6/29~30日、八ヶ岳/赤岳(あかだけ・2899.2m)のガイドを行いました。
長野県茅野市・諏訪郡富士見町・南佐久郡南牧村と山梨県北斗市にまたがる、南北30km、東西15kmに及ぶ火山群の最高峰。その名は「山頂近くの山腹全体が酸化鉄のため赤褐色を呈することからとも、また“赤”という色が神性を有するために主峰にふさわしく名付けられたともいわれている」(「新日本山岳誌/日本山岳会編著」)。中世の諏訪地方では、険しい山容が山岳信仰の対象に。
■6/29日?/晴れ時々曇り
美濃戸口-美濃戸山荘-南沢-行者小屋-地蔵尾根-赤岳展望荘<泊>
(所要5時間38分)
ほぼ1年ぶりの美濃戸口(みのとぐち、標高1490m=国土地理院地形図より)。
気温22℃。
美濃戸山荘(1730m)。
南沢登山道は、治山工事中。通行には支障なし。
目指す赤岳。
行者小屋(2350m)。15℃。
梅雨の平日ということもあり、静か。
地蔵尾根の階段、鎖場を慎重に高度を上げる。
今年初めてのイワウメ(岩梅/イワウメ科)。
地蔵の頭から北側、横岳(よこだけ)方面を望む。東から雲が湧き上がっていました。
赤岳展望荘(2720m)では個室を独り占め?この時期ならではの快適さです。
小屋の周囲には、やはり梅雨期だからこそ見られる…
キバナシャクナゲ(黄花石楠花/ツツジ科)と…
ウルップソウ(得撫草/ウルップソウ科=真ん中)!こちらは初めて。
(保護されており、近づけないため望遠で撮影)
環境省「改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物~レッドデータブック」で準絶滅危惧種に指定。「高山に咲く花(山と渓谷社)」などによると、日本では、北海道礼文島と、本州は北アルプス白馬岳周辺、そしてこの八ヶ岳に隔離分布するのみ。今回はお目にかかれませんでしたが、絶滅危惧種のツクモグサとともに、森林限界を超えた高度、冬の「少雪、低温、強風」という八ヶ岳特有の自然環境がもたらす奇跡です。
■6/30日?/晴れ時々曇り
赤岳展望荘-赤岳往復-地蔵尾根-行者小屋-北沢-美濃戸山荘-美濃戸口
(所要7時間32分)
朝陽に染まる赤岳。南東方向(左奥)に富士山と…
奥秩父の山並み。右端のピークが金峰山(きんぷさん・2595m)。
まだ残雪多い北アルプス(真ん中奥)。
青空に恵まれて出発。12℃。
チョウノスケソウ(長之助草/バラ科=手前)と、オヤマノエンドウ(御山の豌豆/マメ科=奥)のコントラストが目映い。
赤岳山頂(左奥)。微風、14℃。
権現岳(ごんげんだけ・2715m=手前)の向こうには南アルプス。
下山が核心。「下りる自信がない」という女性参加者をショートロープで確保して、下降しました。
行者小屋まで下ると、赤岳はすでに雲の中。
土曜日、テントの花が咲き始めていました。
北沢コースは、南沢よりもシカの樹皮剥ぎが目立つ。二日間でニホンジカに2度遭遇、「ピュー」と鳴く警戒音は3度聞きました。
北沢。
最後に…
クリンソウ(九輪草/サクラソウ科)と…
念願のベニバナイチヤクソウ(紅花一薬草/イチヤクソウ科)にも出逢えて、全員無事に下山。
赤岳登山には、力量不足の参加者が目立ちました。基本的な体力・知識不足、岩場技術の未熟さ…ガイドが付いているといっても、実際に自分の手足を使って登り、下るのは自分自身。今回はたまたま好条件に恵まれましたが、「もし雨に降られて岩場が濡れていたら…」。自らの力量を客観的に把握し、背伸びをせず、ステップを踏んで3000m級の山に挑戦してほしいものです。
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この時期でも天候に恵まれるものなんですね。
私は、一昨年の夏にひとりで行ってまいりました。
美濃戸~行者小屋~阿弥陀岳~赤岳頂上小屋(泊)~横岳~硫黄岳~赤岳鉱泉~美濃戸とひと廻り。後半は雨でしたが。
仰るように、"下積み経験"もせず、中高年がブームに押され安易に高山に登る傾向があるのかも知れません。
私自身、ここのところ遠ざかっていましたので、土曜日は奥多摩むかし道を流してきました。訓練というほどではありませんが。
いつもコメントありがとうございます。
そう、八ヶ岳は実は、梅雨のシーズンが穴場なんですよ~好天に恵まれる確率は低いかもしれませんが、山が静かで小屋も快適。何より、この時期はウルップソウやツクモグサ、ホテイランにキバナシャクナゲ…夏には見られない開花植物の宝庫なんですよ。
“下積み経験”がないのは、中高年者に限ったことではないようです。登山ブームで押し寄せている若者たちにも、同じ傾向があります。未組織登山者が増える中、仲間うちだけでは自分の力量を客観的に把握することは難しいんですよね。「まず富士山に登りたいから、練習で甲斐駒ヶ岳へ登る」…最近、あべこべ?な登山者に出会うことが多いです。
安全で楽しい山登りのためにも、経験豊かな指導者の下で「地力」をつけてほしいものですね。