18日、東京都西多摩郡檜原(ひのはら)村にある温泉センター・数馬(かずま)の湯の仕事で、浅間尾根(せんげんおね)のガイドを行いました。
浅間尾根は、古くから甲州古道として、武蔵国(むさしのくに=現東京都、埼玉・神奈川県の一部)と甲斐国(かいのくに=現山梨県)を結んでいました。昭和の初めころまでは、檜原村の主産物である木炭を牛馬の背に積んで五日市(現あきる野市)へ運び、帰りには日用品を持ち帰る生活道路としても利用されていた歴史ある道。
本日の狙いは、カタクリをはじめとするスプリングエフェメラル(春植物)※①と檜原村の歴史探訪です。
・天候/曇り時々雨
・行程/時坂峠-浅間展望台-浅間園地-一本松-数馬峠-臼久保集落跡-数馬の湯
(所要5時間40分)
谷筋の、登山道脇に緑の絨毯のように広がるのは…
ニリンソウ(二輪草/キンポウゲ科)群落。やっと花開き始めたばかり。
標高を上げるにつれて…
カタクリ(片栗/ユリ科)がちらほら現れ始めました。
そして、同尾根屈指の群落地は…
満開!
なかなかお目にかかれない見事なお花畑に、参加者の皆さんは大喜び。はやる気持ちを抑えて、そっと観察と写真撮影を行いました。
八王子市・高尾山の日影沢では、カメラマンや観光客がニリンソウ群落の中に入り込み、踏圧で地面が踏み固められて群落が分断・縮小しつつあるといいます。一見、植物がない場所にも、次世代の芽生えがあり、地中に根茎が伸びていることもあります。一度失われた植生は、なかなか元には戻りません。植物観察や写真撮影をされる方は、細心の注意を払ってくださいね。
控えめに…アズマイチゲ(東一華/キンポウゲ科)も開花。
スプリングエフェメラルの揃い踏み?を満喫することができました。
標高870mの浅間園地。北側正面に大岳山(おおたけさん・1266.5m)を望む。
手前の草原は…
昔の茅場(かやば)※②を取り戻そうと、檜原村が定期的に草刈りを行っている場所。
『武蔵通志(山岳篇)』によると「かつては茅で覆われていたことから平茅尾根とも呼ばれていた」という明るく開けた風景は、今や浅間尾根の名所の一つです。
ここから、西の数馬峠を目指します。
路傍に佇む…
馬頭観音(ばとうかんのん)像。観音様の頭上に馬の顔を戴いた姿が、「歴史の道」を物語ります。
この像は、「山道で遭難した牛馬の供養、危険箇所での安全祈願のために建てられた」もの。尾根道と峠道が発達し交通の要衝となってきた檜原村では、「各種石造物の中で最も数が多いのが、この馬頭観世音菩薩」(「檜原村の石仏・第二集/檜原村教育委員会」より)だそうです。
下山途中…
数年前に無人になったばかりという臼久保(うすくぼ)の集落跡へ。このあたりで標高780m。まだ人の生活感が漂っているところに、もの哀しさを感じます。
私が上京した6年前、2800人以上いた村民も今や2600人弱…かつて、富士山が拝めることで富士浅間信仰を集め、尾根上に旅人や商人、村民が行き交った檜原村も、過疎化が着実に進んでいるのを実感。
一日天候が不安定で、この頃から雨がパラつき始めましたが、本降りになる前に下山するができました。
※①「スプリング・エフェメラル」:直訳すると「春のはかないもの」といった意味
・春先⇒花を咲かせる
・夏まで⇒光合成を行い地下の貯蔵器官や種子に栄養を蓄える
・秋~翌春⇒地下茎や球根の姿で過ごす
という生活史を持つ植物たちのこと
※②「茅場」:茅葺き屋根の材料、牛馬の飼料、田畑の燃料などを得るために集落周辺に定められたススキ、オギなどイネ科植物の採取場所
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