十月十二日
「本日一日限りの興行です」と朝から派手に灰色雲「龍踊り」見せて宣伝していた。たしかに、何処かの禅寺の天井がの雲竜の夜な夜な抜け出てるようなエラい迫力やった。まあみんな、それにつられて農閑期でもあるから、チャッチャと新米炊いてオムビこしらえ。人参里芋こんにゃく炊いて、今朝生んだばかりの卵を卵焼きにして、お重につめて、「十月十二日雲の一座」も俄仕立ての空興行にでかけていった。まずまずの好天、浮かれる事もないほどほどのでき。それでもみんな満足。
「一応儂が座長やで、たててくれんと」「はいはい、お父…座長。でも見に来た、厚化粧のお金もってそうなおばさんにあとであそこの飲み屋でなんて、言わんといてね」「ああ！またやってるお父はんとお母はん二人とも、そやから一日興行でサッサと次のとこになってまう。明日はどこやろ」
ゴロリと茣蓙に寝ていたら。何時間にか雲一座しまいにかかってる、おお冷えてきたで。ほな去のか。しかし、商売上手や。「雲座布団」までアンジョウ買わされた。
