アルゼンチンのペリト・モレノ氷河は過去約200年の間、後退も前進もほとんどしていない極めて特異なケースとして知られている。後退しないペリト・モレノ氷河と、すぐ近くにあって同じように条件の良い源流域を持つのにもかかわらず他の氷河同様に後退するビエドマ氷河の違いは明快ではない。
ある日、過去約200年の間氷河の増減が無いということを聞きつけた日本の実業家が企業の長期存続の参考にしようとやってきた。
実業家 ペリト・モレノ氷河が200年間増減が無い理由を調査してその示唆するところを報告して欲しい。
側近 まずはペリト・モレノ氷河源流域の氷河量の豊富さです。示唆するところは圧倒的な資金力を蓄える、圧倒的な投資を行うことでしょう。
実業家 ペリト・モレノ氷河源流域の氷河量の豊富さは分かったが、ビエドマ氷河も同様というじゃないか。
側近 源流域の氷河の豊富さはビエドマ氷河も同じですが、違いは源流域からペリト・モレノ氷河に至る流れの良さです。つまり後退を補って余りある、流れの良さがポイントではないかと。
実業家 ペリト・モレノ氷河とビエドマ氷河とでは流れの良さはどう違うの。
側近 両氷河の形状が異なるのでペリト・モレノ氷河の流れの方が速度が早いと言われています。示唆するところは資金の流動性を高めること、意思決定のスピード、事業展開のスピードを維持することかと思われます。
実業家 (今でもそれはできている)他には。
側近 ペリト・モレノ氷河の形状がビエドマ氷河と異なるという点に着目しますと、これは人材の多様化を示唆するのではないかと。
実業家 (多様化か、言われ続けてきたことだがなかなか実行は難しい。我が社も意見の異なる者が辞めたり切ってきたのでイエスマンばかりになったようだ。これはなんとか反省と対策を練らねばいかん)早速具体的な人事方針案を考えてくれ。それをペリト・モレノ戦略とネーミングしよう。人事方針案が完成したら今度合うときに大統領にも披瀝してやろう。
側近 人事方針案は早速作成に入りますが、しかし大統領にお話になるのはおやめになったほうがよろしいかと。大統領はペリト・モレノ氷河が炭酸ガス排出量の増加にもかかわらず200年全く影響されていないことにのみ関心を示すはずです。人事方針案などには関心をもたないと思います。
この前大統領はパリ協定離脱を表明したばかりですが、ペリト・モレノ戦略を間違って理解して米国独自の地球温暖化対策さえも中止してしまう恐れがあります。
実業家 大統領は賢明だよ。そんな誤解はしないよ。(しかしその可能性もないではないな・・・)