最近は甘い、どちらかに忖度した姿勢の考えしか読まないようになってきた思いがしていましたが、珍しく硬派の辛口一献的な内容の本です。やたらと食ってかかるようなそんな文章が多い中で、若手の論客として数少ない人の一人かと思いました。
いろいろな論説の寄せ集め的な感じは否めませんが、頷きながら読めた章としては4章5章などは特に上げられるかと。
アマゾンなどの書評を読むことが多い最近の読書かと思いますが、実は私もついつい書評を読んでしまいがちなのですが、書評を読んでから本を読むとどうもその書評に影響を受けて自分の読み方になってしまう気がします。これもむかしはなかった読書の形態かもしれません。自分の目で頭で読みながら考えることを今の時代思い出すべきかなと自分に問いかけています。
本書の最後に筆者からの強いメーッセージが書かれているように感じました。以下にそれを書いておきます。
内政外政とも数々の困難が立ちはだかるいま、私たちに欠けているのは、それらを乗り越える知恵なのではなく、それらを自らに引き受けようとする精神態度である。真の困難は、政治制度の出来不出来云々以前に、主権者たろうとする気概がないことである。安倍長期政権に功績があったとすれば、そのことを証明してくれたことであった。そして、主権者たることとは、政治的権利を与えられることによって可能になるのではない。それは、人間が自己の運命を自らの掌中に握ろうとする決意と努力の中にしかない。私たちが私たち自身のかけがえのない人生を生きようとすること、つまりは人として当たり前の欲望に目覚めること、それが始まるとき、この国を覆っている癪気は消えてなくなるはずだ。