆる検査をして、器質的な異常は全く見られず、
考えられるのは心因的なものだけ。
客観的に見て、それ以外考えられないのに、
当の本人、あの聡明な夏樹さんがどうしても納得することができませんでした。
激痛に悩まされながら民間療法にまで手を出したり、
入院はしてみても気持ちがあちこちに揺れたり。
生々しくありながら冷静に分析する作家の目を持つ文章で綴られているこの本は、
すいません、
これまで読んだ夏樹さんの本の中で、一番面白かったです。
というと語弊があるかもしれませんが、それくらい勢いがあって、
一気読みしてしまいました。
「心因性でここまでの激痛が生まれるはずが無い」と言う夏樹さんに対し、
「心が生んだものだからこそ、どんな痛みでもありえるんです」
と答えるお医者さん。
実際、病気を認め受け入れ始めたところから、症状は軽減していきました。
そういった、自身の経験から心身症に大きな関心を持ち、心身症患者の方に夏樹さんがインタビューして書かれた本が、これです。
心療内科を訪ねて―心が痛み、心が治す新潮社このアイテムの詳細を見る |
本当に色んな症状があります。
ここでインタビューに答えられているのは、病気を受け入れ、ある程度以上快方に向かっている方ばかりですので、何が病気の原因だったのかが本人の口から語られます。中には、家族の軋轢や仕事上のトラブルなど、一般的にストレスの元となるような原因が全く見られない方もいました。
心療内科にかかることにしても、お医者さんとの相性が大切だと言うことも語られています。(心療内科に関らず、お医者さんとの相性は大切だよ~。看護婦さんとの相性もね)
「全部できていなくても、7,8割で自分にokを出してあげよう」
というような意味のことをお医者さんがおっしゃってます。
自分にだけでなく、周りの人にも。
これって、心身症に限らず大事なことですよね。
できていない自分も認めてあげる。
症状に拘泥するのではなく、病気そのものを受け入れていく。
免疫力だって気の持ちようで簡単に上下しますもんね。
心が治すことのできる病気は、思うよりたくさんあるのかもしれません。